まだ朝早いポケモンセンターにバタバタと慌ただしい足音が駆け込んでくる。
「おはようござ……、ちょっと!?ポケモンセンターでは静かに…!」
「すみませんすみません!あ、あの!この子達をお願いします!」
「……あらまあ!分かったわ!分かったからあなたは少し落ち着いて……!」
「は、はい……。すみません……。」
「まずはトレーナーカードとボールを……、あら、この子達はあなたのポケモンではないの?」
「あ、はい。野生の子達です。その、成り行きで怪我をさせてしまったようで……!」
「事情はあとで聞くわ。大丈夫、パッと見た限り大きな怪我ではないもの。……それよりも、あなたの前髪、……大丈夫?」
「あ……このあと直します……。あとこの子もお願いできますか?ボールはないけれど私の手持ちのコイキングなんです。」
「ええ、承りました。コイキングちゃん、いきましょう?」
「………。」
「澄ちゃん、念の為見てもらってきてね。」
「………。」
白衣の天使、ジョーイさんは優しく冷静で、大慌ての私を宥めながらもテキパキとラッキーに指示を出し、ストレッチャーに預けられたポケモン達を乗せ、何故かムスッと黙ってしまっている澄ちゃんの手を引いて奥へと歩いていった。
その姿が見えなくなったことを確認し、ロビーのソファーまで移動した私は指摘された前髪を手で隠しながら息をつき座り込んだ。
こんな事態になったのは数十分前のこと……。
***
突然飛んできた赤い何かによって私は前髪を焦がしてしまった。ボールから出てきた晴琉くんも大慌て。前髪以外の外傷は特にないけれど。
そんな中、轟音。
慌てて音のした茂みを覗くと、倒れた3匹のポケモンと、その子達を仁王立ちで見下ろす澄ちゃんの姿が。
「すみ、ちゃん……?」
『今の音、お前なのか……?』
「とびはねる」
先程の轟音と土煙は澄ちゃんのとびはねるによるものだったらしい。地面になにか重いものを落としたようなひび割れができている。コイキングのとびはねるってこんなにすごいんでしたっけ……。
「こいつら うるさい。さっきの ひのこ こいつ。チサトちゃん けがした!」
「だからってここまでやらなくても……。」
「だめ!やさしい だめ!あやまらせる!あやまれ!」
そう言って澄ちゃんは1匹のポケモンをしっぽを掴んで持ち上げた。
「まっ……、澄ちゃん!ダメ!離して!」
「、えっ……。」
「晴琉くん!この子達ポケモンセンターに連れていこう!」
『あ、ああ。わかった!俺が人の姿で2匹預かる、チサトは1匹頼めるか?』
「うん!」
晴琉くんは素早く人の姿をとると倒れている2匹、オタチとオオタチを脇に抱えた。私は澄ちゃんが持ち上げていた1匹、ヒトカゲを抱き上げる。そしてなんだか棒立ちでこちらを見る澄ちゃんの手をとる。
「センターまで走ろう!道は不安だけど方角はあってるよね!?」「いざとなればその辺の奴に聞けばいい!行くぞ!」
「澄ちゃん!行くよ!澄ちゃんもポケモンセンターについたら診てもらうんだからね!」
「………。」
なぜ澄ちゃんは黙り込んでしまったのか。なぜここにヒトカゲがいるのか。考えなければいけないことは沢山あったかもしれない。けれどこの時私は、ポケモンセンターまで走ることしか思いつかなかった。
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