受付にいたラッキーさんに少し出てきます、と声をかけフレンドリーショップへ。
辺りはすっかり日が昇り、清々しい快晴だ。
店内は普段お世話になっていた商店とは違い、数多くの品が並んでいた。これら全てがトレーナーとそのポケモン達のためのものだと考えると凄いことだ。
既に持っているけれど、使用期限を考えて予備のキズぐすりや非常食も購入しよう。
お目当てのボールのコーナーにはカラフルなボールたちが。
基本の赤、青、黄色のボールを1つずつ手に取りカゴに入れる。あまり多く持っておこうとは思わないけれど、無いよりいいだろう。さらに目に付いたピンク色のボールもひとつ、カゴに入れる。
会計を済ませ、店の外に出る。お会計中、店員さんの目線が顔のやや上を向いていたのは気にしてはいけない。
町で管理する花壇の近く、早速買ったものの入った袋を漁り、ボールを取り出す。
「さぁ澄ちゃん、どれがいい?」
澄ちゃんは少し迷うような仕草をしてから、ピンク色のボール、ヒールボールを指さした。
「だと思った!可愛いもんね、これ。」
「うん かわいい!」
「そういうもんなのか……?」
人の姿では捕獲時は反応しないようなので1度コイキングの姿に戻ってもらう。
ピチピチと跳ねる澄ちゃんに向かってヒールボールを投げる。軽快な音とともにゆらゆらとボールは揺れて、カチリ。星が舞った。
澄ちゃん、ゲットだぜ!なんてね。
もう一度ボールを投げると、すぐさま人の姿をとった澄ちゃんが現れる。
「澄ちゃん、改めてこれからよろしくね!」
「チサトちゃん よろしく ね!」
2人ともにっこにこの顔のまま、手を繋いでポケモンセンターに戻る。そんな私達の一歩後ろには満更でもない顔をした晴琉くんが。
兄妹がいたら、こんな感じなのかな。
センター内に戻ると小瓶をいくつか並べたトレーを持ったラッキーさんに声をかけられた。
『あ、先程のトレーナーさん!オタチとオオタチ、目を覚ましましたよ!今は検診室4番のベッドに……。』
「あ、はい!ありがとうございます!4番、ですね。」
『ええ!……え、あれ、あなた……?』
「あ……。内緒で、お願いします。」
やってしまった、と思いつつ通路を進む。フスベではみんなに知られてしまっていたからあまり隠していなかったため、ついそのままラッキーさんに返事をしてしまった。後ろでは晴琉くんがこわいかおをしているので振り向かないことにする。……今後気をつけまーす。
聞いた番号の部屋に入るとオタチとオオタチは清潔なシーツの敷かれた簡易ベッドで跳ね回りぐちゃぐちゃにして遊んでいるようだった。2匹揃っておでこにガーゼが貼ってあるがとても元気そうだ。
「目が覚めたんだね、よかった。」
「いや、元気すぎるだろこれは……。」
『ん?なんだお前ら、オレたちのこと知ってんのか?』
『知ってんのか?』
「知ってるも何も、俺達がここに運んだんだよ……。」
病み上がりとは思えない2匹を見て晴琉くんはなんとも言えない顔をしている。元気な二匹は兄貴分のオオタチ、弟分のオタチ、といったところなのだろうか。
「大丈夫?痛いところもうない?」
『うわ!ニンゲンだ!前髪ジグザグじゃん!アッハハハハ!』
『アッハハハハ!』
「そこは触れないで……。っていうか、原因あなた達なんだけど……。」
『あれ?通じたみたいに話すぞこのニンゲン!』
『へんなやつですね!アニキ!』
私の前髪を見て大層愉快そうに笑う2匹。こちらとしては苦笑いだ。
しかし私の後ろから澄ちゃんがベッドに近づくと、彼らは時が止まったかのように固まった。
「……?」
『『赤い彗星……!』』
「……シャ〇か……?」
まって晴琉くんその知識どこから……?
***
「……とびはねる ごめん なさい。」
「ごめんね、許してくれる?」
『あ、や、もっもちろんっス!こちらこそ!あんな所で喧嘩なんぞしててすんませんっした!!!』
『すんませんっした!!!』
ガーゼが貼ってあるおでこも気にせずオオタチ達はしっかりと頭を下げた。地面に着くんじゃないかってほど。
澄ちゃんもきちんと謝れたことで少しスッキリしている様子。えらいえらい。
すっかり澄ちゃんに怯えているオオタチ達に晴琉くんが声をかける。
「お前達、なんで喧嘩してたんだ?ヒトカゲがあんな所にいるのもおかしいが……。」
『そ、そうなんスよ旦那ァ!』
『旦那ァ!』
「いや、旦那はやめてくれ。」
『あのヒトカゲ、どこのどいつから知らねぇですけど、人のナワバリできのみ食ってやがったんだ!』
『そうだそうだ!』
『せっかくの食べ頃で、今日イチバンに食ってやろうと思ってたのに……!』
『かわいそうなアニキ!』
なるほど、どこからか現れたヒトカゲに盗み食いされた、って感じなのだろうか?そう聞くとこの2匹が不憫なような気もしてくる。
食べ物をめぐって喧嘩、なかなかありきたりだ。
「失礼します。あら、2匹ともとっても元気ね。」
「ジョーイさん!」
「この子達、ビックリして倒れただけみたいで外傷も特にないの。お互いのおデコにぶつけたみたいね。」
「じゃあ、もう草むらに戻ってもいいんですか?」
「そうね。このままだとベッドもシーツもボロボロになりそうだし、いいわよ。一緒に連れてきたヒトカゲはもうちょっとかかりそうだけど、夜には目を覚ますんじゃないかしら。あとでお見舞いに来てあげて。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「ではお大事に。」
ジョーイさんはオオタチ達のガーゼをペリっと回収し、部屋を出ていった。
どちらかというとシーツの心配をしているように聞こえたけれど、きっと気のせいだ。
「オタチくん、オオタチくん、これよかったら食べて。」
私はバッグからオレンのみをふたつ取り出し2匹の前に置いた。今回の喧嘩は本当によくある内容だった。偶然、人を巻き込んでしまっただけで。
『ありがとう!お前ニンゲンだし変な前髪だけどイイヤツだな!』
『イイヤツだな!ありがとう!』
「変な前髪は余計です。」
2匹はオレンのみを勢いよく食べると、(主に澄ちゃんに)一礼して飛び出して行った。失礼なのか律儀なのかわからない。
「……ねぇ?さっきこのままショップ行っちゃったけど、この前髪そんなに変?」
「「……。」」
「何か言ってください。」
「……ヒトカゲのこと待つんだろ。泊まる用に部屋予約しに行こう。な?」
「チサトちゃん なかない で?」
無理矢理ズラされた話題、神妙な2人の顔。
ヒトカゲが起きるまで何をしようか考えていましたが、今決定しました。ヘアサロン直行です。
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