窓の外からは赤い夕日がそろそろ山の向こうに帰ろうとしている。近くの木ではヤミカラスが帰ろう帰ろうと鳴いている。
前髪を整えてもらった私は、借りておいたセンターの部屋で過ごしていた。サロンに行くのも久しぶりだったため、ちょっとだけ丁寧に整えてもらって指通りが良い。長さはあまり変えていないため見た目に変化はほぼないが、いい気分だ。
ポケモンセンターの宿泊施設は下手なビジネスホテルよりも立派なのではないかと思う。ユニットバスに簡単なキッチン。部屋の大きさは手持ちのポケモンの数や大きさで割り振られることが多いらしい。センターの混み具合によっても違うようだが、今回はベッドが2つ付いた部屋を借りることが出来た。ちなみに宿泊するだけなら無料。ルームサービス等を利用する時にはその分料金が加算されるようだ。精算は翌日に。
今まで宿泊を利用したことがなかったのでついキョロキョロしてしまった。澄ちゃんは初めて見たベッドに早速ダイブしていて可愛かった。
部屋に着いて、各々部屋の中を探索したり、センター内で貸出をしている情報誌やポケモン雑誌を読んでいた。
私が最初に旅に出るつもりだった11歳のときとは、色々と変わっているようで。ポケモンの生息地まで変わっているなんてビックリだ。そして、他の地方でフェアリータイプというポケモン達が新タイプとして認められたとか。ドラゴンタイプの技がきかない……?なんだって……。ジョウトにもそのうちジムができたりするのだろうか?情報量が多すぎる。
晴琉くんと澄ちゃんは途中まで部屋に一緒にいたが、じっとしているのに飽きてしまったのか、センターの庭にあるバトルコートに行ってしまった。とりあえずいいキズぐすりを2本持たせておいたけれど、回復薬足りるかな?足りないほど怪我してきたらジョーイさんにお願いしなくちゃ。
雑誌も大体読み終えてしまった。ずっと同じ体勢で読んでいたからか、伸びをすると体のどこからかコキっという音がした。
しんとした部屋を見渡す。思い立って家を飛び出して、走って、澄ちゃんと出会って、喧嘩に巻き込まれて……。昨日までの私とは全然違う環境に身を置いていることに少し不安が湧いてくる。ひとりでいると余計に、だ。
1日中誰かと一緒に行動して、お喋りをしてなんてこと久しぶりだった。とっても楽しい。楽しい分、こわい。
この旅、いつ終わらせられてしまうんだろう……、なんて縁起でもない考えが浮かんでしまい頭を振る。
「なにもしてないから不安になるんだ!晩御飯でも作ろうかな!」
わざと大きく独り言を呟いてからキッチンに向かう。
料理は好きだ。作業は集中できるし、できたご飯を食べてもらって反応を見るのも楽しい。祖父は味を褒めるということはなく黙って食べる人だけれど、自分好みのおかずの時はご飯の進みが良かった。箸がどんどん進む様子は私の心をよく慰めていた。
サロンで髪を整えたあと、近くで見つけたスーパーで、値引きされているものを中心に、材料を買っておいた。残っても困ってしまうから少しだけ。具の多めのお味噌汁とハンバーグでいいかな?あ、でも2人はポケモンフーズの方がいいのかな?
頭の中で手順を確認していると、部屋に備え付けの電話がなった。ジョーイさんからだ。あのヒトカゲのことで話があるらしい。なんだろう?
2人はまだバトルコートから帰ってこない。晴琉くんが予備の鍵も持っていたし、置き手紙をしていけばきっと部屋を開けても大丈夫だろう。これまた備え付けのメモ帳に一言二言残し、私は部屋を出た。
前へ次へ
BACK