「ということで、一緒に来ることになったヒトカゲくんです!」
「「……は?」」
あ、すごい。晴琉くんと澄ちゃんも豆鉄砲くらった顔してる。
私の隣に居るヒトカゲくんもちょっと気まずそう。
「なので、明日はワカバタウンのウツギ研究所まで行こうと思います!」
「「『は!?』」」
うん。みんなすぐ仲良くなれそう。
「研究所にヒトカゲくんは戻りたくないみたいなの。でも、野生で生活するのも難しそうだし、なら一緒に来ないかって誘ってみました。」
「事情は分かった。でもそいつはチサトの前髪を焦がしたやつだろ?」
「とびはねる ごめん。」
『あ、いや、オレこそ、その、そんな……。えっと……ごめん。』
「私はもう気にしてないよ。綺麗にしてもらったし。」
「かみのけ かわいい よ!」
「澄ちゃんありがとう!」
「そこ、話を逸らすな。……チサトがいいなら仲間になる件はもういい。」
「じゃあ……!」
「でも研究所に行くってのはどういう事だ?」
『!そうだ!お前嘘ついたんだな!』
「ちがうちがう!ヒトカゲくんが戻りたくないのわかってるよ。明日はその、ご挨拶に行くの。」
『ご挨拶?』
「ジョーイさんが、ヒトカゲくんにはボールマークが付いてるって言ってたの。だから君はまだ研究所のポケモン。……それはわかる?」
『……おう。』
「だから、博士にヒトカゲくんを私の仲間にさせて下さいってご挨拶に行くの。そうすれば、いざこざも無く一緒に行ける。ちがう?」
「……そうだな。」
「人のこと言えないかもだけど、喧嘩別れなんてダメだと思うの。研究所に返す、なんて絶対しないよ。ヒトカゲくんが研究所を出られるように一緒にお願いする。だからきちんとご挨拶しよう?」
『……うん。』
よかった、きちんと伝わったみたい。
私自身、逃げ出してきた身だから、さっき言ったことは自分のことを随分棚に上げている。わかっているつもりだ。けれど、ヒトカゲくんの状況なら博士にもわかってもらえると思う。
彼は初心者用ポケモンとしてほかのポケモンと一緒にカントーからきたらしい。そして今年、博士からポケモンをもらう子は2人。選ばれなかったそうだ。研究所にも馴染めなくて、逃げ出してしまった。そう彼は言っていた。
なら、誰かと旅に出るという選択をしてもいいはず。
「明日はヒトカゲくんのボールを貰いにワカバタウンまで行きます。その後のことは歩きながら考えよう。それに博士ならなにか旅のアドバイスもくれると思うの。」
「……そうだな、アドバイスをもらうのはいいかもしれないな。」
「ヒトカゲ よかった ね!」
「……挨拶してなかったな、俺は晴琉。ガバイトだ。よろしくなヒトカゲ。」
「コイキング 澄 だよ。」
『……まだ行けるかもわかんねぇのに……呑気なんだな、お前の仲間。』
「そう?でもきっと仲良くなれるよ。……こほん。あらためまして。私はチサト。ポケモントレーナーになりたてです。よろしくね。」
『……ヒトカゲだ。…よろしくっ。』
少し意地っ張りなヒトカゲくんは、照れ臭そうにつるんと丸い頭をかいた。あとで撫でさせてもらおう。
彼を旅ができるかは明日の努力次第、頑張ろう。
「さ、明日に備えてご飯を食べてお風呂に入って寝ましょう!チャチャッと作っちゃうから順番にお風呂入ってくれる?」
「じゃあ俺は湯船を洗ってくる。澄、ヒトカゲ、お前ら風呂は分かるか?」
「?……わか、んない。」
『オレは研究所で入れられたことがある。でも嫌いだ!』
「……。よし、澄はメシの後、人の姿のままチサトと入れ。教えてもらえ。そして、ヒトカゲ、お前は俺が入れてやる。」
「!澄ちゃん一緒に入ろうねー!」
「うん!わかんない でも
はいる。」
『いやだーーー!!』
今日は色々ありすぎて正直疲れている。ベッドに入ったら一瞬で眠れるだろう。ご飯だってセンター内で利用できるレストランを使った方が早いし美味しいだろう。
けれど、みんなに私が作ったご飯を食べて欲しかった。きっといつものハンバーグも、今日は特に美味しく感じるはず!
今日を、私は絶対忘れないだろう。
外に明かりの漏れるその部屋を、木の影から眺めるなにかがいた事は、この時、誰も気づきはしなかった。
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