私がこの町から旅に出ることを禁じているのは祖父だ。

ジョウト地方では所定の条件を満たし10歳以上になると、ポケモントレーナーとして旅をすることが認められている。
何度も反対され、何度も説得した。そして11歳のとき、なんとか旅に出ることを許された。まだフカマルの相棒と出会ったのもこの時だ。着々と準備をし、ついに出発。するはずだった。ロケット団がカントー地方で大暴れしなければ……。
当時から四天王としてリーグに属し、またこの町の次の長候補として実力のある同郷のワタルさんから、ロケット団による暴動、とある街の閉鎖、ポケモンの強奪など、事の仔細を事細かに報告されていた祖父は私の旅を延期した。
あれだけ繰り返した説得が無駄になり、当時の私はフカマルと真新しいボール、期待を入るだけ詰め込んだバッグを抱えて泣いた。

あれから4年、晴琉と名付けたフカマルはガバイトになり、私は15歳になった。

4年の間、何度も旅に出たいと祖父を説得しようとしたが結果は得られず、更には一度鎮圧されたと思ったロケット団がジョウト地方で復活し暴れ回るという始末。四天王からのし上がり2地方を跨ぐチャンピオンとして君臨していたワタルさんと、旅に出たばかりの新人トレーナーの活躍によりロケット団は再び失脚。被害を受けた街も少しずつ復興が進んでいる。
けれども祖父は旅に出たいという私の言葉に首を縦に振らずにいる。
私にとって祖父は唯一の肉親で、いつだって強く、正しい。そしてそれは町全体が思っていることでもある。

大切にされている、それは分かっている。けれども包まれた真綿で息ができない。繋がれた手を離すことができない。
反論することにも疲れてしまった私は、呼吸をするので精一杯だ。


***


時間はあっという間に過ぎ、今は午後の3時。
趣味である果樹の手入れも一段落。一息つくにはちょうど良い。
そういえば朝昼の食事以降、相棒の姿を見ていない。きっと野生のポケモンを相手にバトルの練習をしているのであろう。何せ彼は自力でガバイトまで進化してしまうような努力家だから。1人で勝手に進化してしまったこと、トレーナーの私としては喜ばしいけれどあまり面白いことではなく、根に持っているのだ。

自分の休息ついでに何か差し入れでもしようか。先程収穫したばかりのきのみと、作り置きのポロック、戸棚にあったいかりまんじゅうを手頃なかごに入れて、まるで散歩向きではないサンダルのまま果樹の横の小道に入る。
この小道は修行に向かう祖父も使う道で、屋敷からりゅうのあな近くまで繋がっている。途中野生のポケモンも出てくるのだが普段からきのみやお菓子で買収しているため理由なく襲ってくることはない。

小道を抜けると目の前にはキラキラと水面が揺れる池が。この池を渡ったところがりゅうのあなだ。なみのりを使えない私はこの先に進んだことは無い。
水際に赤い鱗がチラチラと映る。きっとコイキング達が足音に気づいて集まってきたのだろう。いくらかポロックを振り撒いてやると大きな音を立てて争奪戦が始まった。
1匹のコイキングが見事ポロックを勝ち取ったようで、水から顔を出しこちらに微笑みまた水底へと潜っていった。



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