私の幸せは、私が決めるの。
最初の旅立ちの時に使いたくて買った斜めがけのバッグ。大容量が当時の売り文句だったっけ。
今までのお小遣いやお年玉なんかを全部貯めていた通帳とそのカード。使用期限ギリギリのキズぐすり。育てたきのみ。ポロックケース。大切なものを少しだけ詰めて。
普段からつけている6体分のボールを固定できるベルト。一緒にいる年月の割に傷ひとつない晴琉くんのボール。これで十分。
揃えた荷物は、想像よりもずっと軽かった。
「おじい様、ワタルさん。お待たせしてすみません。お酒、ここに置いておきますね」
「ああ、ありがとうチサト」
「チサトちゃんありがとう、後は自分たちでやるから」
「はい。あ、おかわりとつまみは台所にあります。お風呂とお布団も良かったら使ってくださいね。」
「わかったよ、気が利くね。もう遅いし、子どもはもうおやすみ。」
「はい、お先に失礼します。……ありがとうございます。」
「?おやすみ」
「チサト、ゆっくり休みなさい」
「……はい、おやすみなさい」
深く、いつもより深く頭を下げて部屋を出た。
先にまとめておいた荷物と履きなれたブーツをもって裏口へ。途中着替えも済ませる。1番気に入っている動きやすい丈のワンピース。おじい様が誕生日に買ってくれたもの。……とても嬉しかったな。
音を立てないように注意して外に出ると、晴琉くんはもう待っていてくれた。
『忘れ物、ないか?』
「うん、ない。……一緒に来てくれる?」
『何を今更。一緒に行こう。どこまでも』
昼間、陽の光を目指して上へ上へ向いていた花も木々も、今は目を逸らすように下を向いている気がした。
ひんやりとした鱗が覆う晴琉くんの首をひと撫でして、目を合わせて頷き、私達は声もなく駆けだした。
結婚なんて、絶対にしてやるものか!
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