どれだけ時間が経っただろうか。
ずっと走り続けて苦しいはずなのに、足が軽い。羽根でも生えたのかもしれない。

『ごめんな!俺がガブリアスだったら飛べたんだけどな!!』
「謝らないで!それにガブリアスの飛行は速すぎて原則禁止って本にあったよ!」
『非常時だろ!』
「そっか!ふふっ!」

なるべく人目を避けて45番道路を進む。
雲もない晴れた空であってもまだ冷え込む夜。その中休憩もできない一本道のこおりのぬけみちを進むのは酷だという晴琉くんの提案を受け、私達は南へ下った。
幾つか別れ道はあるものの川を目印に進めば迷うこともないらしい。

走りすぎて私も晴琉くんもハイテンションだ。つい声が大きくなってしまっていることに気がついて辺りを見回したが、野生のポケモンたちのレベルも高いこの場所をこの時間に出歩く人など稀だろう。

『もう少し行くと46番道路と29番道路の関所がある!その手前に池があるから休んでおこう!』
「えっ!まだ行けるよ、どんどん進んだ方がいいんじゃない?!」
『チサトは動き慣れてないんだ!調子に乗るとガタがくるぞ!』

そんなにはっきり言わなくてもいいじゃないか!とショックを受けたがこんなに走ったのは初めてかもしれない。晴琉くんの言い分は正しい。水分補給くらいした方がいいだろう。

徐々にスピードを落とし、歩き始める。いつの間にか額には汗が滲んでいる。歩きながらバッグを漁ってハンドタオルを取り出す。拭いておかないと汗が冷えて調子を崩すかもしれない。
しばらく歩くと晴琉くんが言った通り池があった。傍にはぼんぐりの木が纏まって自生している。

『水分補給したら少し休んでおけ。ここまで来れば人も殆ど来ないし草むらも遠い。』
「晴琉くんは?」
『見張りだ。』
「じゃあわたしもいっし『寝ろ。』……はぁい。」

今日の晴琉くんは押しが強い。勝ち目は無さそうだ。
『夜が明けたら起こす』と言われたが、しっかり眠るつもりはないためバッグから上着を取りだし膝にかけぼんぐりの木の根元に寄りかかる。
あまり寝る気がないのがバレているのか、晴琉くんは隣に座って文句ありげな視線をこちらに送ってくる。

「はるくん」
『どうした、寒いか?』
「ううん。あんまり眠くな……なんでもないや。ちゃんと起こしてね。」
『わかったから早く休め。』
「うん。……おやすみ、はるくん。」
『おやすみ、チサト。』

黙って目を閉じる。あれだけ緊張したり走ったりすれば心身共に思った以上に疲れるらしい。そうよね、普段家事しかしていなかったもの。
眠くないと思っていたけれど、目を閉じてしまったら最後、危機管理的にどうなのだろうと心配になるくらいあっという間に眠ってしまった。


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