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「彼が奥さんと子どもの話をする姿が好きだった。好きって言ってもそれは理想の家族像に近いから憧れて的な感情であって、私がその立場になりたかったわけじゃなかったんです。」



告白された時、彼女はどんな気持ちだったのだろう。
初めての長期出張。
初めて優しくしてくれた先輩。
きっと楽しそうに奥さんと子どもの話をしていた。
浜沢さんも楽しく聞いていた。
彼の告白は、全てを台無しにしたのか。


「幸い出張先での出来事だったから、もう終わった事だと思ってたんです。でも、今…先輩がこっちに来ているみたいで。恐らく有休をとってるらしいんですけど、数日前から連絡が途絶えないんです。」

「愛未ちゃん。辛かったね。」


梓さんが、浜沢さんを抱きしめる。


「もう大丈夫よ。大丈夫。きっと解決するから。」

「梓、ありがとう。」


安心したらしい。
浜沢さんが笑った。

浜沢さんはもしかしたら、今日まで誰にも相談してないのかもしれない。
梓さんに会うまで、毎日不安だったのかもしれない。


「…警察には相談したんですか?」

「してません。あまり大事にはしたくないんです。」


ーブーッ、ブーッー


バイブ音が煩い。
きっとメッセージも沢山来てるはず。
毎日怖い思いをしてる筈なのに、大事にしたくない?

浜沢さんは携帯電話に目線を向けるだけ。
でも、悲しそうな表情でため息を吐く。


「何事もなかったように、家族のもとへ帰って欲しいんです。出張とかで誤魔化して、これまで通り家族仲良く。」

「…なるぼと。」


余程素敵な家族だったのか。
他人に対してそう思えることも凄い。


「携帯電話を拝見しても良いですか?メッセージとか、差し支えなければ。」

「はい。どうぞ。」


携帯電話の充電が、残り僅かで無くなりかけていた。
通知のせいだろう。
やはり着信以外にも大量にメッセージが届いている。


「安室さん、私にも見せてください。」

「どうぞ。」


梓さんにも見えるように携帯電話を傾ける。
内容は予想通りの内容だったが、浜沢さんは返信をしてない。


(愛未ちゃんが地元に戻ってから愛未ちゃんの住んでる地域について調べたよ。僕も将来暮らすのに問題なさそうだ。)

(新幹線で向かっている。本当はサプライズしたかったけど、すれ違いで会えないと困るから先に報告しておくね。部屋は慌てて片付けなくて良いよ。)

(もう少しで家に着くよ。出掛けてるの?)

(今日は家に帰らなかったの?何処にいるんだ?)

(おい。そろそろ返事をしろ。先輩を待たせるな)


「ひどい…こんなの、誰だって怖いじゃない!」

「段々過激になってますね。」

「まだこっちに来てから直接会ってないんです。でも多分、ずっと近くには居ると思います。」


さて、どう対処すべきか。
本人は警察に頼るつもりは無いらしいが。



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