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「お腹すきませんか?軽く食べません?」


浜沢さんと駅に向かう途中。
浜沢さんから思わぬ提案。

そういえば本来なら浜沢さんはこの後、梓さんと食事に行くところだったのか。
僕もお腹は空いている。


「そうですね。僕も、もう少しお話を聞きたいので話しながら食べましょうか。」


腕を組んで歩く僕たち。
浜沢さんの携帯電話はあれからまた鳴りっぱなしだ。
僕が組んでない方の手を差し出すと、浜沢さんはすんなり携帯電話を僕に渡した。

来ているのは、メッセージのようだ。



(その男は誰だ?)

(まさか浮気?人の気持ちを散々弄んでおいて酷すぎるだろ)

(今謝ればまだ許してやる。早く連絡しろ)


随分荒れているようだ。
やはり、近くで見ているのだろう。
襲ってくればこの場で対応はできる。


「返信しても?」

「大丈夫ですよ。」


浜沢さんに成り代わってメッセージに返信を打つ。
浜沢さんはその様子をじっと見つめていた。

(彼氏です。ずっと付き合ってるんです。)


「そんな事言って良いんですか?」

「これで納得するとは思いませんが、直接話すチャンスは出来ると思いますよ。」


あまり広くない居酒屋に入る。
僕の知ってるお店だ。
店の出入り口とトイレの出入り口が見えるので、人の動きが見えやすい。


「カウンターですが大丈夫ですか?」

「はい。素敵なお店…バーみたいですね。」

「料理も美味しいですよ。」


イタリアンバーであるその店は程良く人の入りはあったが、カウンター席は空いていた。

店員さんの案内に従い、カウンターの奥へ。
浜沢さんを壁際に座るよう促す。
僕の腕から離れて、浜沢さんが座った。

浜沢さんを改めて観察する。
高さのあるヒールを履いているが、身長は梓さんより少し高いくらいだろう。
顔つきは梓さんよりも大人びている雰囲気がある。
タイトスカート から伸びる脚を見る限り痩せ型のようだ。
指先にはネイルが綺麗に塗られている。


「何飲みますか?」

「今日はもうずっと飲むつもりで過ごしてたので、ビール飲んでも良いですか?」

「どうぞ。それなら僕もビールにします。」


ビール2つとサラダやカルパッチョなど軽めのものを頼んだ。
先にビールとお通しが来たので、僕も浜沢さんもグラスを傾ける。


「カンパイ。」

「カンパイ。今日はありがとうございます。」


浜沢さんの言葉を聞きながらビールを流し込む。
僕だって飲みたい気分だったんだ。


「まだお礼を言うのは早いですよ。」

「私、今日は梓にストーカーの事は隠そうと思ってたんです。巻き込みたくなくて。」

「浜沢さんの異変に気付いたのは梓さんですよ。」

「そうですね…梓には本当、隠し事出来なくて。」

なんだか嬉しそうだ。


「梓さんとは仲が良いんですか?」

「高校時代の同級生なんです。それからずっと付き合いがあって。親友なんです。」


浜沢さんも梓さんを親友だと言った。
お二人は互いに想い合ってるらしい。




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