その赤はやがて黒になる
※流血注意、仄暗い。
今私の国は戦争状態だ。国のやり方にうんざりした反乱軍がとうとう反旗を翻したらしい。
戦争状態はどうでも良いけど、国全体が混乱しているのは好都合だった。
私には生きる目標があった。
両親を殺害し、私のことを奴隷にした奴らに復讐すること。
ただの天竜人の真似事だ。背中にそこまで大きくないものの3本の爪で引き裂いたような焼印まで入れられた。見る度にじくじくと熱を持ったような痛みが生じるのでそのうち視界に入れないようになった。
焼印を入れられ、初めてを奪われ。
私の生きる目的はそいつらを自分の手にかけることだけになっていた。
昔は夢とかあったような気がするけどもう思い出せない。
建物の中がバタバタし始めた。
私が従順になったと勘違いしてあいつらはいつだかから何の枷も付けなくなっていた。
いつも転がされていた地下室にはこっそりナイフを隠してある。それを取り、混乱に乗じて部屋を出た。
上手くやれるか、ではない。建物の中の全員殺してやる。
その後の事はあまり覚えていない。
ただ、広めの部屋が血の海になっていた。多分この出血の量だと刺傷なんだろう。
(私がやったのか)
部屋の大きな鏡に部屋と私が映っている。改めて見ても惨状というのが正しいだろう。
私もかなりの返り血を浴びている。
「やったよ…父さん、母さん…」
2人は望んでないと思う。こんなこと。でも許せなかった。
こつ、と足音。まだ誰か居たのかとナイフを構えて振り向く。
「誰だお前は」
「口悪いなぁ…何事だ?これは」
ゴーグルをつけたシルクハットを被ったきちんとした恰好をした青年。地下室に出入りしてなかっただけのこの建物の奴か分からない。
「先に名乗れ」
ナイフを向けるも青年は全く怯まない。
「物騒だな…気が済むなら良いけど。おれはサボ。革命軍だ」
革命軍…?
「知らないなら教えるが…ここはちと危ないし、落ち着いて話をしたい」
それに、とサボと名乗る青年は言葉を続ける。
「おれがここへ来たのは奴隷にされてる者が居ると聞いたからだ。革命軍はそういった者たちを保護している。何か知らないか?」
「…奴隷は私だ。他に奴隷がいるって聞いた事がないからここには私だけだと思う」
「…!そうか」
緩く口角をあげるサボ。
「それだけの戦闘のセンスがあるならウチに欲しいな。おれと来ないか?…えっと…」
「ミヤビ。リンドウミヤビ」
「おう、よろしくな、ミヤビ」
私が革命軍に所属することになり、世間に知られ始めるのはもう少し後の事だ。
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