後遺症は極めて重症
ミヤビが起きたからご飯だァ〜!とみんなが私の部屋を出ていく。
怪我してるし重いモンは食えねェぞというキャプテンの声は届いちゃいない。
部屋には再び私とキャプテンの2人だけになった。
「…食欲はあるか」
「あんまり…」
「少しでも良いから食え。水分もだ」
珍しく献身的なキャプテンがコップの水を差し出してくる。
その瞬間に私は男にされたことと、過去に親にされたことが蘇り鳥肌が立って悪寒が走る。
「い、いらない…」
「ミヤビ」
「…っ、やめて!」
キャプテンの手を払い除け、コップが宙を舞った。
割れた音に気付いたであろうクルーがバタバタと部屋の方に走ってくる。
「キャプテ〜ン!大丈夫?」
ベポの心配そうな声に、あァ、と彼が短く答えるとパタパタと足音は遠ざかっていった。
「…何があったか話せるか」
おれが来るまで、という言葉にビクリと体が強ばった。
「っ…」
手を強く握ったのは少しでも全身の震えを抑えようとしたのかもしれない。
それでも冷や汗までかいてきた。
「無理ならいい。聞き方を変える。水が怖いか?」
私の目が見開かれる。それ以外は金縛りにでもあったように体が動かない
水、私を苦しめる、水。
「分かった。でも呼吸はしろ」
優しくキャプテンに背中をさすられ、やっと私は思い出したように息を吸う。
心臓の鼓動が五月蝿くて、もしかしたら息を出来ていなかったのかもと思った。
「人体は、」
落ち着いた低い声が鼓膜を揺らす。
「食べなくても数週間は死なねェが、水は摂らねェと1週間と経たずに死ぬ」
落ち着いた声だからこそわかった。
医者で、沢山の死を見てきたからの言葉。紛れもない事実という事。
「…果実や野菜であればまだ水分は摂れる。積極的に食え」
キャプテンが部屋を出て行こうとする時、声をかけようと思ったけど、かけられなかった。
見えてしまった。
唇が切れて血が出る程強く噛んでいることに気付いたから。
その時にも、抱きしめられた時にも。
あんな辛そうな顔をさせちゃいけないと一層強く思った。
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