暫しお別れ



キャプテンが部屋から連れ出してくれた日から、私は順調に回復していった。
もう水は怖くない。私は水を操る能力者だ。臆していてどうするんだ。

1週間程度経った頃から、船が浮上している間は甲板で体力を取り戻す為に鍛錬を始めた。
いつまでも腑抜けていては師匠にどやされてしまう。

「おい!まだ安静にしとけ!」

キャプテンが怒鳴りながら甲板に出てくる。

「もう動いても大丈夫だって。傷もほとんど塞がってるし」
「ほとんどでまだ完全には塞がってはない!体を動かすにしたってもっと軽いのから始めろ!」
「えー…」
「えーじゃない!」
「キャプテンお母さんみたい…」
「…ミヤビもあいつらみたいにバラバラにされてェらしいな?」
「されたくないよ、そんなこと」
「…ッ」

なんだっけ、こういうの。
苦虫を噛み潰したような顔って言うんだっけか。
キャプテンは今まさにそれだ。

「てかキャプテン邪魔しに来たの?」
「邪魔…だと…?」
「違うの?」
「そもそもは話すことがあったから呼びに来たんだ、甲板に居るって聞いたんでな…!」
「すごい怒るじゃん」
「当たり前だ!死にかけてたんだぞ!」
「ちょっと前にね?」
「はぁ〜〜〜〜………」

キャプテンは隠すことなくめちゃくちゃ大きな溜息をついた。
そういやこういうやり取りちょっと久しぶりかも。

「良いから来い。もう全員集まってる」
「それ早く言ってよ」

*

「ここでお前らと別れる」

水を打ったように私たち船員は静まり返った。

「潜入みてェなモンになるから、1人の方が動きやすい。今後の指示はペンギンとシャチに任せる」
「キャプテン」

ペンギンが口を挟む。

「単独行動が最近過ぎませんか」
(最近?)

確かに、鍛錬しててもさっきのようなやり取りは久々だった。

(キャプテンが居なかったからか)

確かに居なかった。けど、

(なんだろう、違和感があるような…)

「おれの船だ。従えねェなら降りろ」

らしくない冷たい言葉。

「キャプテン」

珍しく私は口を挟んだ。

「危ないことはしないで」

キャプテンはいつも被っている帽子を深く被り直した。
了承の意と受け取っていいのか分からないけど、返事はして貰えなかった。

*

翌日、キャプテンは簡単な荷造りを済ませて船を発った。

「…ペンギン」

見送ったまま、甲板には疎らに船員が残っていた。隣に居るペンギンに声をかける。

「なんだ」
「キャプテンさ、死なないよね」
「あの人は強い。心配要らねェよ」

にっ、と笑ったペンギンが頭を雑に撫でたけど、手が少し震えてるように感じた。




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