生きてるから傷つく



話したい事なんてねェ。
ミヤビをロロノア屋から離せればそれで良かった。
そしてやっと自覚した。
いつかは分からないけど、この生意気で強くて脆い小さな歳下の女に惚れていた事に。

(こんなに大人げなくなるモンなんだな)

復讐の為に生きた人生は恋なんて知らなかった。
島に着けば街で適当な女を見繕って処理をしていただけだった。
ただ、トキメキとかそういう腑抜けたモノよりも、彼女をかっ攫われる不快感だけが堪らない。

「キャプテン?」

話があると言った割に黙り込んだおれにミヤビは不思議そうに顔を覗き込んでくる。

「私も話したい事、というよりは聞きたいこと、あるんだけど」

かつて彼女がこんなに真っ直ぐにおれに目を向けただろうか。

「…右腕、庇ってる、よね。怪我酷いの?」
「…ッ」

思わぬ所を突かれ言葉が出遅れた。
今何を言ったってミヤビの目は今度は訝しげなものに変わるだろう。

「…誰にも言うなよ。ドレスローザに一緒に行ったヤツらしか知らねェから」
「う、うん」
「ドフラミンゴに腕を切断された。妖精の中に能力者が居て奇跡的に繋がったが、完全に切られた」

周りに誰も居ないのを確認して、おれは右腕の包帯をするりと解いた。
痛々しく縫合されている傷跡を見たミヤビの目が大きく見開かれて、口を手で押さえている。

「キャプ、」
「見たくはなかったか」
「ち、ちが、う」
「…」
「私たちのいない所でそんな無茶を…」
「結果勝ったし、おれの腕は無事だ。経過も順調だ」

手を握ったり開いたりして見せる。

「ばか…」

ミヤビの目から溢れる大粒の涙。
あの時おれの腕の中で泣いたよりも明らかな号泣。

「ミヤビ、」
「キャプテンはッ…私たちのキャプテンでしょ…!」
「1人の命じゃないんだよ!」

涙声は悲しみと怒り。表情もまた然り。

「ミヤビ、」

バチンッ

「はぁ…はぁ…っ」

ミヤビにおれはビンタされたらしい。
じんじんと頬が痛む。
彼女の小さな手のひらが真っ赤になっていた。

「ミヤビ、おれは、」
「なんも聞きたくない!」

ミヤビの目から次から次へと涙が零れて、
おれは怒られてる立場にもかかわらずその涙の、泣いてる顔の美しさに心を奪われ息を呑んでいた。

「つぎっ」

ぐす、と鼻をすするミヤビ。

「こんな無茶したら船降りるっ…」
「なんでそうなるんだ…!」

まさかそんな言葉が飛び出すとは予想出来ず反射的にミヤビの手首を掴んでいた。

「キャプテンの事、近くで失うなら他人になってた方が良いっ…!」
「…」
「死なないで、キャプテン…」
「それに、もっと頼ってよ…」

「…悪かった」
「船員の命を危険に晒すことなんか出来なかった。恩人に助けられて、お前らと出会ったから今のおれが在る。おれだって失うのは怖ェ。だから、」

泣きじゃくる小さな体をまた腕の中に閉じ込めた。

「おれが守りたい。だから、守ってくれ」

何故か声が小さくなってしまってなんだかカッコ悪い気もするが、ミヤビには届いたみたいでおれの背に腕が回される。ああ、なんか、もう、

「…好きだ」



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