円堂とのファーストコンタクト
「……ふん、ふふん、ふんふん、ふふん♪」



小さく鼻歌なんか歌いながら、雪女はとことこと歩いていく。



「(ちらほらとよく見かける雷門中生について行けば、たぶん雷門中にたどり着けるだろ……)」



そう考えながら歩いていると、雪女は凄く見覚えのある場所に出た。



「うおっ……ここ、あの河川敷じゃんか!」



……アニメでおなじみ、河川敷。
目の前に映るその景色は、まるでアニメから引っこ抜いて来たみたいに細部までそのままで。




雪女は再度「ああ、ここって本当にイナズマイレブンの世界なんだな」と痛感した。




「えーと、ここが河川敷なら俺の家はあそこだから、雷門中とはめちゃくちゃ遠いワケでもないな」



そんな事を考えながらも、雪女は何とか雷門中の場所を捕握できた。










……そして。







「わ、わぁああ……!!!」



目の前に広がる雷門中の風景。
あまりの嬉しさに雪女はキョロキョロと辺りを見回し、目をキラキラと輝かせた。

どこを見てもアニメから抜け出したような風景に、歩いていく最中にもついつい辺りを見回してしまう。



「(……円堂と同じクラスになれたらいいけどなー、なれるかな?)」



そんなことを考えながら、雪女は職員室へ歩を進め……先生に挨拶も済ませたし、書類も出した。





「……よし、あとはクラスに行くのみだ!」





先生に挨拶したときにちらっと見えた出席簿から見るに、
どうやら俺は円堂や豪炎寺と同じクラスみたいだ!!最高かな!?



「(……でも、あれ?アニメだと豪炎寺が来たその日に帝国戦のはずだったと思うんだが……)」

「(なんか噂を聞くと、豪炎寺は数日前からいるのに帝国戦は明日らしいな……もしかして、漫画の方のイナズマイレブンも混じってるのか?)」



その時は「とにかくこれは幸先がいい」と思っていたが、
これがそのあと、とんでもない結果を連れて来るとは……その時の俺は一ミリも考えていなかった。















「あー……今日は、豪炎寺くんに引き続いて新しい新入生を紹介するぞ。」




先生の隣に立って指示を待つ間、クラス中の視線はほぼ俺に注がれていた。
ま、まあ……転校生って珍しいもんな!うん!


あたりに目線をちらちらと動かしてみると、窓際の豪炎寺と目が一瞬目が合った。



「(ほ、本物の豪炎寺だぁ……!!!動いてる!!生きてるぅ!!!)」



「……と、いうことでみんな仲良くするように。」
「では火月さん、自己紹介を。」


その言葉に、雪女はハッとして自己紹介を始める。


「え、えーと……俺は火月 雪女です。」
「好きなことはサッカー……つーことで、よろしくお願いします。」



雪女は、そう言うと軽く礼をした。



「……それじゃあ、雪女さん、あそこの空いてる席に着席して」

「はーい。」



自分の席に行く途中の道で、いろんな声が聞こえてきた。
……まぁ、大半は女子なのだが。



「きゃっ、ウチの彼氏より超イケメンだし超カッコいい〜!!」

「目の下のフェイスペイントがちょっと怖いかも……」

「でも、パンクロッカーみたいで超オシャレだね〜!!」



「アイドルみたいな奴だな。」

「……あいつ、男にしてはなんかやけに細くねえ?女か?」

「バーカ、あんなイケメンな女居るかよ。」







「(か、勘弁してくれよ……。)」




雪女は席に座るとこれから起きるであろうことを想定し、一気にうなだれた。





……そして、授業前に入る数分間の休み時間。
休み時間に入った瞬間、雪女想像通りにクラスメイト達が一斉に雪女の机へと駆けてきた。


「これ、アタシのメアドなの!よかったらメールして!」

「火月さんの好きな女の子のタイプとか教えてくれな〜い?」

「家どこにあるの〜?」


……女子からは、いつも通り猛烈なアプローチ。
今のうちにツバつけとこうっていう意思が見え見えすぎてもう、なんというかね。






かと言って、男子は……





「なあ、野球部興味ねーか!?」

「バスケ部とかどうだ?」

「お前いい手足してんな!水泳部に来ないか!?」


……男子からは、部活動への勧誘。

何でも、俺が居ると女の子がいっぱい来るから部の士気が上がるんだとさ。
(実際、前の世界でも数回同じこと言われたなァ……。)


人を客寄せパンダにするなっつの。




異世界にトリップしても、「男女問わず猛烈なアプローチ」は相変わらずあるのかよ……もう泣きたい。



「悪ィな!俺……サッカー部に入りてぇんだ!」



そう言うと、雪女をまわりを囲んでいた男女の表情が曇る。



「ええっ!?マジで言ってんのかお前!?」

「やめときなよぉ、廃部寸前って噂だよぉ?」

「いやいや、廃部寸前じゃなくて、今度の帝国との試合に負けたら廃部確定だって言うぜ?」

「あんなのに入りたいなんて、お前も変わり者だな!」




……うるせえ。放っておいてくれよ。





そんなこともありつつ。
人の波がいい感じに割けたところで、雪女は円堂を探すことにした。





「(さーて、円堂はどこかな〜……)」












「(……って、あれ?)」














雪女がきょろきょろと教室中を目で探しても、円堂の姿は影も形もなかった。








「(あれ……円堂、居なくね?)」
「(……おいおい、主人公どこ行ったんだ。)」




……まぁ、大体いない理由の想像はつく。




「(……どう考えても、遅刻だな、こりゃ。円堂ならやりかねん)」





雪女はそう自己完結し、あきらめて授業の準備を始めた。

授業の合図であるチャイムが鳴って授業が始まると、
みんな静かになって先生と黒板に視線を向ける。




「(あっち(元の世界)ほど、俺を見る子はいないな……よかった……)」




前の世界のようにガン見されないことにホッと胸を撫で下ろしていると、
授業中の教室に、カララ……とドアが開くような小さな音が響いた。



……と思えば、後ろから声が。








「……お前、誰だ?」







その瞬間、後ろから……生の円堂の声が聞こえた。




「(……えええ、円堂の声えぇぇええええ!!!!!????)」




そんな感じで暴れる心の声を必死で押し殺し、何もないかのように声の方向へと顔を向ける。



「……え、俺?」



雪女がドキドキしつつ、後ろを見ると……円堂と、バチッと目が合った。






……雪女が、幼い頃からずっと憧れてたキャラが。


「絶対に会えない」と諦めてたキャラが、





「(……俺の目の前に、存在してる)」








あまりの嬉しさに、すぐにでも爆発しそうな心臓を何とか押さえつつ、
席が近い円堂と顔を合わせるように座り直してから先生に気づかれないよう、
なるべく小さい声で、こしょこしょと話しかけた。



「……俺、今日転校してきた火月 雪女だ。よろしくな」

「おお!雪女か!俺は円堂守、よろしくな!」



そう言うと、円堂はニカッといい笑顔を雪女に向ける。



俺より素直だな……つーか、俺と性格が正反対だ。
円堂の笑顔が眩しくて仕方ないよホント。


こんな綺麗な笑顔向けられて「サッカーやろうぜ」とか、
そりゃ敵だろうが宇宙人だろうが未来人だろうが円堂と友達になるわ。



そういや……生で見た円堂の笑顔は初めてなのにどこか見覚えがあると思ってたら、
円堂の笑い顔は、どこか父さんに似てるんだ。



「(ん、あれ……?なんでそんな事思ったんだろ……?)」



雪女がそんな事を考えていると、
円堂が嬉しそうな顔で話しかけてきたので、雪女は意識をすぐに円堂に戻す。



「なあなあ、火月!!」

「……ん?なんだ?」



そうして円堂は、太陽のように明るい笑顔を雪女に向けたと思えば、
授業中とは思えないぐらいの大声で、嬉しそうにこう言い放った。





「……俺と、サッカーやらないか!?」




そのあと、先生が「遅刻しておいていい度胸だな、円堂」と
教科書で円堂の頭をはたいたのは言うまでもない。











……どっく、どっく。



さっきから大きく鳴りっぱなしの俺の心臓。

恥ずかしさと嬉しさで、ずっとどくどくと大きな音を立てている。



……ああもう本当うるさい、俺の心臓。もういっそのこと止まれ。














……そして、俺は今日から始まったこの愛すべき非日常に、大きな声で挨拶を告げることになったのです。






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