……そして、時は流れてーーーーー
リーガルマンモス捕獲の依頼を受け、第1ビオトープに足を踏み入れていたトリコと小松。
GTロボ乱入といったアクシデントを超え、一息つくトリコにマンサムはこう話した。
「そういえば、トリコ……このいざこざで忘れちまってたが……お前に話しておきたいことがあったんだ」
「なんだよ所長、改まって……」
「本当は最初に言うべきだったが……今ここに「芙蓉」が戻ってきている。」
「あいつには中々連絡が取れず苦労したが……お前たちの助っ人として、呼び戻しておいた。」
「なっ……芙蓉が!?」
「……まぁ、この騒ぎでもここに来ないということは、特別飼育室で昼寝しとるんだろう……あいつは一度寝ると起きないからな。」
「すまんが、ワシは今このザマだからな……トリコ、お前が芙蓉を迎えに行け。」
「あぁ、構わねぇが……」
……そんな会話があったのが数十分前。
二人は芙蓉がいると言う特別飼育室に向け、コツコツと足音を立てながら廊下を歩いていた。
「それにしても……芙蓉に会うのは何年振りだろうな……あいつは流れの料理人だから、中々会えねえし」
「……あの、トリコさん……芙蓉さんって……もしかして「妖狐シェフ芙蓉」のことですか?」
「なんだ小松、知ってんのか?」
「ええ……料理人界隈では有名な、流れの料理人ですよ。」
「美食屋のコンビを持たずに食材の仕入れから調理までを自分で行い、調理の際には"余りにも素早いその腕の動きが残像で9本の尾に見えてしまう"と言われてる人で、噂によると女性らしいんですけど……」
「まあ、僕はお会いしたことないんですけどね……でも、1度会ってみたかったんです!」
「ははっ、"腕が残像で尾に見える"……か!その話をしたやつは相当目が悪かったらしいな!」
「な、何笑ってるんですかトリコさん?」
「お前も生の芙蓉に会えば分かるさ、その噂が本当か、それとも真っ赤な嘘か。」
「……は、はい……」
そんな話をしながら、トリコと小松は特別飼育室への廊下を歩いていく。
「……あいつのことだから、もう匂いで俺に気付いたかもしれねぇな」
「えぇ!?まだ特別飼育室まで距離がありますよ!?」
「あいつも並外れた嗅覚があるからな……まぁ、俺には及ばねぇが。」
「ど、どんな人なんでしょう……芙蓉さんって……」
小松はそう言うと、怯えたように背中を震わせる。
その瞬間、うたた寝していた芙蓉は薄目を開けて1度だけ鼻をすんと鳴らし、
寝言かうわ言のように、小さくこう呟いた。
「……ん……なつかし……とりこのにおい……でも……しらない……においも……」
「まあ、いっかぁ……」
そう1度だけ呟くと、
芙蓉はまた顔を伏せて、暖かくゆるい夢の世界へと戻っていくのだった。
その様子を見た玉藻の前はゆっくりと顔を起こして、1度だけ芙蓉の頬をぺろりと舐めた。
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