君が流したユメナミダ。


血の匂い


それに気づいたのか、ヨウは
飛び出そうとしたナルトの服の裾を、急いでつまんで引っ張った。

「駄目だって、ナルト!」

そう言うと、カカシもこう声をかけた。

「邪魔だ。・・・下がってろお前ら。こいつはさっきの奴らとはケタが違う」

カカシと再不斬がにらみ合っていると、
黒はヨウに目を向けた。

「そこの女、お前は他の奴等とは違う臭い・・・俺と同じ臭いがするぜェ!」
「・・・」
「俺みたいに血生臭ェ、臭いがよォ」

血のような赤黒い色をした黒の目が、
ギラリ、と獣のようにヨウを睨みつけた。

「俺と戦ってもらおうじゃねェか・・・!!」
「・・・仕方ない」

そう言うと、ヨウは耳のピアスを外して
パーカーのポケットに突っ込んだ。

「お前を殺した後には、そうだなァ・・・そこの金髪ヤローでもぶっ殺してやろうかァ!?」

そうナルトを指さして笑う黒の言葉にカチンと来たのか、
ヨウは青い瞳をギロリと動かして、同じように黒を睨みつけた。

「・・・ざけんじゃねーぞ、私の仲間には指一本触れさせねーからそう思え」

いつもの大人しい口調とは違うヨウに、
みんな動揺を隠せずにいた。

「・・・よく言った、ヨウ。安心しろ!お前たちは俺が死んでも守ってやる。俺の仲間は絶対殺させやしなーいよ!」


カカシが笑って言うと、三人はホッとしたように顔色が戻った。


「・・・父様、そいつらの始末を頼むぜ。」
「好きにしろ」
「俺は、こいつをぶっ潰す!」


そう言うと、黒は木から飛び降りた。
途中で自分の刀を掴み、うまく地面に降り立つ。

「俺の愛刀、首切り斧鎌「爛菊」の錆になってもらうぜ・・・!」
「・・・来るなら来い、だって」


「・・・行くぞオラぁ!!」
「!」

ガキン!!

勢いよく振り下ろされた爛菊を、
ヨウはすぐに見切り、クナイで受け止める。

「・・・ッ!!」

しかし、その数秒後。
ジュウウ、と音を立てて、
ヨウの手が真っ赤に染まる。
ここには火花一つの火の気もないのに、その傷はまるで火傷のようで・・・。

「火傷・・・!?」
「・・・一つ言い忘れてたが、この爛菊に触れたら最後。鬼火で煉獄の痛みに焼かれて死んじまうぜ!」

よく見ると、爛菊の周りには小さな赤い鬼火がちらちらと浮かんでいた。

ヨウはヒーリングで自分の手を治しながら
その鬼火を睨む。

「この鬼火に触れた奴の皮膚は、火傷で爛れて菊のようになる。それがこの爛菊の名前の由来だ」

さっきの火傷も、この鬼火のせいなのだろう。

「安心しろ、切れ味だけは保障するぜェ。終わったらてめぇの首を綺麗にぶった切ってやるよ!」
「くっ・・・厄介な相手だって・・・」
「どうした?もう命乞いかァ?」
「命乞い・・・?そんな訳、あるわけないんだって!」

そう叫ぶと、
ヨウは勢いよく走り出し、黒を殴りにかかる。
しかし軽く避けられ、ヨウの拳は黒の服をかすっただけだった。

その隙を狙い、黒は印を素早く組む。

「食らえ・・・火遁、花霊屋(はなたまや)!」

黒は爛菊をバットのように振りかざした。
そうすると、鬼火があたりにぶわっ、と散る。
そして、散った鬼火一つ一つが
まるで意思があるかのようにヨウに向かって飛んでくる。


「・・・!」

しかしヨウは慌てず騒がず
冷静に印を組み始めた。

「水遁、死虎水(しとらすい)!」

すると、そばにあった川の水が逆巻き、
虎のような形になって、ヨウに向かってきていた鬼火に体当たりした。

そしてジュウウ、と音を立てて
鬼火はすべて消える。

「くそッ・・・鬼火が!」
「やっぱり読んだ通り、「鬼火」と言っていても所詮はただの火!水には弱いみたいだって!」
「てめぇ、なぜそれを知ってやがる・・・!?」
「私が何も考えずに、ただ殴りにかかっただけと思った?」
「あの時、何かしやがったのか!」
「・・・ちょっと、心を読ませてもらっただけだって」

そう言ってニヤリと笑うと、ヨウはこっそり電源を切っていた
腕のリミッターを見せた。

「・・・てめぇ、意外とやるじゃねーか」
「お互い様だって・・・!」
「今度は、心を読む暇すら与えねェからな!!」

黒はそう言うと、爛菊を持ち直して
こう言った。

「鬼火を消したくらいで調子に乗ってんじゃねーよ・・・先に言うが、俺とてめぇには根本的な違いがあるんだからな」
「違い・・・?」
「人を殺したことがあるか、無いかだ」

黒はそう言うと、少し気味の悪い笑顔でニタッと笑った。

「てめぇはまだ下忍。どうせ人を殺すどころか戦ったこともねェんだろ?」
「・・・」
「俺は物心ついたころから父様に殺しや技を仕込まれてる。それが俺とてめぇとの違いだ」

そう黒が言うと、ヨウは少しうつむいてこう言った。

「・・・見くびらないでもらえる?私だって、物心ついてすぐに人を殺す方法を教わった。そのあと何人も殺したんだって」
「そーかァ?」
「確かに自分が望んでそうしたわけじゃない。だけど、覚悟は完璧にできてるんだって!」
「・・・そうかよ!じゃあその覚悟、粉々に砕いてやる!!」

そう叫ぶと、黒はヨウに向かって走り出した。

するとヨウは、手を黒に向ける。
手に赤い光が灯った瞬間、地面から木が大量に突き出し、
不意を突かれた黒は木に捕まった。

「なッ・・・!!」
「・・・その覚悟を、どうするって?」

そう言って黒を見る目は、
普通のヨウとは違う、ひどく冷たい目だった。

・・・しかし、次の瞬間。


ザクッ!

「ぐああああッ!!」

その時、どこからか千本が飛んできた。
その千本は黒の首に刺さり、黒はぐったりと項垂れる。

「!?」

ヨウが驚いて、千本が飛んできた方を見ると、
またどこからか、千本が2本ほど飛んできた。

「きゃっ・・・!!」

ヨウは千本を避けようとしたが避けきれず、
まだ火傷が完全に治っていない右手に刺さった。

「・・・!」

火傷の痛みと千本が刺さった鋭利な痛み。
声が出ないほどのその痛みに耐えかね、
ヨウは意識を失った。

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