「愛しい」が絡まった
(じょろホレ お互いの生前話あり)
「アタシ、あなたとアタシがお互いに妖怪に生まれ変わって本当によかったといつも思うの」
「・・・そうなの?」
ホレさせ魔が不思議そうな顔をして聞くと、
女郎蜘蛛は少しはにかんでこう言った。
「今のアタシにはね、あなたと同じ、人の形をした体がある。」
「あなたを抱きしめることができる腕がある。」
「あなたを抱き上げる力もある。」
「あなたに愛を伝えられる言葉も、自分の口から言える。」
「どれもこれも、アタシがただの蜘蛛だったときには持ちえなかったものよ」
・・・君だけが、ボクを愛してくれる存在なんだ。
そういえば・・・長い年月を生きた蜘蛛は妖怪になるんだっけね。
もし君が良ければ・・・ボクと妖怪になって、今より長い年月を生きてくれるかい?
死んでからも一人だなんて、ボクは嫌だよ・・・!!
ボクは、愛を操れるくらい強い妖怪になる。きっと君を守ってみせるから!
・・・だから、そばに、そばにいて。
「アタシは、あなたを愛した。」
「だからアタシも、妖怪になったの」
「後悔?」
「そんなものどこにもないわ」
ねえ、聞いてくれ。
今年は不作で飢え死にする人が出たんだ・・・それでボクは間引かれるそうだよ。
ボクはそもそも、「イラナイ」人間だったんだからね、仕方ないよ。
でも・・・湖に落とされるくらいなら、どうか君がボクを毒で殺してくれないか?
君の毒なら、きっとボク、苦しまずに死ねるから・・・
さあ、早く!
ボクを迎えに来る大人が来る前に!
・・・ありがとう・・・
大好きな君の毒、だから・・・全然苦しく、ないよ・・・
あんなに顔を青くして。苦しくないなんて嘘吐いて・・・
・・・ホレさせ魔が、妖怪になるとき頭から消した記憶。
兄のせいで消された自分の存在を、どうしても無くしたくなかった、あの頃。
あなたはあんなに苦しんで愛情を欲しがったのに、
あの時、ただの蜘蛛だったアタシは、
あなたを愛していたのに、あなたが望む「愛」を、一かけらもあげられなかった。
強いて言うなら、最後に彼に注いだ毒が愛の代わり。
だから、人の体を得た今、
アタシが彼を愛して愛して愛しぬいて、幸せにしてあげるの。
「女郎蜘蛛、どうしたの?・・・そんなにきつく抱きしめたら苦しいよ」
「・・・愛してるのよ、ホレさせ魔。」
「きゅ、急にどうしたの・・・」
「ホレさせ魔はアタシを、愛してる?」
「う、うん。・・・ボクも女郎蜘蛛を愛してるよ?」
「それなら、よかったわ」
ぎゅっと抱きしめて、あなたをもっと感じていたいの。
あなたがアタシを見捨てるその日まで。
「女郎蜘蛛・・・」
「ん、なあに?」
「ボクを、ボクを一人にしないで。ボクは女郎蜘蛛じゃないと嫌なんだ」
「ボクは、女郎蜘蛛しか愛せないんだ・・・」
「ホレさせ魔・・・」
怯える小さな子供のような彼。
アタシは彼を守ると決めた。
彼をもう一度、私の手で殺める日が来るまで。
「愛しい」が絡まった
そんな日来させてたまるか(真顔)
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