君が流したユメナミダ。


バオバブの木


【3日目】


「うーん、やっぱりモーターの故障みたいだなぁ・・・」
「士郎!」
「ん?どうしたのステラ。」
「ねぇ士郎。この羊ね、小さい木も食べる?」
「うん、食べるよ。」
「そっかぁ!なら、バオバブの木も食べるよね。」
「ステラ、バオバブは小さい木じゃないよ?教会くらいある大きい木じゃないか。」
「あんな大きいの食べるって言うんだったら、ゾウの一部隊はいると思うなぁ。」
「あはは、ゾウの一部隊だって!私のところだと、ゾウなら重ねなきゃ。」
「いい?大きいバオバブも、もとは小さい木だったの。」
「そりゃそうだよ。で、なんで小さいバオバブを羊に食べさせたいの?」

僕がそういうと、ステラは
「そんなこともわからないのか」とでも言いそうな顔で、僕を見た。

「わっかんないかなぁ?」
「・・・?」
「いい?草にはいい草と悪い草があるじゃない。つまり、いい種と悪い種。」
「ふむふむ」
「種って地面の奥深くで眠っているでしょう?それがある日目覚めて、日の光の方に背伸びするの。」
「赤カブや薔薇だったら好き放題に伸びていいけど、それがバオバブだったら大変!」
「どうなるの?」
「早く追い払わないと占領されちゃうんだ!バオバブたちったら、根っこで星を突き通すの。」
「だから、私のところみたいに小さい星は破裂しちゃうの!」
「そ、それで羊にバオバブを・・・?」
「うん。羊がバオバブを食べてくれたら、星のお化粧をする時間が減るから。」
「だけど、バオバブの小さいやつって、薔薇の木にそっくりなの。だから見分けがつくようになったら、残さず引っこ抜くんだ。」
「だけどね、面倒なんだ。やること自体は単純なんだけど、バオバブたちって油断できないから。」

「それならこの羊にも手伝えるよ。この羊は、小さい木が大好物なんだ。」
「助かるなぁ♪・・・あ、そうだ。」
「士郎、バオバブを描いてみたらいいよ。」

ステラはふわりと笑って、そう言った。

「・・・え?」
「一つ立派な絵を描いて、バオバブがどんなに凶暴なのか、皆にわかってもらえるように。きっと役に立つよ。」
「でも、僕はそんなに上手い絵は描けないよ?羊を描くのも一苦労だったんだよ?」
「でも、バオバブはとっても危険なんだよ?」
「ある怠け者が住んでる星を知ってるんだけどね、バオバブがまだ小さいからって、放り出してたの、3本も!」
「それで、その人の星はバオバブに飲み込まれちゃったんだ。その危険さを教えないと!」
「星を旅する人が士郎の絵を見たら、きっとバオバブに気をつけるはずだから。」
「た、確かにそれは一大事だね。・・・わかったよ。バオバブが危険だって知らせよう!」
「わぁっ、ありがとう!」


「(とは言っても・・・)」
「(バオバブなんて、小さいときに本で見たっきりだし・・・)」


「難しいよ。」
「士郎の絵は無駄にならないよ。いろんな人が旅をするとき、教訓として生かされるから。」
「・・・確かにそうだね、ぐずぐずしていられないや。」


そして30分後。


「出来た・・・い、今はこれで精一杯だよ・・・」
「星を飲み込んだバオバブは、3本だよ?」
「・・・ごめんねステラ。もうこれ以上は僕でも無理なんだ・・・」
「そっかぁ。・・・でもこれで、バオバブの被害もきっと減るはずだよ。」
「うん。それなら僕も満足だよ。」



飲み水は順調に減って行ったけど、

僕は、

バオバブの危険を知らせるほうが

大事だったんだよ。





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