君が流したユメナミダ。


夕日を見に行こう


【4日目】

「・・・。」

ずうっと黙って空を見上げているステラ。
僕は、気分でも悪いのかと心配になって、ステラに声をかけた。

「ステラ、どうかしたの?気分でも悪い?」
「・・・士郎、夕日を見に行こうよ。」
「いや・・・今、日が昇ったところだよ?」
「・・・あ、そっか。私のところと同じように考えてた。」
「私のところちっぽけだから、座っている椅子を動かすだけで、好きなときに夕日が見れたんだ。」
「ここだと待たなきゃいけないよ。」
「早く日が沈まないかなぁ。私ね、日が暮れる頃が大好きなの。」
「・・・いつだったか忘れたけど、43回も夕日を見たっけ。」
「43回はさすがに多いんじゃないかなぁ。」
「だって・・・悲しい時って、夕日を好きになるものでしょ?」
「ステラ・・・そんなに悲しかったの?」



じゃあ・・・今も?



【5日目】


「飲み水がピンチだ・・・。ここは気合入れてやらないと危ない!」
「・・・ねぇ、士郎。」
「どうしたの、ステラ。」
「羊が小さい木を食べるなら、花も食べるの?」
「うん、その羊は何でも食べるよ。」
「トゲのある花も?」
「うん、そうだよ。」
「・・・じゃあ、トゲって何のためにあるのかな。」
「んー?(ここのボルトが外れないなぁ)」
「トゲは、何のためにあるの?」
「別に何の意味も無いんじゃないかなぁ。ただ意地悪したくて、トゲを生やしているのかもね。」
「そ・・・嘘だよ!!」
「花は弱いの!無知なの!あの弱いトゲを、恐ろしい武器だと思ってるの!」
「それで精一杯自分を守った気でいるの!」
「それなのに士郎は・・・」
「・・・(・・・え?)」
「本気で思ってるの?花が意地悪してるって。」
「あ・・・いやごめんね。さっきのは適当に言ったんだよ。」
「大事なことを考えていたから。」
「・・・大事なことって、何?」

ステラは、僕を見た。

きっとステラから見れば、僕は
たいそう汚く見える物の上にかがみこんで、
機械油で手を真っ黒にしながら、金槌を必死に振っているように見えるんだろう。

「士郎はまるで、大人みたいな口の利き方をするのね!」

そう言われて、僕は少し恥ずかしくなった。
そしてステラは、続けてこう言った。

「士郎はなにもかも、ごちゃごちゃにしてるよ・・・まぜこぜにしてるのよ・・・」

そしてステラは、目の覚めるような、
金色の髪を風に揺らして、こう言った。

「・・・私の知っているある星に、ガゼルっていう人が、いたよ。」
「花の香りなんか嗅いだこと無い、星も眺めたことも無い、だぁれも愛したことがない・・・」
「そう、士郎みたいな「人」が。そんなのは人じゃなくて、キノコなんだよ」
「キノ・・・!?」
「そう、キノコ。」

そういうと、ステラはもう真っ青になって怒って、こう言った。


「ねぇ、花は何百万年も前から、トゲを作ってる。羊も何百年万年も前から、花を食べてる。」
「じゃあ、どうして花は何の役にも立たないトゲを、苦労してでも作るの?」
「そのわけを知ろうとするのが、大事じゃないの?花が羊に食べられちゃおうが、たいしたことじゃないって言いたいの?」
「ステラ・・・」
「・・・私の星には、花があるの。他には無い、とても珍しい花。」
「ある朝、羊がぱくっと食べちゃうようなことがあるんだってこと・・・。」
「私が・・・この私がそれを知っているのに、それが大事じゃないって言うの?」
「そ、それは・・・」
「ねぇ、何百万もの星のどれかに咲いてるたった一輪の花が好きだったらって、士郎は考えたこと、ある?」
「もしそうだったら、その何百万もの星を眺めるだけで幸せになれるの。「あぁ、私の花がどこかにある」って。」
「もし羊が花を食べちゃったら、星と言う星が全部なくなっちゃう様なものじゃない。」
「・・・それなのに、大事じゃないって言うの・・・?」
「ステラ・・・大丈夫だよ。その羊には口輪を描くよ。ステラの花には囲いを作るよ。」
「だから・・・だから・・・」



どうしてだろう。

ステラは、蛇の内側を見てくれたのに

どうして僕は、

ステラの心が見えないの?

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