はじまりの音が聞こえる
「でなんだそいつらは」
え?俺のこと知んないの?!
「(やつは沢田殿の事を知らなかったのか!?やはりここはやり過ごすべきだった)
「(あちゃー兄貴に教えるの忘れてたぁぁ)」
「そろそろ教えてもらおうか?」
ダッ
ブンッ
「!!」
ガンッ
バジルの攻撃はかわされた
「う゛お゛ぉいなんだぁてめぇ貴様」
『Σ俺かよ』
「このガキとはどーゆー関係だぁ?ゲロッちまわねーとお前を斬るぜ」
『・・・』
バッ
「!!」
ドガガガガッ
「なんだぁ?」
「(火薬の匂い!)兄貴!危ない!」
ダッ
「そのかたに手をあげてみろただじゃおかねぇぞ」
「まそんなところだ相手になるぜ持ってきてねーのに何故かオレのバットがたてかけてあったんだよなハハハ」
あきらかあいつだ――――!!!
「よくわかんねーがひとつだけ確かなこと教えてやるぜオレにたてつくと
死ぬぞぉ」
「そーだよ。だから、とっとと帰ったほうがいいんじゃない?」
気付いて!
私はあんたたちのことを心から嫌ってるわけじゃない。
言葉は悪いけど、あんたらのことを心配してるの!
「その言葉そのまま返すぜ。」
「ありゃ剣だろ?オレからいくぜ」
「あいつら……勝てんのか?こいつでもこんだけボロボロなんだぞ」
『なっ!』
「やめてください!!おぬしらのかなう相手ではありません!!!」
「後悔してもおせぇぞぉ」
「(あーぁ・・・)兄貴、手加減ぐらいしろよな?」
「いくぜっ」
戦闘体制に入ってしまっていた。
山本は、あっという間に銀髪の剣士に倒されてしまった。気を失って路上に倒れている。
「死んどけ」
男は獄寺に刃を振り下ろす。
「獄寺くんっ!!」
─ガキィッ─
胸元を血で真っ赤に染めた少年が、三角形の武器のようなもので男の剣を受け止めた。息が荒い。限界が近いことが見て取れる。
「いよお゛ぉ、ゴミ野郎。そろそろゲロっちまう気になったかぁ??」
「断る!!」
「あーあ・・・兄貴キレたねぇ」
少年は男を真っ直ぐに睨みつけて言った。
「ならここが、貴様の墓場だぁ」
少年と男の激しい攻防戦が始まった。
─ポフ─
その様子をどうしようかとあたふたしているツナの頭に何か柔らかいものが降ってきた。
「…へぁッ??…これ…!?」
手に取ってみるとそれは、六道骸との戦いで手に入れた手袋だった。タンスの中にしまっておいたはずなのに、どうしてここに…
「何をするときも、どこに行くときも…」
「!?」
声のする自動販売機の上を見れば、また訳の分からないコスプレをしたリボーンが立っていた。
「たとえ真夏のうだるような暑い日でも、その手袋は持っとけ」
「リボーンちゃん!?」
「お前それつけてれば、自由に超死ぬ気モードになれるはずだぞ」
「(あれは・・・死ぬ気のXグローブ!?骸様を倒したという・・・」
「え…えぇ!?本当に!?」
ツナは数字で「27」が描かれたその可愛らしい手袋に目をやる。
(これ、そんなすごいものなんだ…)
─ズサッ─
「!!?」
はっとして少年を見やると、先程より血にまみれ、仰向けに倒れている。額の炎も消えてしまっていた。
「…う゛お゛ぉい、話はそっちのガキから聞くことにしたぞぉ」
男はツナを見てから少年に目を戻す。
「てめぇは死ねぇ!!」
男は少年に剣を振り下ろした。しかしその手は、何者かによって阻まれる。額の炎、凪いでいるオレンジ色の瞳。超死ぬ気モードになったツナだ。ツナの炎と、グローブのエンブレム『X』を見た男の顔が、驚愕に彩られる。
「…まさかお前が噂に聞いた日本の…」
男は好戦的な瞳でツナを見た。
「ますます貴様ら何を企んでんだぁ!!?死んでも吐いてもらうぞぉ、オラァ!!!」
「兄貴、油断すんな。こいつは私の師匠を倒した。とりあえず‘あれ‘さえとれば、満足だろぉ?兄貴ぃ」
「…っく…」
ツナの額から炎が消えた。力がまだ安定していないのに加えて、やはり男はただ者ではない。
「う゛お゛ぉい、いつまで逃げる気だぁ!?」
「骸様を倒したときの覇気はどうしたんだろーねぇ?」
男は山本を倒した時に使った仕込み火薬を放った。しかしそれはツナに届くことなくなぎ払われる。あの少年の不思議な武器だった。あたりがすさまじい煙で包み込まれる。
「拙者はバジルと言います」
バジルと名乗った少年は、煙に紛れて黒い高級そうな箱を取り出した。
「親方様に頼まれて沢田殿にあるものを届けに来たのです」
バジルは箱を開ける。そこには7つの変な形をした指輪が入っていた。
「何、これ…?」
「何かはリボーンさんが知ってます!とにかくこれを持って逃げてください!!」
「な…!?あなただけ残して逃げるなんて…!」
指輪の入った箱を胸に抱きしめて、バジルを見つめるツナ。
「…う゛お゛ぉい」
「なにこそこそやってんのよ」
バジルは声の方からツナをかばうように立つ。煙の向こうから銀髪の剣士とファルファが現れた。
「そぉいうことかぁ…こいつは見逃せねぇ、一大事じゃねーかぁ」
「そうよねぇ・・・」
男とファルファは剣を構える。
「貴様らをかっさばいてから、そいつは持ち帰らねぇとなぁ。…さぁ、何枚におろしてほしい??」
「細切れにしちゃうってのはどうだい兄貴」
「そうだなぁ」
「…相変わらずだな、スペルビ・スクアーロとスペルビ・ファルファ」
(…この声…)
聞き覚えのある声が、剣士の男とファルファの向こうから聞こえてくる。
「子供相手にムキになって、恥ずかしくねーのか?」
美しい金髪、鳶色の瞳。そして、手にしたムチと後ろに並ぶ、スーツ姿の男たち。
「ディーノさん!!」
「跳ね馬だと!?」
「あ゛ぁ゛!?跳ね馬!?」
“スクアーロ”と呼ばれた男は、ツナの口から出た名前に、顔色を変える。
「俺の可愛い妹分に手ぇ出すってんなら、俺が相手になるぜ」
「う゛お゛ぉいふざけんな!私が相手してやろうかぁ!?」
すっとスクアーロは、ファルファを止め、思案する素振りを見せ、やがてディーノを見て、にやりと笑う。ディーノとやりあうのは何かまずいのだろうか。
「今日のところは大人しく…」
「そうだよねぇ、兄貴」
ファルファと引き下がる素振りを見せた瞬間だった。
「帰るわきゃねぇぞぉ!!」
「ボンゴレリング寄越しな!」
「うわっ」
男はツナの手を掴み、引き寄せる。
「手を離せッ!!!」
慌ててムチを振るうディーノだったが、一足早くスクアーロが仕込み火薬を放つ。
すごい煙が立ち込める中、ディーノはせき込む声をたよりにツナとバジルを見つけ出した。
「お前たち!大丈夫か!?」
「貴様に免じてこいつらの命は預けといてやる」
「かっさきたいところだけどね!バーカッ!」
煙の中、ファルファは指輪の入った箱を手にしていた。さっきツナを引き寄せた際に、ファルファが奪い取ったらしい。ツナは今更ながら、自分の手に箱がないことに気がついた。
「あぁ!ボンゴレリングが…」
「ボンゴレ、リング…??」
「じゃあなぁ」
「おい!そこの雪乃っつう奴!」
「な、なぁにぃ!」
「今日は、命拾いしたなぁ!でもなぁ今度からはそうは行かねぇぞぉ!首を洗って待ってろ、ボンゴレの小僧どもぉ!」
スクアーロとファルファは箱を持って、そのまま逃走してしまった。慌てて後を追おうとしたバジルは、低く呻いて倒れてしまう。
「な…しっかりして!」
ツナはバジルを抱き起こすが、気絶してしまっているようだ。
「ボス…サツだぜ」
ロマーリオがディーノにそう告げた。確かに遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。
「ディーノさん、この子意識が…!!」
ディーノは素早くバジルを抱き上げた。そして心配そうなツナに笑いかける。
「廃業になった病院を手配した、行くぞ!」
「待って!山本と獄寺くんが…!!」
ツナは2人を思い出す。気を失って倒れているはずだ。
「あいつらなら心配ねーぞ」
リボーンが言うと、後ろから2人が走ってくるのが分かった。
「ツナ!ケガは!?」
「いったい何なんすか、奴は?」
「お前らの戦闘レベルじゃ足手まといになるだけだ」
リボーンは2人に冷たく言い放った。
「とっとと帰っていいぞ」
獄寺も山本も目を見開いた。なにも言い返せないでいる。
「リボーン、何でそんなこと…!!」
「行くぞ」
リボーンはツナの手を引いてディーノの後を追う。ツナの手を引っ張りながら静かに口を開いた。
「あいつらだって感じてるはずだ。あれだけ一方的にコテンパンにされて、はらわた煮えくり返ってねーわけがねぇ」
「…」
獄寺も山本も厳しい顔で俯いていた。ツナはどうしても声をかけられないまま、その場を後にした。
ディーノが手配したという病院で、医学の心得もあるらしいロマーリオがバジルの治療を行った。思ったより傷は浅く、命に別状はないらしい。
「それで、えと…バジル、くん…は、ボンゴレのマフィアなんですか?」
「いいや、こいつはボンゴレじゃねーが、お前の味方だってことは確実だ」
ツナは耳を疑った。ボンゴレではないバジルが味方で、逆にボンゴレであるらしい先程の剣士が敵とは。
「ってゆーか俺、マフィアとか関係ないですし!!」
「それがなぁツナ、そーも言ってらんねぇみたいだぞ」
「あのリングが動き出したからな」
スクアーロとファルファが奪っていった『ハーフボンゴレリング』の謂われを聞き、奪われたことに一安心のツナ。しかしそれはディーノの取り出した箱によって破られる。
「それがなぁツナ…リングはここにあるんだ」
「えー!!?」
奪われた方が偽物で、こちらが本物だと教えてくれる。
“ある人物”からハーフボンゴレリングをツナに渡すよう頼まれたのだそうだ。
「なんで俺なんですかー!?」
そう言うツナにディーノは悪戯っぽく笑っている。
「そりゃーお前がボンゴレの…『きゃー!!』
ツナは両手を前に出してディーノに待ったをかけた。その先は言わせないと言うことだろう。
「私!家に帰ってネッチョリ勉強しなきゃないんですっ!それじゃっ!!」
ツナはそそくさと病室をあとにした。
「あいつ、逃げられると思ってんのか…??」
ディーノはぱかっと口を開けて呆れていた。マフィアに関わりたくないというツナの強い意志には、ある意味感心してしまう。
「…バジルは囮だったんだな…」
リボーンはバジルの横顔を見つめながら言った。
「あぁ…おそらくバジル本人も知らされてねぇ」
ディーノがすっと目を細めた。
「あの人のことだ、こうなるとは読んでたんだろーが、相当キツイ決断だったと思うぜ」
ディーノはリングの入った箱を持ち上げ、リボーンと目を合わせて苦笑した。
「つーかこれ、直接ツナに渡せばいいのにな。あの人俺と一緒に日本に来たんだぜ?」
「そーか…あいつ、来たのか…」
リボーンの瞳が珍しく揺れた。
その頃のツナは、家に向かって歩いていた。疲れた顔をしている。
「…ん?」
自宅の門をくぐると、なんだか庭にたくさんの洗濯物が干してあるのに気づいた。しかもみんな作業着とタンクトップのシャツ。
「…まさか!!」
玄関のドアを開けると、泥にまみれた長靴と、さらにはヘルメットとつるはしが置いてあった。それがツナの予感を確信に変える。
迎えてくる酒臭い子供たちをかわしながらリビングに駆け込む。
「…やっぱり…」
散らかったリビングの真ん中には下着姿で気持ちよさそうに眠っている男の姿が。
「奈々〜」
寝言で奈々ママンの名を呼び、オナラをしながら寝返りを打つその姿は。
「…親父…」
ツナはため息をつくと、よろよろと自室へ向かう。
かわりにリビングにはリボーンが顔を出した。
「家光…お前がこのタイミングでハーフボンゴレリングを息子に託すってことは…」
リボーンの呟きは誰の耳にも届かず、消える。
「あっちでとんでもねぇことが起こってるんだな…」
「…ふぁあぁぁ…」
翌朝、ツナは大あくびをしながらリビングに入ってきた。
窓から見える庭では、下着姿のままの父・家光がランボ、イーピンと遊んでいるところだった。
「…おはよう」
ツナは窓からそっと顔を出し、縁側にでる。すると家光は途端に顔を輝かせた。
「ツナー!!しばらく見ない間にまた随分とかっこよくなったなぁー!!」
「…親父ってば相変わらず適当なんだから!!」
冗談としかとらえていないツナは、抱きついてこようとする家光を必死に押し止める。
「…で、どーなんだ??友達とは仲良くやってんの??」
「は??…まぁ、仲良くやってるよ…?」
急に友達のことを聞いてくる家光を不審に思うツナ。
「そーかそーか」
家光はツナを見て、首をかしげた。
「もしかしてそのペンダントは友達にもらったのか??」
「え…??」
ペンダントなんてした覚えがない。そっと胸元を探ってみると、確かに首には何かかかっていた。
「…これ…!ボンゴレリングとかいうやつ!?」
昨日ディーノの元に置いてきたはずのボンゴレリングが首にかかっている
「なんだツナ?急に固まっちゃって。相談ならいつでも乗るぞ」
家光は朗らかに笑っている。そんな家光にかまっている余裕がツナにはなかった。
「ちょ…ごめん!!」
踵を返し、急いで自分の部屋へ向かう。
こういうことはリボーンに聞くのが1番だった。
「リボーン!!このリング持ってきたのリボーンでしょ!?」
コーヒーの準備をしているリボーンに聞いてみるが、知らないと言う。
「じゃあ誰が…!?」
「あいつから何も聞いてねーのか??」
「あいつ??」
あいつと言われても誰のことだかさっぱり分からない。というかこの際誰でも構わなかった。
「とりあえず!誰でもいーけど、私マフィアとか関係ないから!!」
「何言ってんだ??関係大アリだぞ」
「え??」
「ボンゴレリングは次期ボンゴレのボスの証だからな」
「…じゃあこれ持ってるとマフィアってこと!?」
「まーな。俺もお前にそのリングは早いと思うが、そーも言ってらんない緊急事態になっちまったからな」
「緊急事態…??」
リボーンの言う緊急事態とは、ボンゴレ最強とうたわれる、独立暗殺部隊・ヴァリアーが、大きな力が手に入るボンゴレリングを狙いだしたということだった。昨日襲ってきた銀髪の剣士とファルファもヴァリアーの一員らしい。
「力が手に入るって…あっちが偽物ってバレたら大変なんじゃ…??」
「あのニセモノ相当よく出来てて、10日はバレねぇ」
「10日…!?」
1週間と3日。あっという間だろう。
「バジルが作った貴重なこの時間で、みっちり鍛えて、ヴァリアーを迎え撃つぞ」
リボーンの瞳がキラリと輝く。
「次期ボスの証であるそのリングを守り、ボンゴレ10代目になるのはお前だぞ」
「10代目になんかならないって言ってるだろ!」
ツナはパジャマを脱ぎ捨て、制服に着替える。
「ディーノさんに返してくる!!」
学校指定のセーターに袖を通すと、かばんを引ったくって、慌ただしく部屋を出ていった。
「お、ツナ!」
庭で障子の張り替えをしていた家光は、慌てる愛息子を呼び止める。
「悩みがあるなら、何でも父さんに打ち明けてみろ」
家光はツナの変な態度を、何か悩みがあるせいだと思っているらしい。
「何もないよ!…いってきますッ!!」
マフィアの話をしても普通信じてもらえるはずがない。
「気をつけてな〜」
「見ろ友よ、あれが俺の息子だぜ…俺そっくりにかっこよく育っちゃってな!!」
ツナを見送った家光は、“友”に話しかけていた。
「知ってるぞ。俺がずっと面倒見てきたんだからな」
家光の視線の先にいたのはリボーンだった。2人は友人関係らしい。
「ありがとよ、感謝してるぜ」
家光がニッと白い歯を見せて笑う。
「ツナにはお前のこと、バラさないのか?」
「いつでも言う準備はできてんだが、うまくいかなくてな〜」
ぐぐっと大きく伸びをする。
「結局自分で配るもん配っちまったし……奈々〜メシ〜!!」
「…」
リボーンは何か言いたげな瞳で、家光の背中を見送っていた。
「ツナ、修行するぞ」
「・・・・・は?」
制服に着替えようと服に手をかけている綱吉に言い放たれた。
「修行って、何のために?」
「決まってんだろ?リングが偽者だとバレるまで10日ぐらいはあるから修行するんだ」
「ちょ、それってバレたら日本にくるって聞こえるんだけど?」
「そうだぞ」
「激しくお断りー!」
朝から声を上げてしまった。修行ということはまた戦うことから逃げられないということ。あと、修行しないと勝てないということ。マフィアは何処までも綱吉から平和というものを奪うのが大好きらしい。貴様らはドSか!
「リングはボンゴレの正統後継者に代々受け継がれてきたんだ。だから、お前がそのリングを賭けて戦うのは当然のことだ」
「俺は継ぐ気なんてないけど?」
正統後継者なんて肩書き譲れるものなら譲ってしまいたい。
「その指輪を持ってる限り狙われるぞ?」
「なっ!?」
リボーンの指を辿って見た先は首。鎖のチェーンでぶら下がっている中途半端な指輪に言葉が出ない。
睨みつければ自分ではないと否定するリボーン。ならばもう1人。この家で堂々と綱吉の部屋に入ってこれるマフィア関係者。
「親父っ・・・」
断定。あの人絶対ボンゴレのマフィアだ!拳を握る綱吉の姿に昨日の掃除機事件を思い出してしまった。身震い。
「それはハーフボンゴレリングだ。二つあるハーフ同士を一つにしてはじめてちゃんとした指輪になるんだ」
「・・そのもう片方のハーフを持ってるから、あの人はこれを狙ってたの?」
「そうだぞ。偽者だと分かれば奴らは全力でそれを奪いにくる。お前は守護者と一緒にその指輪を賭けて戦うんだ」
「守護者って、まだあるのこの指輪!?」
「続きは昨日の病院で話してやる」
「ちょっとリボーン!」
窓からひょいと出て行ったリボーンを追って窓から身を乗り出す。なんて無責任なんだ。姿の見えない赤ん坊をざっと探してみるもののやっぱり見つからず、深く溜息を吐き出し脱ぎ途中だった服に手をかけた。
中山外科病院とかかれた建物の扉を開けてみるが、やはり昨日と同様で人の気配は殆どしない。
廃業となった病院を買い取ったとディーノが言っていたが、やはりマフィアのすることは恐ろしい。くそ、金持ちめ。
「10代目!」
「綱吉」
「獄寺くん、山本」
受付の場所に立っている2人に駆け寄る。目立った怪我も見当たらず安心している綱吉は、2人が気まずそうに顔を背けたことに気づかなかった。
「よかった・・」
「・・綱吉も、目立った怪我がなくて安心したぜ」
「それは私も同じだよ。2人とも元気でよかった」
ぎゅっと山本と獄寺の手を掴み顔を俯かせる。どちらも綱吉にとっては大事な友人で、黒曜の時みたいに大きな怪我を負わせてしまったのではないかと心配していたのだ。しかし、その不安が獄寺と山本を苦しめていることに気づいてはいない。2人は綱吉を戦わせたくなかったし、黒曜ヘルシーランドでの一件で自分達は強いと自惚れていた結果がこれだ。男としてこれほど情けない話があるものか。
「実は妙なことがあってよー」
自分達のこの感情から逃げ出す為に、山本は朝起きたことを話した。とてもいいタイミングで。
「朝ポストん中覗いたらこんなん入ってたんだよ」
「俺もです」
ゴソゴソとポケットを漁って取り出して見せる。
「やっぱり呪われてるー!?」
思わず叫んでしまった。
2人が取り出したのは中途半端な形をした指輪。デザインは多少綱吉のと異なっている。決定だ。それは呪われている!意味を成さないのに鞄で防御する。呪いよ去れ!そんなことぐらいでボンゴレの呪いが弾かれる筈がないのに。無駄な努力。変に怯える綱吉に首を傾げてみる山本と獄寺の後ろで、リボーンを肩に乗せて見ていたディーノはやっぱり苦笑いをしている。
「呪われてねーぞ。その指輪はボスを守護するのに相応しい奴に配られる指輪だ」
「リボーン!」
スタッと床に着地をしてもう1度跳躍。飛んできたリボーンをキャッチして抱きしめる綱吉の顔を下から見上げ、首に下げられている指輪に触れる。
「指輪は全部で8つある。そのうちの一つ、「雪のリング」は、たいそうな代物だぞ。」
「雪の・・・・リング?」
「雪は、大空を包み込む、清き存在。ユキのリングを争う戦いでは、片方が絶対に死ぬ」
「そ、それってどういうこと!?」
「まぁ、それは今度教えてやる。ボンゴレリング、これはボンゴレの伝統でな、初代ボスとその守護者達は個性豊かなメンバーでそれにちなんだ名前がリングにあるんだ。綱吉のは『大空のリング』だ」
「大空・・?」
「すべてに染まりつつすべてを飲み込み包容する大空のようだったのが初代ボスだ。よって、大空のリングと呼ばれるようになったんだ」
「俺そんな素質ないんだけど・・」
「そんなことありません!10代目にもしっかりとあります!」
「獄寺君、精神科行ったら?」
力説する獄寺に冷たい一言。撃沈した獄寺。
「霧、雲、雷、嵐、雨、晴、雪とこの7つが守護者に配られる。獄寺は『嵐』で山本は『雨』だな」
「へぇー・・お?獄寺と多少形が違うな」
「確かに・・」
「その指輪を持ってる奴が、次期ボンゴレボス沢田綱吉を守護するってことだ」
「だから俺はならないって言ってるだろ!それに山本は野球があるんだから指輪は邪魔になるし」
「そうだな・・これ、返すわ」
すっごい惜しいが。そういって指輪をリボーンに差し出す山本にブチッときた獄寺をさりげなくディーノが押さえる。
「その指輪を持ってれば、昨日の長髪ともう1度戦えてもか?」
「!?」
「っ」
「ちょ、リボーン何言ってるの!」
顔つきの変わった2人の変化にリボーンの口を押さえ込む。昨日のことはやはり2人ともあまり触れてほしくないはずだ。今の指輪の話もわざと山本が話しを変えた事から始まったのを分かっていたからすぐにそちらに対応したというのに。振り出しに戻したリボーンを睨んでもその目が逆に睨んでくる。
「・・小僧、やっぱりこの指輪貰うぜ?」
「山本!?」
「リボーンさん!アイツと再戦するとしたら何時になるんですか?」
「10日後だ」
「獄寺くんも!?」
「10日後か・・・負けたまんまはイヤみてーなんだ、俺」
「10代目!10日でこの指輪に恥じぬ人間に変わって来ます!」
「ま、待って2人とも!!」
呼びかけても止まることはせず出て行ってしまった2人を見送ってしまった。自分を抱きしめている腕に力が加わっても、リボーンは何もいわなかった。
「綱吉、お前も修行するぞ」
「・・・うん」
「まずは死ぬ気モードではなく超死ぬ気モードにいつでもなれるようになることと、長時間その状態を保つ事から始めるからな」
素直に修行することに頷いた綱吉に内容を告げるリボーンの手は綱吉の頬へ。悲しげに揺れる目を暫く見つめていたが、あまりこうしてはいられない。そろそろもう1人の守護者がここにくるだろうし、そいつを鍛えてくれる教師もくる。パッと腕から飛び降りたリボーンが着替えをしているのを眺めていたら、ディーノに頭を撫でられた。
「綱吉・・」
「・・ディーノさんは、最初ボスになんかなりたくなかったんですよね?」
「ん?・・ああ、そうだぜ?」
「どうしてキャバッローネを継ごうと思ったんですか?」
見上げてくる綱吉の視線を受け、そのときのことを思い出す。
「皆を助けたかったんだ」
「・・・助けたい」
中途半端の大空のリングを触る。
助けたい。ディーノの一言に、綱吉が何を思ったのかは分からない。
ただその目に決意が秘められたのは確かだった。
「・・・甘い、甘すぎるんだよね跳ね馬はぁ」
「!?」
屋上に居たファルファに、みんなの視線が注がれる。
「おい、そこのボンゴレ小僧。それに跳ね馬と野球馬鹿と自称右腕。お前らには「覚悟」がねぇ。ちなみに言っておくが、私は雪の守護者だ。」
そういうと、懐から、雪のハーフボンゴレリングを取り出した。
「兄貴は雨の守護者だよ。そっちの雪の守護者と、雨の守護者はだれだぁ?」
「雨は俺だ。」
「雪は雪乃ちゃんだ。」
「けっ、アイツにろくな戦いは出来るとは思えねぇな。後悔しとくんだな。兄貴と私には勝てない。」
ダッ
ファルファは、屋上から飛び降りて、ディーノを睨みつけて、こう言い放った。
「無駄な知識入れるんじゃねぇぞお、そんなことしたら、かっ裂いてやる」
と言ってから、帰っていった。
ボンゴレ最強、独立暗殺部隊ヴァリアー。
9代目直属のその暗殺部隊は表舞台に出てくることはなく、闇の中で難易度の高いミッションをこなしていくプロの集まり。
「あのスクアーロと、ファルファはそこの幹部だぞ」
「プロ中のプロ!?」
ボロボロの姿のツナと一緒に帰り道を歩いているリボーンの説明にバジルは静かに頷いた。ツナが死ぬ気の炎をもっと長時間維持するために最良の相手だとリボーンがわざわざ頼んだ。遅くまで人が寄り付かない場所で戦っていたツナを心配してこうして送ってくれている。優しい子。
「よく無事だったね、バジル君・・」
「いえ、拙者もギリギリでした。それに、ツナ殿はこれからその幹部達と・・」
自分は1人だったがツナや守護者に選ばれた山本と獄寺は複数を相手にすることになる。どちらが大変かといえば圧倒的にツナ達だろう。
まだまだ中学生でツナなんて男の子。1年半前までは平凡な少年だったのに今や闇で暗躍するボンゴレ最強の暗殺部隊と戦わなくてはならない。
「・・骨は拾って?」
沢田綱吉、14歳の誕生日に戦う前から戦意喪失しました。
叩きつけられ出血をする鼻を押さえ日本に行くことを決定したボスの後ろ姿にスクアーロは戦った少年のことを思い出した。
「う゛お゛ぉい!日本の10代目候補に会ったぜぇ」
「兄貴・・・」
歩く足を止め、振り返ってきた。部下としてこれから戦う仲間がいるこの部屋で、日本で戦った10代目候補のことを報告するのは義務だ。言い訳のように自分に言い聞かせる。
「そこら辺にいるただのガキだったぜぇ。いっちょ前に死ぬ気の炎を出してやがった」
だが死ぬ気ではない時はただの少年だった。
あたふたと真っ赤になって慌てるあの年頃はそろそろ思春期を迎える頃だろう。
「俺らの敵じゃねえぜぇ?」
「修行したっぽいから、強くなったかもね。でも、ボスの相手じゃない。私でも倒せそうだからなぁ。」
「・・・当たり前だ」
自信に満ちた声。口の端をあげて嘲笑う男の威圧感など少年は持っていなかった。次期ボンゴレのボスになるのは間違いなくこの男だ。8年の月日を越えてようやっと誓いが守れるのだと喜び震える身体。
「誰だろうが俺の邪魔をする奴はぶっ潰す」
「・・・永遠でもついていきますよ、ボス」
にっこりと笑って、ファルファは腕に抱きついた。
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