君が流したユメナミダ。


手放したくないものを手に入れた


夜の学校の廊下でカタカタ震えています!!長い時間雨に降られた格好のままで外に居たせいで見事に風邪をひいた。喉が痛い、
くしゃみが止まらない。
ファルファのコートのおかげで、発熱は避けられた。
せめてもの救いは咳が出ないことだ。風邪菌は撒き散らしていない。くしゃみはするけど。意味がない。

「大丈夫ですか、沢田殿?」
「う、うん!大丈夫!」

空元気で言ってもバジルの表情はまったく晴れない。
そりゃこんだけ目を赤くして
腫らしていればね!
うさぎのような目なのでカモフラージュに伊達めがねをしている。
あまりカモフラージュになっていない事に気づいたのは校門で山本に指摘されてから。リボーンに騙された。朝起きてビアンキに会った時絶叫され、ポイズン料理を持ってどこかに行こうとしてこれはまずいと思ってしたのに!家庭教師は愉快犯だ。あの時汗をかかなければ熱をだしていただろう。無理矢理修行をして汗をかいたのも幸をさしたのか?いや、それはない。カタカタ震えているツナに抱きしめられているリボーンは臨時の湯たんぽ。意外に暖かいんだよコイツ!長袖とパーカーでしっかりと防寒はしているが下は長ズボン。ビアンキに無理矢理着せられた。これだけは譲らないわ、隼人の為に!何故そこまで熱くなる。そして何故獄寺の為?色々とどうでもよくなっていた。非常に寒いです。やっぱり抵抗すればよかった!
「無理はすんなよ、ツナ」
「心配しすぎだ。シャマルに診てもらったんだ、明日には全快だ」
獄寺がいない時間を狙いシャマルに診てもらった。その時は咳が出ていたのだがバジルと修行を始める頃には治まっていた。流石にマフィアの間で有名な医者で殺し屋。ただのセクハラ指名手配犯ではない。口をタコにしてその後迫られたが、虫の居所が悪かったリボーンとツナの手により沈められた。
「それにしても獄寺の奴遅いな・・」
「タコヘッドめ、何をしておるんだ!」
左の手で握りこぶしを作ってガオゥ!窓からヴァリアー達が入ってきた。奴等には昇降口から入って出て行くという思考はないようだ。学生時代はなかったのか。
「敵さんが来たぜ」
音もなく入ってきたヴァリアー達に背を向けていたツナの肩が過剰に跳ね上がった。振り向こうとはせず、腕の中のリボーンを強く抱きしめる。流石に、痛い。
「ししし、俺の相手いなくねー?」
「賢明の判断だね」
「どっちにしても殺されんのに、馬鹿?」
「獄寺君は逃げたりなんてしない!」
振り返った。
ベルフェゴールとスクアーロの間で、ファルファが笑みを浮かべて見ていた。
目が合い、体が硬直する。
「でもあと5分もないんだぜ?逃げたんだよ」
「まだ新技が完成してねーんだろ。シャマルは勝機のない戦いに弟子を送りだしたりなんてしねー」
「俺、不戦勝?やっりー」
「時計の針が11時をさした時点で獄寺隼人を失格とします」
「いつからそこにいたんですかッ!?」
「あら気づいてなかったのかしら?」
会話に割って入ってきたチェルベッロに向かい叫び咽る。く、苦しい!
叫ぶ前にはツナの腕から脱出し、山本の肩に乗っていたリボーンは無事だった。あのままだったら抱き潰されて耳に被害がくるところだった。バジルに背を擦ってもらいながら時間を確認すればもう1分を切っている。

「これ、使いなさい」

昨日のように、風邪薬を差し出すファルファ。

貰った薬を飲んで、少しは落ち着いた。

「獄寺君・・」
「情けない守護者よねー」
時計からファルファに視線を移すと、また笑われた。自分を見たことに満足するように。
「沢田殿?」
「っなんでもないよ」
離れているから見えてはいないはず。公園でキスをされたあの後、ファルファを火事場の馬鹿力で突き飛ばし急ぎ家に逃げ帰った。追いかけてこなかったのはわざとなのか楽しんでいたからなのか。
「いかん」
了平の声にもう1度時計を見る。もう針は12をさそうとしている。間に合わないっ。
「お待たせしてすみません10代目。獄寺隼人、いけます!」
爆発音と、声。
「っ獄寺君!」
「遅いぞタコヘッド!」
「うるせえ芝生頭!」
時計を爆破しての登場。あと1秒というところで登場をした獄寺にホッとした。
「どうやら新技は間に合ったみてーだな」
「はい」
雷戦が始まる前、ランボを心配しつつ自分の技が完成していないことに焦っていた時とは違い、今はキリッとしている。とても頼もしい顔つきだ。
いつもいつも、厄介だが忠犬よろしく常に傍にいた獄寺とはまた違った表情に、ときめいた。
駄目だ。身が持たない。
リボーンが来てからというもの、どういうわけか周りを美男子や渋い大人の男性がよく現れるようになった。
ツナの頬に熱が集うのもこれが何百回目だろう。もう出てこないで!
「遅れてしまってすみま・・っその目はどうしたんですか10代目!?」
真っ赤な目と真っ赤な頬。敬愛し、大事な少年の姿に両肩を掴みついつい声が大きくなってしまった。頼もしかった顔つきは一気に蒼白へと変わる。それにツナが焦る。言わないで!
「な、なんでもないよ!」
「気にしますよ!!まさかあいつ等に・・!!」
「違う!それは違う!ほらアレだよものもらい!」
「どうみても泣き腫らした目だろ」
「うっさい!黙る!口、閉店!」
「ツナ殿、本当に奴らに何かされたわけじゃ・・」
「されてないされてない!いくら敵だからって何でもヴァリアーの人達と結び付けっふきゅん!」
「変なくしゃみだな」
「お風邪を!?」
「おいおい、本当に大丈夫か?」
「だぃじょーぶぅ・・きゅん!」
最早くしゃみなのかすら分からない。立て続けにくしゃみを繰り返すツナを囲み心配する男達の姿は酷く滑稽だ。ついには帰ったほうが言いと騒ぎ出した獄寺。ツナが強制的に黙らす。無論、拳で。だんだんと自分に似てきたツナに満足。それでこそ俺の生徒だ。リボーンはツナをどうしたいのだろう。









図書室の中でベルフェゴールに向かって行った獄寺の爆弾は直撃をした。
「ぁっ・・」
ギュッと、腕の中の赤ん坊を抱きしめる。常にゴーラ・モスカの手の上に乗っていた赤ん坊、マーモンは何も言わずに画面を見つめていた。ヴァリアー側で強制観戦を強いられたツナの体が寒さで震えているのを見かね、リボーンが最初していたように湯たんぽの代わりをしていたのだ。倒れたベルフェゴールと血の流しすぎでふらつく獄寺。チェルベッロが設置したハリケンダービーの時限爆弾が作動するまでもう時間がない。嵐のリングを1つにしなければ勝者と認められない。ベルフェゴールの首に下げられているハーフボンゴレリングを触る獄寺に、やっと血を流す戦いが終わることに息を吐き出す。
「あ゛・・はあ゛・・っ!」
「!!」
獄寺のハーフボンゴレリングを掴み圧し掛かったベルフェゴールに皆が驚く。爆弾を喰らって気絶をしていた筈なのに。
「勝つの・・オレ!」
「っの野郎、放せ!」
殴りつけられ体を仰け反らせるが手は放さない。
「ベルの奴、まだやれるのか?」
「いいや。おそらく勝利への本能・・負けを認めたくない王子の本能さ」
「知れば知るほど異常な奴だ」

「ベル、あとで診察したほうがいいかしらね」
「っ!獄寺君!その人を連れてそこから逃げて!!」
チェルベッロが頷き合っていたのだ。もう、爆発する時間だ。
「隼人君!」
「っここで、手ぶらで戻れるかよ!」
そこで爆発音が響き渡った。時限爆弾が作動し始めたのだ。パラパラと落ちてくる破片よりも、爆発の威力に背筋が震える。あんなものを喰らっては死んでしまう。
「時間になりましたのでハリケンダービーの爆破が開始されました。図書室の爆破はおよそ1分後です」
「そんな・・」
「尚、観覧席には影響は御座いませんのでご安心を」
殴りたい。女性とかそんなことは関係なく、平然としているチェルベッロを殴りたい。
「急げタコヘッド!時間がないぞ!」
「うるせぇ芝生頭!んな事は分かってんだよ!」
「出血とともに体力が落ちてきてるみてーだな」
「残り45秒です」
ベルフェゴールを引き離そうと躍起になっている獄寺の動きは段々と鈍くなっている。
「チキンレースか。面白くなってきたなぁ」
「早く・・早くそこから逃げて!」
「隼人、リングを諦めて引き上げろ」
声を上げるツナに続きシャマルも引き上げることを言い出す。
「ふざけんな!ここで俺が勝たなきゃ1勝3敗なんだぞ!?」
「相手はいかれてんだ!もはや勝負になっちゃいねぇ!戻れ!!」
「ここで引いちまったら10代目の右腕の名がすたるんだよ!俺の命は10代目の為のもの!ここで使わねーでいつ使えってんだ!」
「隼人!修行に入る前に教えたことを忘れたのか!!」
「覚えてるからこそここで命張るんだよ!」
自分の命に対して何も見えていなかった。自分自身すら守れない奴が他人なんて守れない。だが、ここで使えば流れが一気に変わる。勝てばまだ逆転する機会があるのだ。
「死んでも絶対ぇに引き下がんねえぞ!」
「ふざけるな!」
静寂な場に響く、叫んだ声が獄寺の声に届く。目の前にいないはずなのに顔を上げてしまう。
「どうして死ぬなんて言うんだよ・・・。誰も死んでほしくないって、欠けてほしくないって、円陣組んだのに」
「10代目・・」
「また言うの?また平気で自分の命を粗末にするようなことをするんだ?俺の為?そんなの頼んでなんかいない!」
「ッ」
「リングなんかの為に死なないで!俺の為といって命を捨てようとしないで!俺の右腕って言うなら傍にいてよ!」
「傍に・・」
「俺の為というなら生きて!俺のところに戻ってきて!」
ピーッ
無情にも図書室のハリケンダービーが爆発をした。激しい爆発に図書室を映し出していたテレビは砂嵐を巻き起こしている。何も、見えない。
「う、そ・・」
「・・・ジ、エンドってとこ・・・かしら」
その場に座り込む。目の前で獄寺とベルフェゴールが、死んだ。XANXUSやファルファに絶対に誰も殺させないと豪語したのに助けることも出来ずに、失った。目からあふれ出す涙を拭く気力もない。座り込んだツナの腕の中から脱出したマーモンは、
何も言わずにファルファを見上げた。まるでお前が慰めてやれよと言ってるみたいだ。
「・・お゛」
「ツナ、あそこ見ろ」
タイミングの悪い男め。見事にリボーンと被さったファルファに反応せず、言われた方向を見るツナ。
「赤外線センサー止まってるぜ」
やれやれと、壁に肩を寄りかからせ煙の向こうを見たシャマルにも見える弟子の姿。よろめきながら獄寺が生還してきた。
「獄寺君!」
「獄寺!」
「タコヘッド!」
ヴァリアー側から急ぎ駆け寄る。力尽いてその場に倒れた獄寺のすぐ傍に座り込み、体を起き上がらせる。あちこちワイヤーやナイフで切られた痕がとても痛々しい。
「・・すんません、10代目。俺・・」
「・・お帰り、獄寺君」
泣きながら笑顔を浮かべてお帰りと。獄寺が生きて自分のところに戻ってきてくれたことを喜ぶツナから顔を逸らす。リングの為に死のうとしていた数分前の自分が情けない。泣かせてしまい、心配させてしまった。なのに笑顔でお帰りと。山本と了平に壁に背をつけて寄りかからせてもらっても獄寺はツナと顔を合わそうとしなかった。
「よくやったぞタコヘッド!」
「ば、バカかてめえ!俺負けたんだぞ!」
「負けても獄寺君が生きてるならなんだっていいよ」
ギュッと抱きしめる。感極まったとかではなく、獄寺が無事でよかった。気持ちを込めて抱きしめる。
「じゅじゅじゅ、10代目!?」
「良かったよー・・本当にぃ」
「泣かすなよ獄寺」
「な、な、泣かないでください10代目!」
抱きしめかえしていいのかどうか!?戸惑う獄寺の手を笑顔で掴み押さえつける山本。笑顔で邪魔する。
抱きしめ返すとかさせねえぜ?笑顔で嫉妬。
混乱している獄寺は分かっていない。了平は意味も分からず手を掴む。俺も真似するぞ!
何やってんだかこいつ等。苦笑するしかない。
「う゛お゛お゛ぉい!笑える結末だったなぁ!」
「うるせぇよ・・・・・」
ファルファがキレ掛かっている。
マーモンにはそう思えた。
ファルファがキレ掛かっているのは、
ベルが大怪我&発狂したことと、
スクアーロがうるさいということ。
それに
目の前でツナが獄寺を抱きしめているのを
見てプッツンときたというのもある。
顔を上げてヴァリアーを見るツナは
いまだに獄寺を抱きしめている。

「う゛おぉおい!!!!」


ブツッ



ファルファの何かが切れた。



「うるっせーんだよクソアニキィィィィ!!!」



見事な蹴りが、スクアーロに入った。

(あ、今チラッとスカートめくれた。)


スクアーロが倒れこんだ。
「だが、あんた等の命はもはや風前の灯!」
「霧と雲の守護者もまだ現れてないしね」
「あ、ベルフェゴール・・」
「大丈夫、生きてるよ」
ゴーラ・モスカの脇に抱えられているベルフェゴールは気を失っているだけで死んではいない。ホッとするツナの姿は、やはりこの場では不釣合いだ。勝負の最中、獄寺だけでなくベルフェゴールの心配をしていたのを抱きしめられながら見ていたマーモンは、ツナという少年に少しだけ興味を持った。
XANXUSが気にかけ、ファルファが隠してはいるが異常に執着を示している少年。
自然に人を惹きつける力を持つその力は、確かに10代目候補にあげられるだけはある。

「嵐戦勝者はベルフェゴールとします。明晩の対戦カードは雨の守護者同士」

「ベル、おつかれさま」



そっと、包帯が巻かれた額にキスをした。


「お、ついに俺の番か」
「・・っ」
雨の守護者。山本と、スクアーロの試合が決まった。
無意識にスクアーロを見つめるファルファの目は不安に揺れている。
「やっとかっさばけるぜぇ。前回の力の差を思い出して逃げんじゃねーぞ刀小僧」
「はは、楽しみで眠れねーよ」
「・・ガキが」
スクアーロをみる山本の目は本当に楽しみにしている目だ。野球好きの山本が、変わってしまう。変な不安が急に襲ってきた。抱きしめていた獄寺から離れ、山本の服を掴む。
「ツナ?」
「・・・」
無言で見上げてくるツナの目が不安に揺れている。安心させるように頭を撫でる。
「大丈夫だって、な?」
いつも見ている笑顔で言われると、不安な気持ちは薄れていく。コクリと頷いたツナの頭を撫で撫でと。
「失礼します!レヴィ隊長!!正体不明の侵入者がまっすぐにこちらに向かってきます!」
「何!?」
「・・・どうやら、集まってきたみてーだな」
ニヤリと笑うリボーンにハッとする。集まるということは、残りの霧と雲の守護者のことだ。ここにきてやっと正体が分かるという期待と、半分恐怖が。守護者に恐怖って!
「ぐあぁあ!」
ヴァリアーとツナ達の間にある廊下からヴァリアー側の者がとんできた。
そして靴音。早足で廊下から姿を現した侵入者の姿に冷や汗。
「ひ、ヒバリさん!?」
「まぁ、雲雀さん」
やばい、場外乱闘開始だ!並盛の最強の秩序にして学校を愛する雲雀恭弥。連帯責任でここにいる人間を咬み殺す。咬み殺すまで延々と追いかけられるという恐怖が襲う。どうしよう!
「校内への不法侵入及び校舎の破損。連帯責任で君達全員咬み殺すよ」
「俺たちもか!?」
「やっぱり咬み殺しタイムきたー!」
「あいつ学校好きだよなー」
「守護者じゃないじゃんリボーン!」
食って掛かるがニヤリと笑うだけ。一体その笑みに何の意味が含まれているんだ。たまには言葉に表せ。ふるふる怒りに震えるツナの肩を押さえて落ち着かせる。まあまあ落ち着こうぜ?そんなことで落ち着けはしない。
「沢田嬢側のリング保持者の方でしたらこのような行為は・・」
「どけチェルベッロ!そいつはただの不法侵入者だ!よくも俺の部下をっ!」
電気傘に電流を漲らせ突進してくるレヴィを簡単に足払いで倒す。足がお留守ですよ。顔面から大分しなかっただけマシだろう。
「まずは君からかい?」
「つ、強ぇ・・」
「さすがヒバリだな」
「何者なんですかあの者は?」
「うちの雲の守護者だ」
「確かに半分恐怖だー!」
「レヴィ!おやめなさい!」
半分期待して半分恐怖して待て。今ならわかる、確かに雲雀は強い。そしていつ自分も噛み殺.されるかもしれないという恐怖。なんでこんな人が守護者に!?
「雲ということはゴーラ・モスカの相手だね」
「マーモン、奴の動きどうみる?」
「レヴィはヴァリアーでも鈍重で故障はしているけど、それを差し引いても中々の身のこなしだよ」
「やっぱりお前は術士だな。剣士の俺には止まって見えたぞぉ?何枚に卸して欲しい小僧!」
挑発するスクアーロを振り返る雲雀の目がキラッと光った。獲物をスクアーロに絞った、今。
「次は君?」
「ひ、ヒバリさん待ってください!」
このままでは本当に咬み殺されてしまう。そうなったらリングが全て相手の手に渡ってしまうという最悪の展開へと繋がってしまう。それだけは阻止しなければならない。自分がトンファーの餌食になってでも!急ぎスクアーロに向き合う雲雀の前に回り込み、謝った。必死に。
「・・沢田、綱吉?」
「夜の校舎に居たことや破壊してしまったことは謝ります!でも、今は待ってください!」
「・・・・」
自分が進んできた廊下に背を向け、戦おうとする雲雀。スチャっとトンファーを構え、スクアーロに威嚇をする雲雀の背中に急いで張り付いた。
「待って!ストップ!話し合いましょう平和的に!ヒバリさんを命懸けで止めようとしているこの状況の事ですよね!?十分理解していますお願いですトンファーしまってください!!」
「僕になんの利益があるの?」
「近いうちに奴と合間見えるぞ」
ちゃおっす。足元にきたリボーンを思わず蹴りそうになってしまった。危ない、報復が来るところだった。
雲雀の背に張り付いたままツナもリボーンを見下ろしながら、一旦トンファーを下げた雲雀の腕を押さえる。
「・・本当かい?」
「あぁ。遠くない未来六道骸と再会するぞ」
「骸無事なの!?」
「骸・・・さま!?」
思わぬところで出てきた名に反応をする。雲雀が不気味に微笑んでいることは見えていない。もし見えていたら悲鳴を上げていただろう。振り向いちゃ駄目です10代目!声にせず訴える。
「・・校舎の破損は完全に直るの?」
「我々チェルベッロが責任を持って直します」
「そう、なら今日は帰ってあげるよ。沢田綱吉」
後ろを向いて、去っていった。



「う゛お゛ぉい!明日を楽しみにしてるぜぇ!行くぞぉ!」

「うるせぇ、クソアニキ、先に帰ってろ」

「う゛ぉ、わかったぞぉ」



後ろ向きに、2階から降りていった。



「おい、山本。話がある。」
「何だ?」
「明日は、ガツンと行け、でねーと死ぬぞぉ、兄貴は走り出したら止まれねーからな」
「!」
「私は兄貴が勝とうが、負けようが関係ない。とにかく死ぬな。それだけ守れ。雨の守護者だろぉ?」
「あぁ」
「テメーにもいい修行になるしな。兄貴にもお灸をすえてやんねーと。がんばれよ」



そういうと、ファルファは、すっとツナに近寄って・・・



「うわっ!?」



抱きしめた。



「ちょーっと借りていきますよー」
「テメェ!10代目をはなしやがれ!」
「明日には送り返してやる、気にすんな」
「うわぁぁ!!!」



窓から、ツナの悲鳴が聞こえた・・・





灯台下暗しですか、そうですか。
学校の屋上に連れてこられ、足が地に着いたことに安心したのも束の間で壁に押さえつけられた。

「私の目の前で他の男を抱きしめるたぁ、いい度胸してるじゃねぇかぁ?別に、妬いてる訳じゃないわよ」
「イタっ・・」
握られている手首が痛い。痛みで顔を顰めるツナにファルファは顔を近づけ、至近距離から目を覗き込む。
「それとも、私を嫉妬させたかったの?」
「っ言ってる意味が、分からないんだけど・・」
背が1度壁から離れた。手首を掴んでいたファルファの手は肩へと伸ばされ、もう1度壁に押さえつけられる。
いや、これは叩きつけられたというべきか、衝撃が痛みとなって体に走る。痛い、本当に。目尻に涙が浮かんでくる。
「ふざけないでよ・・・私の彼氏になったんでしょ!?」
「・・っはあ!?」

大声で。私の彼氏って、彼氏って!!?
いつファルファの彼氏になったのか全く分からない。記憶にない。そもそも返事をもらった覚えもない。

「俺、返事もらってない!」
「あ゛ぁ?キスしたでしょ?」
「言葉で返せ言葉でー!!あの状況でキスとか、凄い、からかわれたかもって・・っ」
痛みで湧き上がっていた涙は今度は悲しみで。溢れてくる涙を拭う手を掴まれた。今度は優しく。
「惚れてなきゃ14のガキになんざ手は出さないわよ」
「うっ・・・うえぇええ!?」
真っ赤に染まります。完熟トマト一丁上がり!脳内で八百屋のおじさんが何か言ってます。
「・・・言葉で返して欲しいの?」
口角を吊り上げ顔を近づける。そして少しだけ、額にキスをした。
「んっ」
「大好き。真っ赤に染まる顔も、泣きじゃくる顔も」
肩を押さえつけるのをやめて抱きしめる。目を必死に瞑り、ファルファの囁きをやり過ごそうとする表情は色っぽく、羞恥で赤くなった耳に髪をかける。
「大好き、初めて会ったあの日から」
「あっ、アルティ、ちゃんっ・・・・」
見つめると、真剣な顔つきでツナを見つめていた。
「大好きだよ、ツナ」
名前を初めて、呼ばれた。
ファルファの口から、ファルファの声でツナと呼ばれた。
心臓が激しく動き、爆発しそうだ。
「あ、ファルファ、ちゃんっ・・・」
「呼び捨てでいいよ、大好き」


やわらかいキスを、鼻先にちょんっとした。



「送ってってあげる」
「・・うん」
嬉しそうな声で微笑み、ツナから頬にキスをしてきた。
あ、どうしよう。本格的に理性が危うい状態でツナを送り届けることになったファルファにエールを。
酒の中で揺れる氷を見つめながら、無言でXANXUSはファルファの帰りを待っていた。
先に帰って来たマーモンとレヴィの報告。
ファルファがツナを拉致って並中に残ったとの報告に一発叩き込むために。
「ボス!ただいまぁ!」
カツカツと普通な足音を立て戻ってきたファルファはそのままXANXUSの横を通り抜ける。その頭に向かい投げるは酒。
「いったぁぁー・・・・何するのぉ・・・私は兄貴じゃないのにー・・・」
後頭部に当たったグラスと酒に濡れた髪と服。アルコールの臭いのせいで消えてしまったツナの匂いにプチッときた。
「うぁぁ!どうしてくれるのぉぉ!」
「うるせぇ、男の匂いなんか残してるんじゃねぇ」
覚えのある匂いだった。数日前に嗅いだ、少年の。それがファルファからしたのがとても気に入らない。
だからといって酒を投げつけられたファルファの方がいろいろと気に食わない。口で言ってよ!数時間前のツナの気持ちがよく分かる。
「まあいいもん、ボスに伝える方が先だ。」
「何だ?」
「雪のリングを奪い、姫川雪乃を
殺すのはこの私。そして、沢田綱吉を私の彼氏にするの」
殺気がファルファの体に突き刺さった。
紅い目がまっすぐに自分を睨んでくる視線を受け止め、ファルファもXANXUSに向け殺気を放つ。
「・・何言ってるのか、分かってんのか?」
「ちゃんと分かってるわ。あんたの最大の敵を恋人にするってことくらい」
「愛人として傍におくつもりか?」
敵の大将を自分の彼氏に。
マフィアならば愛人が
何人もいるのは当たり前だが、XANXUSの声には愛人として傍に置くといえば殺すと語っている。反対に、ファルファは恋人として、ツナを傍に置きたいと言っている。
やはり、ファルファには何かがある。
「任務の前、お前は確かにツナを殺そうとしてたよな?今はまるでボンゴレから守るみたいな事ばかりを言いやがる」
「あれは、任務だったからよ、今は、愛する人として見てるの」
「お前に何があった」
「ボスには関係ない」
「・・・!」
「私はツナを本気で愛してる。ボスがアイツを殺す気がないなら雪戦の後に私はツナに告白する」
「殺せといったら?」
「私が死にます」


ファルファの真剣な顔に、何も言わなくなったXANXAUS。


「私は、失いたくないものを手に入れてしまいました。」

「すべて、貴方に捧げた筈なのに」

「なのに、私はっ・・・」

ツナはファルファを選んだし、ファルファもツナを望んだ。
手放しはしない。





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