君が流したユメナミダ。


荒ぶる運命に翻弄を


「あぁ・・・うぁ・・・・」

映し出された真っ赤な血に、ファルファがへたり込んだ。

「兄貴!兄貴!兄貴ぃぃ!!!」


雨戦の前に、あんなに余裕をかましていた兄貴が、こんなにも、あっけなく負けた。
涙が、涙が止まらない。



「・・・兄貴っ・・・」


ベルに体を押さえられたままスクリーンを見上げる。水面に浮かんでくる色は赤。血の色。
「・・兄貴っ・・・どう・・・どうして・・・?」
「ぶはーっはは!最期が鮫のエサとは・・あのどカス!過去が1つ清算できたぜ!」
笑うXANXUSの声にすら反応を示さず、ファルファはスクリーンを見続けていた。
涙を流して。泣いているだけのファルファの姿に不安に駆られる。
「ファルファ・・・」
ツナが声をかけても反応がない。スクリーンだけを見ている。
「おい、ファルファ」
リボーンがディーノの肩から下りた。
危ないと、リボーンの中の何かが告げた。ヴァリアーとはいえ、ファルファは普通の少女だということを忘れていた。大好きな兄弟が、目の前で鮫に食われてしまったのが自分が大好きな兄弟なら?助けに行こうとしていたのをベルに阻まれ失ってしまったのを自分のせいだと責め出したら?現実を受け止められなければ、自分を守るために人間がすることは心を閉ざすこと。外界との接触を一切遮断する。それだけは避けなければならない。

「リボーン・・・何・・・?」
危惧していたことはおきていなかった。ゆったりとした動作だが振り返ってきたファルファは心を閉ざしたりはしていなかった。ただ、目の輝きがなかった。
「・・・大丈夫?」
「私は大丈夫だよ?ごめんね、心配させて」
微笑んでいる。泣き止んで微笑んでいるが、心は泣いている。とても、痛々しいのだから。
「雨のリング争奪戦の勝者は山本武の勝利です。明晩の対戦カードは霧の守護者同士となります」
スクリーンを通してチェルベッロが明日の対戦を言い渡す。それを聞きながら、今だアクアリオンにいる山本を待つ。
「3勝2敗・・面白くなってきたじゃねーか」
持ち込んでいた椅子に座り観戦をしていたXANXUSが立ち上がり、その背にレヴィが付き従い。
さっさと帰ってしまえと睨みつける獄寺を鼻で笑い、座り込むファルファを見る。
「・・・」
XANXUSの視線に気がつき目を合わせたファルファの目はまだ、輝きを失っている。
「カスが死んだのに泣かねーのか?」
「泣いても、兄貴は戻ってこないもん」
細めた目は泣いてるようにも取れる。
「剣士としての誇りを大切にしながら、貴方の為に命を賭けられる。私の兄貴として好きになったスペルビ・スクアーロらしい最期だよ?私の大事な兄貴・・・だもん」
「・・・」
「だから、侮辱しないで・・・ボス」
いつから剣を持って戦っていたか。XANXUSの何処に惚れて付いてきたか。晴のリング争奪戦前の一時に、ポツポツと話して聞かせれくれた。暗殺者という闇の世界に生きていながらに信念を持っていた姿がとても眩しかった。
「貴方の為に剣をふるって戦った剣士を、忘れないで、私の兄貴を」
「・・・それは、できねーな」
XANXUSにとってファルファがどういう存在なのかを聞いて、それでも自分の妹だと言い張った男。
なのに自分の誇りの為に平然と死を選んだ。そんな男を覚えていてやる道理はない。
「お前も、忘れちまえ」


パアンッ



一つの音が響いた。



「ボスの馬鹿!・・・あなたは見ているだけでよかった・・・私の肉親、血を分けた兄弟が負けて死んでも泣かないのは当然よねっ!兄貴が・・・・兄貴が負けたのに!」


ファルファは駆け足で、その場から去った。


「ふぇっ・・・あに、兄貴・・・・ぐすっ・・・うえっ・・・」

涙があふれて、止まらなかった。

ただただ、兄貴が死なないよう願った。



その日はもう、寝ることにした。

夢を見て。



真っ黒な世界で銀色の輝きが見えた。
手を必死に伸ばして掴もうとしたけど、掴めない。
叫んでみても、声が届かない。
遠くに行かないで―



相変わらず気が晴れない。涙も止まらない。
ぎゅっと、チェルベッロに抱きつく。
そういえばこの間から、
ぜんぜん人肌に触れていない。
抱きつくと、心が少し落ち着いた。
そして
チェルベッロも対して気にもせず
しがみ付くファルファの頭を撫でていた。
チェルベッロの中で密かな
マスコットキャラなのをファルファは知らない。
その間、ずっとボンゴレのほうを見つめていた。

「君の霧の守護者はどうしたんだい?まだ姿を現してないけど?」
「・・・」
リボーンを見る。目を逸らされる。ちょっと!いまだに自分の霧の守護者が分からないうえに質問されて教師に見放された。職務怠慢にも程がある。
「・・お楽しみで」
「君って秘密主義者かい?」
「マフィアの世界でも秘密主義者っているんだ」
皆プライバシーなんて気にしない奴等ばかりだと思ってた。笑顔の裏に隠された怒りに顔を逸らしておく。私は関係ない。
「!?」
背筋を寒気が走った。この感じ、身に覚えがある。扉を振り返ってきたツナに驚き、皆も振り返る。そこに、黒曜中学の制服を身に纏った2人の男子生徒が姿を現す。
「嘘・・」
1ヶ月前に復讐者の牢獄に再び連れてかれた2人が立っている。
「千種!犬!」
「あ、ファルファだびょん」
「・・・めんどい」
「こんな時に!」
「待て獄寺。こいつらは霧の守護者を連れて来たんだ」
「霧の守護者・・・まさか!?」
「霧の守護者って、骸!?」
「――――クフフフフ」
2人、城島犬と柿本千種の後ろから笑い声が響く。だが、高くないか?
個性的な笑い方ではあるが、その高さは女性の者。
あれ?首を傾げる。
「否、我が名はクローム髑髏」
「髑髏ちゃん!会いたかったよー!」
三叉槍は間違いなく骸の私物。
それを持って現れた少女はツナ達と同い年ぐらいだが、髪型は骸と同じだった。右目にされている眼帯も気になるが、最初に感じた寒気をクローム髑髏から感じない。
それに、ファルファは、ぎゅっと、
クロームに抱きついている。
・・・仲間だったのだろうか?
「・・ごめんね」
「・・・会いたかった・・・」
ツナは、現れたクローム髑髏の元に駆け寄る。片目にしっかりとツナを映して待つ。
「・・君が、霧の守護者・・」
「・・・」
無言で頷いたクローム髑髏に胸に襲う痛み。今度は女の子まで巻き込んでしまった。
「騙されないでください10代目!こいつは六道骸が憑依してるんです!」
「・・・それはないよ。この子の意志を感じるし」
「あの怪しい目を眼帯で隠してます!それにこの武器・・あいつの武器です!」
「うん。でも、この子は骸じゃないよ」
はっきりと言い切る。クローム髑髏の意志はしっかりと感じるし、もし骸ならばすでにツナに襲い掛かってきているだろう。この子は自分の守護者として、今ここにいる。
「私の守護者として、戦ってくれますか?」
「・・ボスが、望むなら」
「髑髏ちゃん。ごめんね、私はヴァリアー、貴方の敵になった。でも、仲良しなのは、変わらないよね」
「うん」

綱吉にとって新しい呼び名が追加されてしまった。とりあえずは触れないでおく。
「10代目!」
「・・ま、いいじゃねーか獄寺。ツナが決めたんだからよ」
「ぐっ・・」
「無理しなくてもいいからね?」
「・・ボス、優しいんだね」
もっと怖い人だと思った。ちょっと落ち込む。そんな、怖いなんてたまにだよ!?たまに自分が怖くなるのを自覚していたりする。でも治さない。それぐらいしなきゃやってけません。空笑いを口から出していると、ドコン、ガコンと痛い音。誰かが壁にぶつかっている。
「コロネロ師匠!」
「え、コロネロ?頭激しく壁にぶつけてるけど!?」
「とっくに京子と寝ていると思ってたぞ!」
「だからお寝むだぞ、コラ!」
「大人しく寝てなよ!?」
何故今日になって現れた!?晴戦以外は姿を出さなかったコロネロの視線はツナの背後、チェルベッロと一緒に立っているマーモンに注がれる。

「確かめたいことがあったからな」
「やっぱり気になるのか」
「・・・?そういえば、ディーノさんは?」

リボーンとコロネロにしか通じない話と割り切って、姿を見せないディーノのことを聞いてみる。

「・・アイツなら急な用事が入って、旧友に会いに行ってる」
「急用か・・・ディーノさん、キャバッローネのボスだもんね」

仕方ないか。簡単に納得したツナからリボーンが一瞬目を逸らしたことには気づかない。
余計な情報はツナを惑わすだけだから。

「では早速円陣を組むぞ!」
「いらない」

了平の何時ものお決まりの迫力と共に宣言されたそれをバッサリと切る。

「行ってきます」
「ちょ、ちょっと待って!」

三叉槍を持って中央に歩いていこうとするクローム髑髏をガシッと掴んで行くのを止める。
振り返ってきたクローム髑髏の目はあまり感情が込められておらず、見返す目はちょっと冷たく感じた。

「あのね、円陣は組んでほしいの?」
「・・ボスの、命令?」
「命令じゃないの。あのね、円陣を組むと凄い安心するの。団結力が深まるっていうか、仲間なんだって」
「・・・仲間?私が?」
「うん。仲間だよ」

笑顔で自分に手を差し伸べる姿に、心が温かくなっていった。
犬や千種は骸を通して今は一緒にいるが、心を通わせたわけではない。所詮、信用されていないのだ。
しかしどうだろう。ツナはクローム髑髏を信用しきっている。
絶対に自分を裏切らないという確証があるわけでもないのに、仲間だと言い切り優しくクローム髑髏を包み込もうとしている。

あの方が言っていた通りだ。

敵でも味方でも手を差し伸べ温かい光で照らしてくれる。
太陽のような温かさと無限に広がる優しさ。全てに平等に注がれる、愛情。

「・・・・凪」
「え?」

差し出されている手に自分の手を重ねる。突然名前を呟かれ聞き返してきたツナに、はにかみながらもう1度。

「凪が、私の本当の名前。ボスには、凪で呼ばれたい」
「凪・・ちゃん?」
「ボスの為に、絶対に勝つね」

円陣も組むよ。
首を傾げて笑いかけてきたクローム髑髏に驚くが、すぐにツナも笑顔になる。

「ありがとう。でも、無理はしないでね」

貴方が言ったとおり、この人は優しすぎます。

「ボス・・可愛い」

ちっちゃくて。
一気に落ち込んだツナの姿を見た獄寺がクローム髑髏に怒鳴る。小さいってのは禁句なんだよ!
今、お前も言ったぜ?笑いながら山本の言葉が獄寺に突き刺さる。

「・・・皆、足切ってしまえ」

顔を押さえて。怨念すら篭る声に慌てる獄寺達の姿は面白い。
守ってみせます。今は眠っている主人に、静かに誓いを立てながらクローム髑髏は一歩動いた。

ヴァリアーの霧の守護者、マーモンの正体は藍色のおしゃぶりを持つアルコバレーノ、バイパーだった。
おしゃぶりの力を解放し、クロームとの幻術の戦いにおいて力の差は圧倒的。
幻術の知覚のコントロールを奪われたクロームは体育館へと倒れこみ、幻術によって作っていた内臓が消えた。
へこんだ腹に驚くツナ達に、クロームはうわ言を繰り返す。
ひたすら、骸の名を呼んだ。



「・・・・骸様」
「クフフ、お久しぶりですファルファ。」

クロームだったはずなのに何故か骸が姿を現した。やはり憑依していたのだと獄寺は騒ぐが、それは違う。
先ほどまでは確かにクロームの意志で戦っていた。それに憑依しているならもっと骸の技にはキレがあるはずだ。
「輪廻の果てより舞い戻って来ました」
肩越しからツナを見てくる骸の視線に寒気が走る。
これだ。この、憎悪が混じった視線。本物の骸にしかできない目。

「六道骸・・つい最近復讐者の牢獄から脱走をはかって失敗した奴だね」
「なっ!?」
「またしたのか・・」
「今は光も届かない地下の牢に閉じ込められてるって話しだけど・・」
「だが、そいつがうちの霧の守護者だ」

言い切るリボーンに戦ったときのことを思い出した。
幻術と槍術を駆使して叩き込まれた攻撃に、男女の力の差を無しにしても手ごわかった。そんな相手が、自分の守護者。
マフィアを憎む骸が大人しく自分に付くはずがない。
だが、復讐者に連れて行かれたのを酷く心配していたのも事実。どんな状況であれ、心配していた1人が現れたことに少し心が軽くなった。

「・・・無事で、よかった」

ファルファは小さく呟いたつもりだったが
骸は振り返ってきた。
酷く驚いている顔に笑いかける。
そんなツナと骸の間に獄寺と山本が割り込んだ。自分達とツナにした仕打ちを忘れてなどいない。
敵意をむき出す獄寺と、困ったような笑いを浮かべる山本の間から見えるツナは酷く戸惑っていた。そんな姿に、骸の独特の笑いが漏れる。

「クフフフフ・・・・相変わらず、可愛らしいですねファルファは」
「骸さまもね」

赤外線感知式レーザーがあるので骸にファルファが近づくことも、骸がファルファに近づいてくることもできないので安全といえば安全だ。
大丈夫だと、獄寺と山本の間から体を滑り込ませ前に出てきたツナに骸は満面の笑みを向けた。
どうしたの、この人?!ちょっとドキドキです。

「まったく、貴方があのボンゴレ10代目候補だとは。まったく成長していない」
「い、言い返せないっ」
「その甘い心が、僕達を魅了する」

優しげに細められた目。骸の心に僅かに起こった変化にはリボーンとコロネロしか気づかなかった。
睨まれたと勘違いしたツナは悲鳴を上げる。やっぱり怖い!

「さて、強欲のアルコバレーノ」

ぷかぷかと浮いているマーモンを見る目はもう、憎しみすら宿った冷たい輝き。怪しく、六を宿す赤い目が光る。

「僕の世界を見せてさしあげます」














六道輪廻。
伝説のアルコバレーノすら倒してしまった骸の力にヴァリアー側ですら驚いている。
1つに合わせたリングをチェルベッロに確認させ、赤外線感知式レーザーの柵から出てきた犬と千種の奥にいるツナを見る。

「殺したの・・・?」
「敵の心配をする所などまったく変わってませんね。安心してください、殺してはいません。あのアルコバレーノは逃げる力だけは残していたみたいですから」

そこら辺を浮いてるんじゃないんですか?妖怪みたいに。
例えが笑えない。暗闇の中浮かぶマーモンの姿を想像してしまった。ちょ、怖い!夜道に激しく注意。

「・・ゴーラ・モスカ。争奪戦後、マーモンを消せ」

後ろに控えているゴーラ・モスカに命令をするXANXUSを見る。一切の情けを与える気のない目、本気だ。

「まったく貴方はマフィアの闇そのものですね、XANXUS。貴方が企てている恐ろしい計画には、僕すら畏怖を抱きます」

XANXUSの何かを知っている言い様。反応をするXANXUSに肩を竦め、傍に居る犬と千種を横に退かしツナの手を引っ張る。
とくに抵抗を見せずに骸の目の前に来たツナは不思議そうに首を傾げる。

「小さく、幼いもう1人の候補者がそんなに大切ですか?」

今、この手を首に伸ばし力を込めれば簡単に首の骨は折れてしまう。
笑って様子を伺ってくる骸を、鋭い視線で睨みつけた。
XANXUSにとってツナの存在価値を探っている。まったく食えない男。

「骸」

掴まれていない手で骸の服を引っ張り自分に注目させる。

「なんですか?」
「お疲れ様。あと、ありがとう」

戦ってくれて。
マフィアを憎んでいるのに同じファミリー同士の戦いに巻き込んでしまったことも申し訳がない。
それでも戦ってくれた骸に、感謝の気持ちを送るのは忘れない。

「・・まったく、貴方は」

期待を裏切らない。
細まっていく目。とても眠そうで、自分へと傾いてきた骸に腕を伸ばしたのはほぼ無意識だ。

「この子を・・・頼みます」
「うっ、わ!?」

小さく、掠れた声を残した骸の姿はクロームへと変わりツナを押し倒す。お、重い!
眠っているクロームの全体重がツナに圧し掛かる。誰か助けてください。

「っあ、内臓!?」
「安心しろ。骸の強力な幻術で問題はねえ」
「そ、そう・・」
「犬、行こう」
「放置する気!?」

クロームを置き、出てこうとする千種の背にツッコむ。振り返りクロームをみたが、すぐに前を向いて歩き出してしまった。

「そいつは骸さんじゃねえ・・」

クロームを見ずに呟いた犬の声には戸惑い。唯一骸の考えを読み取り、伝えることが出来るのがクローム。
それ以外に必要価値はない。自分達に、言い聞かせているみたいだ。
出て行ってしまった2人を追う事も出来ず、クロームを床に寝かせたまま起き上がりどうしようとリボーンを振り返る。また逸らされた。

「犬・・・千種・・・髑髏ちゃん・・・骸様・・・私はまだ、帰れない」

「ゆっくり待ってるびょん、だから、いつかは帰ってくるびょん」

「・・・めんどい」

そういって、3人は去っていった。
ファルファは、少し寂しそうな笑顔で3人を見つめていた。

「互いに勝負は3勝ずつとなりましたので、争奪戦を続行します」
「明晩の勝負は雲の守護者同士です」
雪戦は、すぐ。


あの日以来から、雪乃は姿を見せていない。

修行かなにかしているのだろうか。



決着がつく雲の守護者同士の戦い。夜の並中に集合したメンバーの数は、当初と比べてかなり減っている。
円陣の誘いを断りさっさとフィールドの中に入ってしまった雲雀に憤慨する了平の首根っこを掴み、3人だけで円陣を組ませる獄寺の顔は険しい。
「ヒバリーッファイッ!オーッ!」
今までの中で一番大きな声で。妙にはりきった声にはさすがの山本も驚いた。お前の試合はもう終わっているんだぞ獄寺よ。
「なんで気合入ってんだよ」
「この野球馬鹿!この勝負に負けてみろ、10代目があいつ等の手に渡るんだぞ!」
「僕が負けるとでも思ってるの?」
チェルベッロの傍にすでに立っていた雲雀が振り返る。とても心外だよ。トンファーを構え獄寺達から前に立つゴーラ・モスカ、XANXUSへと視線を走らす。
「沢田綱吉が賭かってる勝負に負けたりなんてしないよ」
彼は僕のお気に入りなんだから。
怯えながらも近寄ってくる姿が好ましい少年を大切に思っている気持ちは、常に傍にいるリボーンや獄寺達に劣りはしない。
離れた場所からだが、ツナを守りたいと思っている。
「彼女の敵は、僕が咬み殺す」
「雲雀さんは・・・本気ね・・・・」
雲の守護者といい、嵐の守護者に雨の守護者。小さくか弱い男1人の為に戦う彼等の考えはまったく理解ができない。ボンゴレファミリーといえばイタリアマフィアで最強といわしめる勢力。ならば時期10代目はXANXUSこそ相応しいというのがレヴィとアルティの正直な気持ち。なのに誰もが沢田綱吉を時期10代目にしようと躍起になる。キャバッローネのディーノやアルコバレーノのリボーンとコロネロ。あの男にどんな力があるというのだ?たかだか初代直系の子孫の肩書きを持つだけの男が。
「では、雲のリング争奪戦、勝負開始」
チェルベッロが用意した雲戦のフィールド、クラウドグランド。何者にもしばられず独自の立場からファミリーを守護する孤高の浮雲。それが雲の守護者の使命。四方を有刺鉄線で囲み、30m以内の動く物体に反応して攻撃する8門の自動砲台。地面には重量感知式トラップが無数設置されているオマケ付き。
いつだ、いつ奴等はトラップを設置しているんだ。生憎、ツッコミをするものは不在しているので誰も触れようとはしない。ツッコミの存在は大切だ。一般常識の目線を忘れちゃいけない。
チェルベッロの合図により火を噴き向かってきたゴーラ・モスカにたいし、雲雀の一撃が決まった。
決定的な一撃。それは、雲雀の勝ちを意味する一撃だ。
爆発音を轟かせ倒れたゴーラ・モスカと雲雀の洗礼させら動きに誰もが言葉を失う。一瞬、一瞬で勝負がついてしまった。
ゴーラ・モスカから回収したハーフリングを1つに合わせ、暫くそれを眺める。
「これ、いらない」
「は、え?」
珍しく戸惑っているチェルベッロの横を通り過ぎ、次に殺気を飛ばすのは椅子に踏ん反りかえるXANXUSだ。
「そこの座っているサル山のボス猿、君を咬み殺すよ」
「雲雀さん・・・駄目!」
今の勝負で沢田綱吉が次期10代目となることが決まったのにXANXUSを挑発する。
雲雀の態度にレヴィが憤慨するが、冷静なベルフェゴールによって止められる。今、沢田側に刃向かうことは次期10代目に刃向かうことにもなる。座っていた椅子から立ち上がったXANXUSの次の動きを静かに待つベルフェゴール。ここにいないスクアーロやマーモンならXANXUSが何を企んでいるのかを知っていたのかもしれない。
少なくとも、XANXUSはスクアーロのことは幹部の中で一番信頼はしているはずだ。誰よりも付き合いが長いのだから。或いはスクアーロは聞かなくても察しついていたのかもしれない。
高く、その場から跳んだXANXUSは雲雀のトンファーに足をおろす。そこでもう1度跳躍。クラウドグランド内に着地をする。
「俺達の負けだ。ゴーラ・モスカは回収する」
「そういう顔には見えないけど?」
トンファーを構えてXANXUSに向かう。
容赦なく向かってくるトンファーを笑みを浮かべて避けながら、XANXUSは決して反撃はしなかった。
雲戦に活躍のなかった自動砲台が、雲雀とXANXUSに火を噴く。
「おい!やめろヒバリ!」
「うるさいよ。君たちも咬み殺.されたいのかい?」
XANXUSへの攻めは許さす、制止を呼びかける了平を睨みつける。
「おい、チェルベッロ」
「!はい、XANXUS様」
「この光景を覚えておけ。俺は一切攻撃をしてないことを」
まるでこの後何かが起きることを分かっているかのような、そんな言葉。やはり危険だ、この男は。
XANXUSの動きを読みつつ、トンファーを奮う手は緩めない。光る手もトンファーで押し止め、さらに懐に入り込む。
「何を企んでいるんだい?」
「企む?俺はモスカを回収しにきただけだと言った筈だ」
「そう、なら無理矢理吐かせるまでだよ」
トンファーを振り上げる雲雀の目に、笑みの形を作る口元が映る。
「!?」

何かに足を攻撃された。膝から力が抜け、その場に膝をついた雲雀や見ているだけだった獄寺達の元に落ちてくる物体。

「な!?」
「あれは・・っ」

それが破壊力を持つ爆発類だと分かりすぐさま避ける。地面、校舎、ヴァリアー側へと次々に向かい飛んでいくそれの出所。

「・・なんてこった」

正体が分かっているXANXUSは笑みを浮かべたまま、暴走している機械を眺める。

「俺はモスカを回収しようとしたが、相手の雲の守護者に阻まれモスカが暴走してしまった・・・大惨事だな!」

飛んでくるモスカの体に装備されていた爆発類を避けながら笑う。逃げ惑う者達の姿が滑稽で、笑わずにはいられない。

「おい!フィールド内は危険だぞ!!」

攻撃を避けながら、フィールド内に入り込んでしまったクロームを見つけた了平が叫ぶが遅かった。
重力感知式のトラップを踏んでしまい、警告音が鳴る。その場に立ち止まってしまったクロームに、逃げる時間はなかった。
爆発音を立て煙を上がる。そこから、犬と千種とファルファに両側から支えられたクロームが飛び出してきた。
「千種・・犬!」
「世話のかかる女だびょん・・」
「髑髏ちゃん・・・平気?」
地面に頭を伏したまま悪態をつく犬と何も言わないが頷く千種の2人。2人が何を思いクロームを助け出したのかはわからないが、危ない状況なのには変わりない。
自動砲台とゴーラ・モスカに挟み込まれてしまったのだ。
逃げるに逃げられない状況。獄寺が咄嗟にダイナマイトを構えたがクローム達がいる場所まで届きそうにない。

「くっそ!」

自分達の頭を抱え、今一度地面に伏せる。逃げることは不可能だ。
自動砲台とゴーラ・モスカの容赦ない攻撃が放たれる。
助けられない光景をただ見つめることしか出来ない獄寺達の目に容赦なく映りこむ銃弾と圧縮粒子砲。

「!?」

クローム達に当たると思っていたその攻撃は、上から降ってきた小さな炎が横に広がり防壁となって防がれた。

「な、なんだ・・!?」
「っ!来たんだ・・」

炎を操り、仲間を助けることが出来るのは1人だけ。
防壁となっていた炎が四散。
額に炎を宿し、]のエンブレムが刻み込まれたグローブをはめた両手は彼女本来の目の色と同じ橙色。
珊瑚色に輝く目で、クローム達に攻撃をしていた自動砲台を見る。

「・・・」

片腕を横へ振る。
動く物体に反応し、攻撃をしていた自動砲台が炎に包まれ灰となった。まさに一瞬の出来事だ。

「・・・ボス」
「・・俺が相手だ」

超死ぬ気モードになったツナは、ゴーラ・モスカを睨みつけたまま言い放った。


「なんて綺麗な・・・炎・・・」



ファルファは、ツナの炎に見とれていた。







モスカを炎を宿した手で、斬った。


動きを停止したモスカの恐怖から解放された。だが、新たな恐怖が始まる

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