君が流したユメナミダ。


さぁ、終わりへと向かおう


「・・・え?」

モスカの中から管に繋がれ、体を拘束された老人が倒れてきた。
胸に滲む血は、先ほどツナがモスカを貫いた部分と同じ場所。

「・・う・・・そ・・」

倒れこんできた老人の姿に、額の炎が消える。
その場に座り込み、目を閉じている老人は修行の最中リボーンに見せてもらった写真の老人と同一人物。
何故、モスカの中から?

「9代目!」

バジルの叫びに自分の両手を見る。血が、付着している。

「私が・・・9代目を・・・・?」
「安心しろ、死んじゃいねぇ・・・が、応急処置じゃ間に合わねーな」

傍まで駆け寄ってきたリボーンの判断に口を押さえる。
これで9代目が死んだら・・?
カタカタと震えるツナを離れたところから見ていたXANXUSは、1度目を閉じた。

「よくも9代目を」

振り返ってくることはないが、XANXUSの言葉にツナの肩が跳ね上がる。

「9代目への卑劣な行為は、実子であるこの俺への、崇高なるボンゴレ精神への挑戦と受け取る」

さらに言葉を続ける。
青褪めた顔で、涙を流しながら振り返るツナの目を真っ向から見つめ、口元に笑みを浮かべる。
「ボス殺しの前に争奪戦など無意味。我が父のため、ボンゴレの未来の為にお前を倒す」
「ボス!」
手にはめた大空のリングを見せつけながら言い放つ。
これが狙いだったのか。改めて、倒れているゴーラ・モスカが9代目を入れていた空間を覗き込み舌打ちをする。
「9代目をモスカの動力源にしてやがったのか」
「どう、りょくげん・・?」
「罠だったんだ。XANXUSを次期ボスにすることを反抗する奴等はこれからも出てくる。そいつらを黙らすために、ツナを悪役に陥れ9代目の仇を討つ」

そうすれば、XANXUSに反抗するものはいなくなる。
全て仕組まれていたことだった。そのために父親すら犠牲にした。

「憶測での発言は慎んでください。全ての発言は我々が公式で記録してます」
「好きにしろ。俺はもうキレてんだ」

チェルベッロに襲ったのはリボーンの殺気。
赤ん坊の姿とはいえ、世界一と謳われるヒットマンの殺気には、表情を崩さないチェルベッロですら恐ろしく感じる。

「でも、俺が、9代目を・・・」

罠だとか知らなかったとか、それでもツナが9代目を手にかけたことには変わりはない。
自分の仕出かしてしまった事に動揺しているツナには、9代目とファルファの姿が重なって見えていた。

「9代目・・・」
「・・悪いのは、私だ・・」

細く、搾り出した声。
震えながらも目を開けた9代目が、まっすぐにツナを見つめていた。

「9、代目・・」
「私が、XANXUSを永い眠りから目覚めさせてしまったんだ」
「どういうことだ?XANXUSはゆりかごの後ファミリーを抜け、厳重な監視下に置かれたはずだ」
「ゆりかご・・?」
「ボンゴレ最大のクーデター・・9代目の実子が首謀者なので、当時の精鋭と上層部以外は知らない事件だ」
「あれから8年・・XANXUSは眠り続けていた。恐ろしいほどの怒りと執念を増幅させ・・」

ゴホッと口から血を吐き出す。
これ以上喋り続けるのはかなり危険だ。リボーンの呟きにゴーラ・モスカを斬った時の感触が蘇る。

「ツナ・・君の事はリボーンから良く聞いていた・・・」
「・・もう、喋らないで・・」
「すまない・・また、巻き込んでしまって・・」

ふるふると首を振って喋ることをやめてくれと頼む。しかし、9代目は喋り続けた。

「君が争いを好まない優しい男の子なのは覚えていた・・・だが、私はそんな君だから・・10代目に選んだんだ」
「え・・」
「何で俺に・・・」
「すまない・・・・」

力を振り絞って手を上げた9代目の人差し指に死ぬ気の炎が灯った。
額に近づいてきた炎。何をしようとしているのかわからず黙って行動を見守る。

「――!」

走るような痛みが一瞬。
あとは高速で映像が目の前を通っていく。




膝にツナを座らせおしゃべりをする9代目と家光

公園で走り回るツナを抱き上げる

動物園で怖がるツナを慰めながら一緒に回ってくれる

泣いているとき大きな手のひらで優しく撫でてくれる




9代目



「(俺・・・この人を知っている・・・)」
「すまない・・君の記憶を封じることが、幸せに繋がると思った・・・・」

死ぬ気の炎が消えた。
重力に従い落ちた手はもう微動だにしない。目を閉じた9代目を呆然と見下ろしながら、戻ってきた記憶に戸惑う。

「XANXUS様。9代目の弔い合戦は我々が仕切らせてもらいます」

9代目の意識が再び途絶えたのを遠目で確認をしたチェルベッロはファルファへと声をかけた。

「我々はリングの行方を見届ける義務があります。次の戦いの次の9代目弔い合戦の勝者を次期ボンゴレボスと」
「次の戦いを雪のリング争奪戦と位置づけさせていただきます」
「今までおこなってきた争奪戦の最終戦の前です。如何ですが、ファルファ様?」
「・・・・悪くないわよ?」

チェルベッロの申し出にファルファは頷いた。
雪戦で勝つことによっていじめられた仕返しを討つことができ、雪の守護者になることができる。XANXUS側にとっては願ったりな申し出だ。
最悪な方向に話しが進んでしまった。明らかに不利だ。

「それでは明晩、並中にみなさんお集まりください」
「ししし、執行猶予ついちゃったよ。よかったじゃん」
「フッ、明日が喜劇の最終章の前の前菜だ。せいぜい残りの時間を楽しんでおくんだな!」

カチッと、音が響いた。

グランドにいる全員の視線が音の発生源へと視線を走らす。
ファルファのすぐ傍で、重力感知式トラップをツナが、踏んだ。

「ッ!」
「・・・」

警報音が鳴ったのにも関わらず逃げようとせず近寄ってこようとするツナを抱きかかえ、その場から飛び上がる。
下からの爆風。しっかりと腕の中に抱きしめ校舎近くへと着地。

「何してるの!?」
「・・・ゃ・・・」

腕の中に抱きしめたまま頭の上から怒鳴りつけるファルファの服を握り締めながら、小さくだが呟く。
はっきりと聞こえなかった呟きに一旦黙ったファルファを、ゆっくりと顔を上げて、見る。
る目に息を詰まらす。

思い出したことを語る目に、徐々に集まる涙。
余計な事を・・・・。
ファルファのところまでは9代目がツナに何を言っているのか聞こえなかったため油断していた。

「ツナ」
「ファルファ・・・」
「お前は9代目の仇だ」
「っ!」
「明後日の大空のリング争奪戦でお前達を倒すのは、ボス。」

手のひらを光らせ、それを足元に放つ。剣を取り出し、光らせる。眩しさが収まり目を開けたときにはすでにファルファやチェルベッロ達は姿を消していた。

「・・・・」
「・・間に合わなかったか」

本当に、タッチの差。部下に9代目を任せ、急ぎツナへと近寄ってきた。

「門外顧問チームから連絡がきたんだ。・・・家光も、重症を負って病院に運ばれたそうだ」
「・・」
「ツナ・・・?」

両手を握り締め、顔を伏せているツナの顔を覗き込もうとする。が、リボーンの蹴りが脇腹にヒットした。
地味に痛い。

「な、何すんだよリボーン!?」
「うるせぇ、虫の居所が悪ぃんだよ」
「俺ではらそうとすんなよ!」
「10代目!」

リボーンに突っかかってるディーノを無視してツナに近寄る。顔はやはり俯いているから分からないが、表情を見ようなどと思わなかった。
見なくても分かる、泣きそうな表情をしている。

「大丈夫ですか、10代目?」
「あんまり心配させるなよ」
「極限に無茶はするな!」

ツナを囲む3人から離れた場所で、雲雀はツナを眺めた。
アルティのツナへの態度がどこか、煮え切らないのだ。わざと冷たくあしらっている様だ。

「・・・大丈夫だよ」

顔を上げる。笑って、るよね?
獄寺や山本、了平が微妙な表情をしたのを見なかったことにし、握り締めている両手を開く。
手で光から顔を被っている最中に握らせられた大空のハーフリング。
そして、9代目によって戻った記憶。
知っている。その意味が分からない自分が悔しい。

雪戦の夜。
でも鎖蝶には目もくれず
ファルファはチェルベッロと話をしていた。

・・・そんなに嫌なのか・・・

「オムレツって焼くの難しいよね」
「はい、よく焦げちゃったりとかします」
「オリーブオイルとか油を加えると、焦げ付かずムラがないそうです(マジで)」

・・・さすがに女の子だ・・・

「ツナぁ!私修行してきたからぁ、絶対勝つよぉ!つーかあの銀髪の女の子だぁれぇ?」
「あぁ、雪乃ちゃん・・・あの子が君の対戦相手だよ」

「ツナのために頑張るねぇ!」



こんなこと、思ってはいけないのだろうが、ツナはファルファに勝って欲しいと思っている。



時計が10時を指した。
チェルベッロたちと話をしていた
ファルファは、銀髪を手櫛で梳いてから、
リングに上がった。



「これより、雪戦を開始します」



―雪戦が、始まった。―





ガキンッ



始まったとたんに、
金属と金属がぶつかり合った音が響く。

「・・・遅い!」

くるっと雪乃の後ろに回り、
ブーツで背中に蹴りを入れる。
もちろんブーツの底には、鉛が入っている。
ブーツだけでも、十分殺傷能力はあるのだ。


ビキッ、バシッ



肋骨が折れる音がした。
ぐらりと、雪乃の体がゆれる。

「あら?もう終わりなんてことはないよね?もっと遊びたいなぁ、雪乃ちゃん?」
「そんなわけないじゃなぁい・・・勝つのは私よ・・・」
「アハハハハハ!!!戯れはよしてよ、そんな体でよく動けるよね?」


ひょい、ひょいとファルファの
攻撃をかわしつつ、カラコンをはずしていく。



「「「!!」」」



ボンゴレ全員が息を呑んだ。



「クフフ・・・私の幻術に耐えられるかなぁ・・・?」



骸と一緒のオッドアイ。
その目に映る「六」の数字。



「・・・畜生道」

「キャァァッ!」



雪乃の腕に毒蛇がまとわりつく。

今にも咬まれそうだ。



「げ、幻術よ!こんなもの・・・」

「幻術じゃないよ?何なら咬まれてみる?指を鳴らせば蛇はいっせいに噛み付き・・・毒が回って、

ジ・エンドってところかな?」



ファルファは今にも指を鳴らしそうで、雪乃の目には涙が零れる。



「ご、ごめんねぇ・・・リングはいらない、だからたすけ「甘い」
「大空に雪は1つでいい、お前は汚れた雪だ。だからいらない」
「えっ・・・・助けて・・・」
「そんな甘さで雪の守護者?甘えんな阿婆擦れ」
「・・・ツナ・・・・みんな・・・・」
「ん〜このままやるのも惜しいしな・・・みんなに憎まれて死ぬのはいかが?」


ブォン、と周りに幻術の霧がかかった。


「私ねぇ、こいつにいじめられてたんだよねぇ。リング戦で戦えるなんて、嬉しいよ。」
「テメェ・・・雪乃を離しやがれ!」
「ん・・・そんな口きけなくさせてあげる」

パチッと、指を鳴らした。
映像がみんなの前に、大きく写った。

(ちょっと!私のツナたちに近づかないでくれる!私のおもちゃで遊んでいいのは私だけよ!)
「うそ・・・だろ・・・?」
(武かっこいいし〜私の彼氏にしたらみんなうらやましがるだろうなぁ〜私のおもちゃたちってどうしてあんなにカッコいいのかなぁ〜?)
「俺たちを・・・利用してたのか・・・?」
(隼人、私を護るナイトだもぉ〜んw利用していいのは私だけよぉ)
「くそっ・・・!」
(もう最高!学校生活マジいいじゃぁ〜んツナたちを利用できるとかぁ)
「最低な女だね」

「違うのぉ!私はそんなことしてないもぉん!」
「ほぉ、じゃぁコレをどう説明するの?」

隊服を少しめくり、女番長にやられたときの青あざを見せてやった。
うっわ、雪乃めっちゃ青ざめてる。


「テメェ・・・よく俺たちを利用しやがったな」
「そうだね、俺たちを利用した罪は大きいよ?」
「だよな」
「さよなら、輪廻廻ってきてね♪」





パチッ・・・



広いリングに、指を鳴らした音がこだました。

毒蛇が、待ち構えていたかのように鋭い牙を立てて、噛み付く。
白い肌には、蛇の咬みあとだけが残り、血が噴出した。







「キャァァァァァ!!!!!!」



チャラッ・・・・

雪乃の死を確認すると、
首にかかっていた
ハーフボンゴレリングを取り、
自分のハーフとくっつけ、
雪のボンゴレリングを完成させた。


「あはは、コレで私は雪の守護者・・・」



ちゅ



リングに優しくキスをして、指にはめ、ヴァリアーのところに戻った。



「やるじゃんファルファ」
「ありがと、ベル」
「勝者、ヴァリアー」
「次は、大空戦。最後のリング争奪戦です」


「「大空に雪は一つでいい」私が言う、この意味分かるか・・・・?」
「・・・?」
「このリングは、人を見るの。汚れたものに死を与えるリング。アイツは汚れすぎた」
「・・・そんな・・・そんな理由で・・・・」
「馬鹿いってんじゃない。「そんな理由」なんかじゃない。甘い奴はボンゴレなんか継げない」
「!!」
「お休み、ツナ。私は帰る。術を使いすぎた」
「ししっ、俺も行くし」
「ベル、帰りに寿司でも食うか、私のおごりだ」
「賛成」


ジャラッ


鎖のついたブーツを履きなおし、ツナの近くに寄った。




「Tiamo・・・」
「へ・・・てぃ、あも?どういう意味・・・?」
「自分で調べて頂戴・・・」
「う、うん・・・(なんで真っ赤なんだろう・・・)」
「・・・言っちゃった・・・・」



さっきツナに言った言葉を思い出すと、胸がカッと熱くなる。顔が赤くなる。



「ファルファ、何考えてんの?」

「ん・・・ちょっとね。」



銀髪をくるくると指で回す。



「ファルファ、何か悩んでるんじゃねぇの?」

「別に。悩んでなんかないし。雪の守護者になれたし、嬉しいよ」
「それならいいんだけどな」
「ベル、あのさ・・・・」
「何?」
「私、リング戦終わったら10年くらい修行に行くつもりなんだ」
「なんで?」
「私はまだ未熟。ボスのそばに居るためにはもーっと強くならなきゃ、もっと、もーっと」
「ししっ、お前らしいな」
「ありがと。最高のほめ言葉よ。」



ぎゅ



「・・・ファルファ?」
「ごめん、このままで居させて」



何でか分からない。どうして涙が止まらないの?雪乃を殺したから?
でも殺しなら何度も経験してきた。ツナたちの顔が頭から離れない。
あの怒ったような、哀れむような目が。



「ん、大分落ち着いた。ありがとうベル」

「・・・」



くるっと回ってどこかにいくファルファの背中は、どこか寂しかった。



XANXUSをはじめとしたヴァリアー側の守護者。ツナを除いた沢田側の守護者。
いまだに姿を現そうとしないツナに獄寺は意味もなく歩き回る。
「まさか、あの野郎が10代目をっ!?」
「この大空戦で倒してこそ意味があるんだ、そんな真似するわけねーだろ」
リボーンがそう呟く。
「俺は冷やかしだぞ、コラ!」
「コロネロ師匠!」
「なあ、バジル。ツナどうしたか知ってるか?」
「いえ・・・拙者は本国にいる仲間と連絡を取り合ってましたので」
知らない。ツナの傍にはリボーンが付きっ切りで傍にいるから来ることは間違いないが。
「心配しなくてもちゃんときたよ」
校舎の角から現れたツナを見ながら呟く雲雀の声に皆がみる。リボーンと共に制服を着たツナが駆け寄ってきた。
「ごめんね、遅れちゃって」
「昼に意識を戻したアホ牛が急に退院しやがって、今まで探していたんだ」
「雷の守護者なら我々が連れてまいりました」
後ろから、眠っているランボを抱き上げたチェルベッロ達が言い放った。
「っ、ランボ!」
意識を回復してすぐに退院なんてありえない。多分、チェルベッロかレヴィの誰かに攫われたと踏んでいたのだが大当たりだ。
「命ある守護者には強制召集をかけています。XANXUS様の晴の守護者にもきていただいてます」


その言葉を聴いて、ファルファはチェルベッロの近くに行き、こう叫んだ。



「あ、兄貴は!?兄貴は生きてるの!?あと雪乃も!」
「スクアーロと雪乃の生存は否定されています。雨戦と雪戦の顛末は、貴方が一番分かっているはずです」
聞いてきたファルファを突き放す言葉。最後の望みを託して聞いたのだが、結局はファルファに決定的なダメージを与えたに過ぎない。己の迂闊さが悔しい。
「ではまず、守護者のリングを回収させていただきます」
ヴァリアー側とツナ側にそれぞれリングを納める箱を持ったチェルベッロが近づいてきた。
「死にもの狂いで集めたリングを返せというのか!?」
「心配しなくても、最終的にはリングは真の持ち主の元に戻ります」
「先輩、今はこの人たちの指示通りにしてください」
チェルベッロに突っかかる了平を背後かたホールド。突っかかれば失格にするとお決まりの台詞を吐かれるのは分かっている。そして了平がさらに突っかかるのも分かっている。今は黙って!
「確かに・・・では、今から大空戦の説明に移させていただきます」
「大空戦も今までの勝負と一緒、リングを完成させることです。フィールドは学校全体」
「フィールドが広大なため、観戦席と各場所に小型テレビと大型ディスプレイでXANXUS様と沢田嬢の勝負を観戦できるようにしています」
「守護者の方にはカメラ搭載型のモニター付きリストバントを配布します。それを装着しましたら速やかに各守護者戦が行われたフィールドへ移動をお願いします」
大空戦に守護者も参加するということだろうか?
リストバントを付けた山本が確認の為にモニターを見ればツナのドアップ。笑いながら言われて落ち込んだ。
「移動か・・・ならば円陣をするなら今しかない!」
「凄いテンション!?」
「気合い入れましょう10代目!」
「そうだな・・クローム、円陣するからこっちこいよ!」
「・・うん」
近寄ってきたクロームがギュッとツナの腕に抱きつく。
「・・ボス、大丈夫?」
「・・うん、大丈夫」
「ヒバリはそこにいていいぞ!10mルールに変えたからな!」
「何だよそれ」
「10m以内にいれば円陣に参加したとみなす極限ルール!」
「無茶苦茶なのにも程がある!?」
いつもと同じキレのあるツッコミは無理をしているものではない。ツナの中でXANXUSに対する心の整理がついたということなのだろうか?聞きたいが、それは聞いてはいけない領域。今自分達が出来るのはツナに気合いを入れて、勝たせることだけだ。
「沢田ファイッ!オーッ!!」
獄寺も、山本も、了平も大きな声で。クロームは小さいながらも声を上げる。1人1人がツナに思いを込めて、言った。
「頑張れよ、ツナ」
「では、後で」
「ボス、無理しないでね」
「極限に頑張るんだぞ!」
「・・・負けたら咬み殺すから」
「・・・がんばって」

ファルファも言葉を少しかけた。
言葉を投げかけ戦ったフィールドへ向かう皆の背を見送る。その目には決意が込められている。
「俺が、勝つから」
フィールドへ到達した者達がまず真っ先に視界に入れたのは棒。その上には自分達の属性を示すリングが鎮座していた。
「各フィールドに設けたポールの頂上にはリングを置いております」
「なんだよ、奪い合えっていうのか?」
「ご自由にどうぞ。できればの話ですが」
言っている意味が分からない。まるで出来ないと言われてるみたいでかなり気分が悪いものだ。何か言い返してやろうと口を開くより先、リストバンドをつけている手首に痛みが走る。
「リストバントに内蔵されていた毒が守護者達に注入されました」
「毒!?」
「デスヒーターと呼ばれる毒で、瞬時に神経を麻痺させ立っていることも困難になります。そして、徐々に体を貫くような痛みと熱が増し30分後には絶命します」
「毒を解毒するには、それぞれ守護者がしているリストバンドに同種類のリングを凹みにはめ込むことです」
「待って・・なんで皆に毒なんて注入するの!?」
「これが大空であるボスの使命です」
「全てに染まり全てを飲み込み包容することが大空の使命、守護者の命がボスの手に委ねられるのが大空戦なのです」
「ぶはっ!尚更面白くなってきたじゃねーか!」
今まで無言でいたXANXUSが喋りだす。
「このチェーンに全てのボンゴレリングをセットする・・・つまり、全てのボンゴレリングを集めることが大空戦の勝利条件です」
「・・わかった、早く始めよう!」
チェーンを受け取る。そこで、気づく。どこにつけよう。
「せ、制服かなり不利!」
レオンが体内で作ってくれたマフィア用の戦闘スーツは並中の制服なのだが、生憎ズボンにはチェーンをつけられるようなところはない。すでにここから絶体絶命。今更気づく。
「ポケットにでも突っ込め」
「ぞんざいな扱い!?」
仕方ないから突っ込むけど!ポケットに入れる。
「では、大空戦を始めてください」
チェルベッロの声と共に向かってきたXANXUSの動きは早かった。顔を殴られ、校舎の壁へと激突する。
「俺に勝つだと?身の程を弁えな」
「・・・・勝つ」
崩れた校舎から熱気が沸き起こり、爆風が上がる。立ち上がったツナの額に宿った炎と、珊瑚色に変わった目。全ての雰囲気がガラッとツナを変えた。
「俺が勝って、ボンゴレを継ぐ」
自分の覚悟を、XANXUSに告げる。


「・・・私はどうすればいいの?」



自分の愛する人と、慕う人が戦おうとしている。

ファルファは腕の痛みに耐えながら、考えていた。


憤怒の炎。
全てを灰に帰す絶対的な破壊力を持つ炎こそがXANXUSの炎であり、ボンゴレU世がそうだった。
そして、Z世が主武器としていた銃。死ぬ気弾に炎を圧縮して放つ破壊力は容赦なくツナに放たれた。
いくら死ぬ気の零地点突破を会得したとはいえ、XANXUSの猛攻の前にはタイミングを計れずダメージだけが蓄積していく。ツナとXANXUS、2人の間には圧倒的な経験の差がある。
大空戦前、XANXUSがツナを気にかける行動を取っていたとは思えない容赦のなさだ。

「これがお前の力か、綱吉!」

銃で憤怒の炎を蓄積した弾を放つ。9代目の仇という名目でツナに容赦のない攻撃をし続けるXANXUSの顔に浮かぶ笑み。その裏では、ツナへの憎しみがぶつかり合っている。初代の直系の孫。9代目から選ばれた後継者。平穏な生活を奪われた哀れな少年。そんな少年が、零地点突破を会得した。
自分に刃向かってきた。今も、零地点突破・改と改め両手の指で三角の形を作っている。
揺るがない瞳。8年前の9代目と同じ輝きを放つ目。自分には持つことが出来ない輝きが憎い。
「・・次は、俺の番だ」
弱々しかった炎を強く、大きく膨らませ向かってくるツナのスピードは最初とは違った。動きにも無駄はなく、XANXUSへと猛攻を食らわす。速く、重い一撃。
反撃で憤怒の炎を放てば、零地点突破・改の構えをする。その直後に膨らむ炎。
XANXUSの炎を、吸収している。短時間での急成長。
絶対に埋まることが出来ない、ツナとXANXUSの―――
「ド畜生がぁああ!!」
XANXUSの顔に浮かび上がってきた古傷と増幅する炎。怒りによって燃え上がる炎に、ツナは自分の両手を見つめる。
「・・・10代目には、させない」
「ふざけるなガキが!」
銃を鈍器扱いで殴りかかってきたXANXUSの手首を掴み、顎を殴り上げる。
痛い

心が
痛い

「っがぁ・・ボンゴレを継ぐだと・・」
「そうだ」
「継いでどうする?上の連中はお前の血しか見ないぞ?初代の血以外でお前を見ようとはしないんだぞ!?」
ボスとしての資質がなくなればすぐにお払い箱。組織を成り立たせるためには簡単に無情になる奴等ばかり。
「ボンゴレの血を残すためならお前の心など無視し、ボンゴレの為に使うだけ使って捨てさる!お前にそれが耐えられるか!?」

両手に憤怒の炎を宿しツナに向かう。避けることはせず、光るXANXUSの両手を死ぬ気の炎を灯らせ掴む。

「お前にボンゴレの業を背負えるのか!?」
「背負う」
「ハッ!簡単に言いやがるな!殺.し憎まれる弱肉強食の世界に、お前が耐えられるか!」
「なら変えてみせるまでだ。俺が、ボンゴレを」
「どうしてわからねえ!ボンゴレなんぞにお前の人生を狂わせたくないことを!俺のようにさせたくねえってことを!!」
更なる怒りの増幅にあわせてXANXUSの両手の炎もました。零地点突破・改で吸収することができない炎にツナも自分の炎を放出する。怒りと死ぬ気の炎がぶつかりあい、眩い怒りがあたりを覆った。
「!?」
自分の両手を包む氷。8年前と同じ現象。今の一瞬で感じた感覚に両手を見下ろすツナは、XANXUSの古傷が何故零地点突破を知っているかのような言葉をXANXUSが吐いたのかを理解した。
8年間眠っていた。確かに、これならば。
「・・その傷は、9代目につけられたんだ」
気づいたツナを睨む。
「・・今ならまだ、間に合うよ?」
死ぬ気の炎を消し、本来の姿で声をかけてくるツナは本当に、優しすぎる。
ここまでした自分に何が間に合うというのか?この勝負に勝たなければ全てが意味がないのに。
「間に合う・・だ?10代目の座は俺のものだ!」
眠りから覚めてすぐに、怒りのままに10代目に選ばれた日本の子供を殺.すために動こうとした。
リングの為に日本に来たときもそのつもりだった。全てが終わったら成長したツナを一目だけでも見ようと思っていた。それなのに、10代目に選ばれたのがツナだった。
「お前を10代目にはさせねえ!」
初代の血を持つツナが10代目になれば、上層部はツナの心など無視した行いばかりをするだろう。
好きでもない女との政略結婚。やりたくもない殺し。ツナの心を壊すであろう、ボンゴレ。
もう逃げられないところまで引きずり込まれているツナを救う方法は、自分が10代目になってツナを庇護する。
それしか、思い浮かばなかった。それが最善の手だと信じている。
「・・・ごめん、XANXUS」
伸ばされた手。泣いているツナ。
「零地点突破 初代エディション」
触れたところから氷らされていくXANXUS。何故、俺は今、氷らそうとしている?
苦しむXANXUSの声に戸惑いが生まれる。何も氷らす必要はない。倒せば、気絶させればいいのだ。
今氷らせれば、もう永遠にXANXUSは眠りから覚めることはない。迷いからXANXUSを包み込んでいく氷の速度が遅くなる。
「・・・XANXUS・・」
出来ない、俺には。技をやめようとXANXUSから手を離そうとしたツナを、苦しみながらも怪訝な顔で見たXANXUSの目に、映った。
「ツナ!!」
ナイフがツナに突き刺さった。
「ししし、リングは正統後継者にふさわしいんだよ、もどき」
両脚、肩に刺さり脇腹を掠ったナイフを放ったのベルフェゴールだった。ワイヤーを操り地面に倒れたツナからハーフリングを奪い取ると、他のリングも掲げる。
「リング、コンポー」
「こっちも準備できたよ、ベル」
中途半端に氷っていた氷は7つのリングにより溶けていく。
「7つの完全なるボンゴレはリングが継承される時、リングは大いなる力をブラッド・オブ・ボンゴレに授けるんだ」
「っ駄目・・・」
「黙れよ」
脇腹を蹴られる。ナイフで掠った箇所につま先が当たり、痛みに顔を顰めたツナにたいした興味を抱かず、XANXUSの手を取った。
「10代目!!」
「ツナ!」
「しし、どいつもこいつも新ボス誕生の瞬間にお立会いサンキュー」
「さあ、継承の時だ」

「・・・・・・」
チェーンに守護者のリングを。XANXUSの指に大空のリングを。リングがXANXUSの指に収まった直後、リングが共鳴し合い光だす。力が、溢れてくる。
「力だ・・これで、俺がボンゴレ10代目だ・・・っ!」
溢れ出る力に歓喜するXANXUSのとツナの視線が交じり合った、瞬間だった。口から大量の血を吐き出した。
リングをしている指から伝わってくる痛みに、自然とリングが地へと落ちた。
「な、なんだ!?」
「ボス、大丈夫?」
「ボス!」
驚くベルフェゴールとマーモンとファルファの間から、やはりXANXUSが見るのはツナだ。
全てが無駄だった。結局は、助けられない、護れない。
「ハッ・・・俺は、9代目と血なんざ繋がってない・・・」
もう、どうにでもなればいい。


ファルファは知っていた。

XANXUSが9代目と血がつながっていないことを。

そして、リングをつけたところで、リングがXANXUSの血を拒むことも。



知っていたのに、教えなかった。



「私が教えたところで・・・事実は変わらないでしょう・・・?」



解毒したばかりで、ふらつく体を必死に支えながら、ファルファはそう呟いた。



校に響くスクアーロの声よりも、呼吸を乱すXANXUSの方がツナには優先されていた。
刺さったナイフを脚に刺したまま、懸命に体をXANXUSの元へと引きずる。
「カスは俺を崇めりゃいいんだ!どいつもこいつも・・道連れだ!!」
怒りに燃える目の奥で絶望と悲しみに染まっている。二度目に現れた時も、そんな目だった。
消えたと思っていた光を再び灯したXANXUSの元へ、体を引きずらせて近寄る。
「報告します!我々3名を残しヴァリアー隊全滅です!」
「奴は強すぎます!鬼神の如き強さっ!!」
その先は言葉にされず吹っ飛んだ。
「礼を言いにきた、沢田綱吉」
煙が立ち込める中を歩き、姿を現した男の姿に言葉が出ない。骸同様、復讐者の牢獄に入れられていたはずなのだから。
「・・・ランチア、さん・・?」

「・・・ランチア!」
「マジかよ・・」
かなり不利だ。この場にいるのはツナの味方ばかり。逃げることすらかなわない状況にベルフェゴールは持っていたナイフを地面に投げ捨てた。ファルファも名残雪とアリシアを地面に置いた。
「畜生・・・畜生ッ!!」
空に向かって吼える。信じていたボスの座につくことも出来なかったのだ。力があるのに何も出来はしない。
「ボス・・・」
「っ来るんじゃねえ!」
這いずって近寄ってきたファルファをマーモンとベルフェゴールは止めようとしなかった。
止めてはいけないと、思ったのだ。
「悲しかったんだよね、ボス・・・」
無理矢理体を起き上がらせ、XANXUSの首に抱きついた。

「信じてた未来が、夢が壊されたのに次期後継者といわれ続けて、本当は辛かったんだもんね」
ボンゴレの血がなければ後継者になることはできないのに、9代目はXANXUSを我が子として扱った。
どんなに深い愛情を注がれても、ボスになれない。なのに周りはXANXUSをボスにといい続ける。XANXUSの力を欲している。XANXUSという恐怖を欲している。
「居場所がなくなるのが、怖かったんだよね、私もだよ・・・」
ボンゴレの血がないと分かれば皆が手のひらを返すだろう。今まで崇めていたXANXUSなど見向きもしなくなるだろう。ボンゴレにXANXUSの居場所がなくなってしまう。

ファルファも、自分の強さがなくなればみんなが手のひらを返してしまうだろう。

だから、いやでも戦うしか道はなかった。
「ボンゴレが大事だから、愛してるから、だから怖かったんだよね?」
全ては、ボンゴレを愛するが故。それはファルファの憶測かもしれない。
だが、XANXUSは目を合わせるアルティを振りほどくことも、暴言を吐くこともしなかった。
「大丈夫、居場所はちゃんと、ここにあるから」
重なってみえる。小さく、何を話されているのかも分かっていない筈なのに救われた笑顔と言葉。
「ヴァリアーにも、9代目の傍にも、もちろんみんなの中にあるから。」
XANXUSの血と、流れる涙が混ざっていても綺麗だった。微笑みながら涙を流す姿が、綺麗だった。
紡がれた言葉は何よりも、誰からでもなくファルファから言われる事を欲していた言葉。
9代目と自分の親子関係を気にしているときに、ポロッとこぼれた言葉に返ってきたファルファの言葉。
救われたと思った。しかし、自分で調べて知ってしまった真実に耐えられずに起こしたゆりかご。
怒りに支配されたままで眠りにつき、目覚めても収まらなかった怒りのままへの暴動。今度こそ、ちゃんと救われただろうか?怖いとき、苦しいとき、僅かな面影を頼りに何度縋りついたことか。何度面影だけに助けられたか。
「だからもう、悲しまないで、苦しま、ない・・で・・ボ・・・ス・・・」
「・・・ファルファ?」
また、首元に顔を埋めてきたファルファの様子がおかしかった。ズルズルとXANXUSの体を滑り落ち、地面へと倒れこんでしまった。すぐに解毒したしたために体が限界を迎えたのだろう。気を失ってしまったファルファを横目に、XANXUSも体を後ろへと倒した。
「沢田綱吉と6名の守護者を、次期ボンゴレ後継者と決定します」
どこでも、チェルベッロは己のペースを守る。この場にいる全員に告げられた言葉が、リング争奪戦の終了を宣言していた。


「・・・・兄貴・・・」



ぽろりと落ちた涙と一緒に落ちた言葉は、誰にも聞こえず空中に消えていった

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