それでも震えは止まなくて


そして、試合が始ろうとしていた。

「(負ければ、俺はエイリアに・・・。)」
「(・・・嫌だ!絶対に嫌だっ!!)」

「大丈夫?」

半分錯乱状態の雪女に、吹雪は優しく声をかけた。

「ふぶ、き・・・」
「大丈夫。僕たちは絶対勝てるよ」
「そうだよ、な。吹雪が、いるもんな。」
「あのね、雪女くん・・・僕は、君を絶対にエイリアなんかに渡しはしないよ」
「ありがとう・・・なんか落ち着いた。」
「よかった。」

そして、試合開始を告げるホイッスルが鳴った・・・


そのころ、美幸と正義は・・・

「エイリア対、雷門中・・・」
「どちらが勝つんだろうな」
「(雪女・・・)」

テレビの前に、2人は釘付けになっていた。


雷門中は確かにパワーアップしている。
だけれど、やっぱりエイリアは強い。

レーゼのアストロブレイクで、先制点を取られてしまった。

「雪女!!」
「あぁ!」

ボールが俺に渡った。
すぐさま、相手が攻めあがってくるが・・・


“息を深く吸い”

“冷気を吐き出すように”

“息を吐き、足に力を入れて、ボールを思い切り蹴る”


頭の中に、ノートに書かれていたことがよぎる。

「氷の息吹!!」

その時。
ひゅうぅっ、と凍りそうなくらい冷たい、凄く強い風が吹き、
その風と一緒にボールがゴールへ向かった!


しかし・・・


「ブラックホール!!」


相手の技で止められてしまった。


「(チッ、このままじゃ・・・)」


「大丈夫だ、雪女!」
「守・・・」

そうだよな、大丈夫、だよな・・・


そうして、前半が終わった。


「ちっくしょう!あのシュート止められなかった!!」
「俺の新技も、通用しなかった・・・」
「でも、あの二重のディフェンスと、マジン・ザ・ハンドなら、防げるはずだ!」
「吹雪君、後半はFWに行きなさい。点を取りに行くわよ」

そう言われて、みんなはざわついた。
しかし、鬼道たちは気づいたのか、すぐに静かになった。

「そして・・・雪女君」
「え・・・はい?」
「目金君と交代しなさい。」
「えっ・・・」
「何故ですか、監督!雪女は・・・」
「意見は聞いてないわ」

そう言って去っていく瞳子さん。


そうか・・・俺・・・


俺は握りこぶしをぐっと握り締めた。


「雪女・・・・」
「どうしたんだよ守!そんな辛気臭い顔すんって!俺気にしてないから!」
「でも」
「でもじゃない!俺は平気なの!試合に集中しろって!」
「あ、あぁ・・・」

雪女は笑顔だったが、少し悲しそうな顔をした。

「・・・俺、顔洗ってくるわ」
「そうか」


ザー・・・

俺の周りには、水の音だけがこだまする。

「そうか、俺・・・気づいてなかった。自分のことしか考えてなかった。」

顔から流れ落ちる水に混じって、涙が零れた。

俺は・・・瞳子さんに気づかされた。

涙も水もタオルで荒く拭いて、俺は前を見つめなおした。

「俺は、生まれ変わるッ!!」

俺の後ろで、誰か微笑んだような気がした。


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