泣きっ面に狐


「えっ、イプシロンから襲撃予告?」
「本当ですか、監督!」

俺がそう聞くと、瞳子さんは軽く頷いた。

「ええ。予告先は、京都の漫遊寺中」
「・・・聞いた事のない学校だな」
「確か、フットボールフロンティアにも参加していなかったわよね・・・」
「漫遊寺中は学校のモットーが心と体を鍛えることで、サッカー部も対抗試合はしないのよ」
「でも、フロンティアに参加していれば、間違いなく優勝候補のひとつになっていたでしょうね」
「「「優勝候補!?」」」

俺達は驚いた。

「修行で鍛えたパワー、スピード・・・どれをとってもいい、隠れた逸材ってわけだな」
「無差別に学校を襲っていたジェミニストームとは違って、イプシロンはそういった学校を襲っているわ」
「隠れた強豪チームを襲ってるわけか」
「そうよ。イプシロンを倒せば、エイリアの本当の目的が分かるかもしれないわね・・・」

そう言うと、瞳子さんは顎に当てていた手を離し、こう言った。

「すぐに漫遊寺に向かうわよ!」
「「「はいっ!!」」」

そうして俺達は、漫遊寺に向かうことになった・・・

着いた先には。

「・・・なんか、のんびりしてるよな」
「さすが京都」
「襲撃予告なんて、まったく気にしてない感じ!」
「とにかく、サッカー部を探そうぜ!」
「サッカー部なら、奥の道場みたいだよ」

吹雪の声が聞こえたから振り返ると、
吹雪は女の子2人と楽しそうに会話していた。

「・・・っ!!」

俺はたまらなくなって走り出した。


「Σおい、どこに行くんだよ!」
「すぐ戻るっ!!」

走って、近くの茂みの影で、俺は泣いた。

胸が痛くて、痛くて、苦しくて。

あぁ、俺は・・・


「何泣いてるんスか?」
「えっ?」

振り向くと、そこには
鮮やかなオレンジ色の髪をした、オッドアイの女の子が立っていた。
着物だし、漫遊寺の子・・・?

「あっ、慣れ慣れしく話しかけてすまないっス!これ、あちきの口癖なんス!」
「べ、別にいいぜ・・・」
「そうスか。ところで、何で泣いてたんスか?」
「・・・」
「あわわ、言いたくないんなら言わなくてもいいス!でも、言ったほうがすっきりするっスよ?」
「・・・俺の、ただのやっかみだよ。醜いな、俺。」

俺は、その女の子にさっきのことを話した。
なぜか、この子に話すとすっきりする。
気づけば、胸の痛みは取れていた。

「そうなんスか・・・好きな人が、女の子と楽しそうに・・・ねぇ。」
「別に恋人ってワケでもないけど、凄く前から好きだったからよ・・・」
「分かるっスよ!あちきもそうっスから!」
「君も?」
「はいっ!」
「そっか・・・」
「どうスか?すっきりしたっスか?」
「・・・うん、ありがとう。」

そして俺は気がついた。

「あ・・・皆とはぐれた・・・」
「はぐれた?もしかして、雷門中の人っスか?」
「あ、うん」
「あちき、ココのことよく知ってるんで、道場まで案内するっス!」
「ありがとう!・・・ところで君、名前は?」
「・・・狐狸!狐と狸って書いて「こり」って読むんスよ!」
「俺は雪女。雪女って書いて「ゆきめ」って読むんだ」
「雪女さんっスかー、いい名前っスね!」
「君の名前も可愛いよ!」
「そんな、照れるっス〜!」

そんな話をしながら、俺達は道場へと歩いていった。

「ところで、どうして君は俺に優しくしてくれたんだ?」
「・・・そうっスねぇ、昔に恋した男にそっくりだったからっスよ」
「昔?」
「そうっスねー、50年前くらい前っス」
「ご、ごじゅ!?」
「・・・ふふ、あちきは実は狐なんスよ」

そう言うと、狐狸はくるりと回った。
すると、狐狸の頭と腰に、狐の耳と尻尾が現れた。

「久しぶりに話せて楽しかったっスよ。あちきはサッカーが好きだから、また会うかもしれないっスね」
「君は・・・」
「おっと、それ以上は駄目っスよ。」

そういうと、狐狸は雪女の唇に指を当てた。
青と赤のオッドアイに、吸い込まれそうになる。

「道場はここからまっすぐ行けばあるっスからね」
「あ、ありがとう」
「別にいいってことっスよ!じゃあまた何処かでお会いしましょうっス!」

そう言って、狐狸は煙を上げてどこかに消えた。

- 103 -

*前次#


ページ:





[ top ]

[ 表紙に戻る ]



ALICE+