完璧になんてならなくていいのに


俺は、吹雪に声をかけた。

「吹雪、あいつやっぱ大変だよな。・・・吹雪?」
「僕・・・役に立たなかった・・・」
「そんなことないぜ!」
「何にも出来なかったんだ!!」
「・・・っ」
「こんなんじゃ駄目だ・・・完璧にならなきゃ・・・」
「・・・・っ!!」

自分を否定ばかりする吹雪にいらだって、
俺は吹雪の肩を掴んで、少し顔を近づけた。

「あぁ、腹立つ!!自分を否定ばっかすんじゃねーよ!!」
「でも、僕は役に立たなかったんだ・・・」
「そんなことはない!!少なくとも、俺の心の支えにはなってる!」
「・・・えっ?」
「(し、しまった!)な、なんでもない!忘れろ!」

俺は振り向いて、守の近くに寄った。

「雪女くんの心の、支え・・・」

吹雪はきゅう、となる胸を押さえた。

次の日。

漫遊寺との別れを済ませ、キャラバンに乗り込んだ俺たち。

一番後ろ、壁山の横に俺が座ると、
何故か違和感がした。

「(あ、そーいや・・・)」

俺は荷物の隅に隠れていた小暮を見つけた。

「みーつけた。お前、着いてきたのかよ」
「・・・わ、悪いかよ!」
「先輩?どうかしたんスか?」
「こいつだよ、こいつ。」
「あぁーっ!」
「どうした、壁山?」
「・・・な、マジかよ!!」

俺の横に、ちょこーんと座る小暮に
みんな驚いてましたとさ。


「小暮、これからよろしくな。」
「・・・あぁ、よろしく。」
「あ、そういえば、お前に返すものがあったんだ。」
「なんだよ?」

俺は、ポケットの中から
あの蝶の髪飾りを取り出した。

「これ。お前の大事な悪戯道具だろ?」
「・・・お前にやるよ。」
「いいのか?」
「あぁ。俺の手作りだから、大事にしろよな」
「・・・ありがとな!!」

俺がそう言って笑うと、小暮は少し顔を赤くして、そっぽを向いてしまった。

俺は気にせず、貰った髪飾りを着けて、
ニコニコしていた。



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