俺のばあちゃん


そして陽花戸中。

「君が円堂大介の孫か。よう来たね・・・。」
「はい!」
「君は火月雪姫の孫か。雪姫にそっくりだ・・・。」
「あ、ありがとうございます。」
「お久しぶりです、おじ様!」
「・・・おお!総一郎は元気かね?」
「え、えっ?」
「あぁ、そういうこと・・・」
「なぁ雪女、何がそういうことなんだ?」
「ハァ・・・」

相変わらずの守にため息が出た。

「おじ様とは、子供の頃からの知り合いなの。」
「ああ。総一郎くんは歳は離れとるが、ブルボン大学の先輩後輩たい。」
「へぇ・・・」
「ヨーロッパはよかよ。なんと言ってもサッカーの本場やけん。・・・君たちも、いっぺんは行くべきたい。」
「・・・はい!」
「ヨーロッパ、かぁ・・・」
「・・・でも、どうしておじ様のところに、円堂大介さんや火月雪姫さんのノートが・・・?」
「わしゃあ、大介と雪姫の大親友ばい。」
「「「ええっ!?」」」
「見らんね、この陽花戸中を。大介と雪姫とわしの母校たい。」
「・・・えっ!?じいちゃんは雷門中じゃなかったんですか!?」
「(ああ、だから話し言葉に福岡弁がときどき混ざってたわけだ・・・)」
「生まれも育ちも福岡たい。雪姫は出身がどこかは分からんが・・・中学んときに二人とも転校したっちゃけ・・・」
「へぇ・・・」
「でも、それで二人のサッカー人生は始まったたい。」

そして・・・

「あの、聞かせてください!じいちゃんの話・・・」
「お、俺のばあちゃんの話も!」
「よかよか。大介は、ものすごいサッカー馬鹿やったばい。寝ても覚めてもサッカーのことばかりしか考えん奴やった。」
「そんなわしらを、いつも支えてくれとったんが雪姫やった。」
「(・・・ばあちゃん・・・)」
「わしらより少し小さくて、愛らしくて・・・わしらは雪姫に夢中やった。いいところを見せようと、毎日飽きもせずにサッカーばかり・・・」
「・・・あの頃、どんなご馳走より、雪姫の握ったおにぎりが一番おいしかったとね。」
「(へぇ・・・)」
「それだけじゃなかぞ。三人で、イノシシ狩りばしとった。」
「「「イノシシ!?」」」
「あん時、怪我したわしらをかばって、雪姫が仕留めたのが、ほれ、あれ。」

そう言うと、校長は壁に飾ってあるイノシシを指した。

「ゆ、雪姫ばあちゃんすげえ・・・」
「じいちゃんすげーーー!」

「あっ、あの!じいちゃんはキーパーの練習とかもしたんですか?」
「ああ。タイヤをロープにぶら下げて・・・」
「ええっ!?」
「・・・俺、同じことやってました・・・。」
「そうか、さすが大介の孫ばい。」
「それに雪姫も、シュートの練習をするとき、上手く蹴れるまで何回でも、何十回でも練習しとった」
「お、俺も同じことしてた!」
「ほぉ・・・」

その時、瞳子さんが口を開いた。

「・・・ところで、円堂大介、火月雪姫のノートとは・・・」
「あぁ、裏ノートの事たいね」
「「「裏ノート?」」」

そう言うと、校長は席を立った。

「あぁ。表のノートには書けん事ばかり書いてある、恐ろしかノートたい」

「・・・あれは、二人が死ぬちょっと前のことやった・・・」
「(ちょっと、前・・・)」
「大介と雪姫が突然、私ばところに尋ねてきて・・・一冊づつノートをば託したと。」

そして、校長は二冊のノートを
机の上においた。

「「もし、俺達に何かあったら処分してくれ」・・・そしてしばらく経ってから、二人とも、あげんことに・・・」

校長は、窓から空を見上げた。

「大介、雪姫。そっちでも、サッカーばやっとるか?お前たちの頼みだったが、捨てることができんかった・・・」
「いつか、受け継ぐべきものが現れる・・・そう、信じとったばい・・・」

「「受け継ぐべき、もの・・・」」

そうして、俺達はノートを手に取った。

「おおっ、すげえ!!」
「わぁ・・・相変わらずの字の汚さ。」
「雪姫さんのノートを見習って欲しいわね・・・」
「でも、こんなすげえ技出来たんだ!」
「・・・いや、出来んかった。」
「えっ?」
「構想はよかったが、サッカー馬鹿の大介でさえ完成できなかった不可能な技が書かれとるばい。」
「・・・」
「それ故、それは「究極奥義」と呼ばれとるばい・・・」
「じ、じゃあ、俺の方も・・・」
「・・・そっちは、体に負担をかける技ばかりたい。サクリファイトと同じ・・・下手をすればそれを超えるほどの技ばい。」
「サクリファイトを、超える・・・!?」
「・・・いや。正確に言えば、半分ほどが体に負担をかける技。あと半分は威力が凄まじく、雪姫が封印した技ばい・・・」
「威力が、凄まじい・・・か。・・・ん?」

雪女の目は、あるページに釘付けになった。


“アイスニードル”と言う技のページで。



(アイスニードルだ!!)

(雪姫が、蘇った・・・!!)


前にOBの人たちが言っていた言葉が、
雪女の頭の中によぎった。


雪女はもっと詳しくそのページを見た。

「俺のアイススピアーに、そっくり・・・」
「・・・ほう。その技は雪姫が最初に編み出した技ばい。」
「俺、この技にそっくりなアイススピアーって技を、持ってます!!しかもそれは・・・俺が最初に編み出した技で・・・」
「それは・・・凄かことばいね。」
「そ・・・それに、俺の技に似てる技も少し乗ってる・・・」
「・・・君は、本当に雪姫の孫ばいね。」
「そっか・・・だから・・・」

もしかして、俺の中には
雪姫ばあちゃんの血が色濃く残っているのかもしれない。

それだったら、ばあちゃんに似てることや、
技が似ていることや、ばあちゃんにそっくりな事にも理由がつく。

「(ばあちゃんって、凄かったんだな・・・)」


「じいちゃん、俺・・・やってみせる!究極奥義をものにしてやる!」
「俺も、この技を取り込んで、もっと強くなって、完璧になってやるぜ!」
「二人で頑張ろうぜ!」
「おおっ!」

俺達は拳をあわせて、ニカッと笑った。

その時、校長室に
コンコン、と控えめなノックの音が響いた。

そこに現れたのは、中1くらいの可愛い女の子だった。
今では全然見かけない、ワンピース型のセーラーを着ていた。
長く、綺麗な黒髪がそれにマッチして、
なんだかお人形さんのように可愛い女の子だった。

「・・・お、お父さん。お客様にお茶を持ってきたんだけど・・・い、いる?」
「あぁ、すまんな祈莉。」
「あら?おじ様に娘さんがいらしたなんて・・・知りませんでしたわ。」
「・・・あ、いや、違うんです。私は養子なんです・・・」
「この子は祈莉(いのり)。わしの親戚の子でな・・・」
「私、数ヶ月前に両親を亡くして・・・。お父さんが引き取ってくださったんです。」
「だから、知らなかったのも無理はなか。」
「そうなんですか・・・」
「よか子ばい。優しゅうてな・・・。本当の娘のように可愛がっとる。」

そう言って、校長は祈莉ちゃんの頭をなでた。

「お父さん。私、邪魔しちゃいけないから出るね。」
「あぁ、悪かったばい。サッカーをしておいで」
「・・・うん。」

そう言うと、祈莉ちゃんは校長室を出た。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」なんて言葉があるが、
それにぴったりな女の子だったなぁ。
・・・俺とは正反対だorz


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