繰り出されたその技は


「「「サッカー?」」」
「あぁ、祈莉はああ見えてサッカーが凄く好きでな・・・。最初は人見知りしとったが、サッカーで友達を作って・・・今は楽しそうにしとるばい。」
「へぇ・・・」
「ちょうど、よか機会たい。・・・うちのサッカー部を紹介するたい。」

そして、俺達は陽花戸中のサッカー部に会いに行くことになった。

「・・・あっ、さっきの・・・」
「さっきは自己紹介出来なくてごめん。俺は火月雪女。よろしく。」
「・・・祈莉、です。よろしくお願いします・・・。」
「君もサッカーやるんだ。すげーな!」
「あ、はい・・・。私は、マネージャー兼プレイヤーなんです・・・」
「マネージャー兼プレイヤーか!凄いんだな、君。」
「別に、凄くなんてないですよ・・・。私、実は雪女さんの大ファンで・・・」
「大ファン?」
「・・・はい!だ、だから私、マネージャーからプレイヤーに転向して・・・」

そう言うと、祈莉ちゃんは頬をかすかに赤くした。

「ありがとう。俺、すげー嬉しい。」

そう言って、俺がすっと手を差し出すと、
祈莉ちゃんは、大層びっくりした顔で俺を見た。

「あ、あああ、握手してくれるんですか!?」
「・・・あ、あぁ。」
「あ、ありがとうございます!」

祈莉ちゃんは、おずおずと手を取り、
握手をしてくれた。

「と、とても嬉しいです・・・!」

祈莉ちゃんは凄くニコニコしていた。
すると、急に後ろを振り返り、こう言った。

「・・・ゆ、勇気!勇気も円堂さんと、握手とかしたら・・・。あれ、どうしたの?」
「え、えっと・・・」
「「円堂さんに会えたら俺、感動です!」とか言ったのは、勇気だよ?」
「・・・うっ、うん!!」

そう言うと、立向居は守のほうへ向かった。
・・・が、かなり緊張していたのか、手と足一緒に出ていたが。

「えっ、円堂さん!俺、陽花戸中一年、立向居勇気です!」
「・・・お、おう!よろしくな!」
「あ、あ、握手してくれるんですか!?」
「もちろんさ!」

そう守が言うと、立向居は目をキラキラさせて、
手をつかむと、思い切り手をぶんぶんと振った。

「(わぁ、立向居と祈莉ちゃんて似てるな・・・)」
「感激です!俺、もう一生この手洗いません!!」
「・・・いや、ご飯の前には洗ったほうがいいぞ?」
「で、ですよね・・・。」
「(なんだろうあの可愛い生き物)」

と思い、ちらりと祈莉ちゃんの方を見てみると・・・

「・・・じ、じゃあ、手袋つけてればいいのかしら・・・炊事用の手袋的な・・・」

という恐ろしい発言が聞こえたが、
聞き間違いということにしておこう、そうしよう。

「そ、そうだ勇気!あれを見せるんじゃなかったの?」
「なんだい?あれって・・・」
「俺が習得したキーパー技です・・・。でも、円堂さんに見せるのは緊張するな・・・」
「・・・だ、大丈夫よ勇気!わ、私もあれを雪女さんに見せるんだから!」
「そ、そうだね・・・。」
「そうだ。どうせだから一緒に見せましょ!それだったら緊張しないと思うの。」
「・・・そうかな・・・?」
「そうよ!勇気はキーパー技、私はシュート技だから!」
「そうかなぁ・・・」
「見てみたいな!」
「俺も俺も!」
「「ほ、本当ですかっ!?」」

そして、俺達は二人の技を見ることになった。


やっぱり、あのセーラーじゃ動きにくいらしく、
祈莉ちゃんはちゃんとユニフォームを着ていた。

「・・・ゆ、勇気!行くよっ!!」
「・・・ああ!」

そう言うと、二人とも構えた。
その時、凄く冷たい風が吹き荒れる。

「(こ、これは!?)」

そして、祈莉は蹴る体制になる。

それは、まさしく・・・


「(アイスニードルの、体制・・・!?)」

「・・・アイスニードル!!」

そう叫び、ボールを思い切り蹴ると、
ボールは氷の塊に包まれ、まるで針のように鋭くなり、ゴールへ一直線。
その様はアイススピアーにそっくりだった。

そして、立向居も・・・

「ゴッド・・・ハンド!!」

青いゴッドハンドを繰り出し、アイスニードルを止めた。

「「「「なっ・・・・!!」」」」

そして、守と俺は
立向居と祈莉ちゃんの元へ駆け寄った。

「凄いよ立向居!!お前、やるじゃないか!」
「あ、ありがとうございます!!」

「すげーぜ、祈莉ちゃん!!アイスニードルを繰り出すなんて!!」
「あ、あああ、ありがとうございますっ!!」

「ど、どうやって・・・」
「あいつらは練習したんだ。」
「練習?」
「立向居も祈莉もゴッドハンドとアイスニードルの映像を何度も見て、死ぬほど特訓したんだ。」


「・・・祈莉ちゃん、どうしてアイスニードルが出来るんだ?」
「あの、その・・・。いけないこととは分かっていたんですが・・・」
「いけないこと?」
「ま、前に少しだけ、あの秘伝書を・・・の、覗いちゃいまして・・・。」
「・・・!?」
「で、あの技が頭から離れなくて・・・。お父さんに聞いたら、アイスニードルの映像があるって・・・」
「それを見て、死ぬほど特訓したんだ・・・」
「は、はい。ですから足は・・・」

そう言うと、祈莉は靴下をぺろっとめくった。
見ると、打ち身や切り傷やあざだらけだった。
それを見て、雪女も靴下をめくった。
雪女も同じように、傷だらけの足をしていた。

「俺も一緒だな!」
「そ、そうですね!」

「見ただけで身につくなんて・・・」
「二人とも、凄い才能だな・・・」
「でも、そんなに凄いことなのか?」
「そうや!あんなん、手をビャーって出したら出来るんとちゃうん?」
「アイスニードルってやつも、ボールを思い切り蹴ったら・・・」
「いや。円堂はゴッドハンドを身につけるために、血のにじむような努力をしてきたんだ。」
「アイスニードルに似ている、アイススピアーも同じぐらい特訓したんだろう・・・」

「凄く努力してきたんだな!」
「はっ、はい!俺、もっともっと強くなりたいんです!」
「あぁ!努力は裏切らない!だが、もっと強くなるためには、もっと特訓が必要だ!」
「はいっ!!」
「よかったな!立向居、祈莉!」
「「は、はいっ!」」
「・・・ところで、どうだい?俺達と合同練習をしないか?」
「あぁ!」

そして、俺達は合同練習を始めた。
・・・が。
ボーッとしていた守の顔面にボールが当たり、
ちょっとの間休憩になった。

「円堂さん、だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫?」
「・・・面目ない。」
「究極奥義のこと考えてたんでしょ」
「な、何で分かったんだ!?」
「もー。私はサッカー部のマネージャーなんだから、それくらい分かるわよ。」
「・・・き、木野さんは・・・す、凄いですね。」
「えっ、どうして?」
「・・・わ、私、引っ込み思案なもので・・・。みんなのことを良く知るってことが、で、出来てなくて・・・」
「そうなの?」
「は、はい。よく知ってるのは勇気くらいなもので・・・。勇気とは、凄く仲がいいですから・・・」
「そっかあ・・・」
「なあ、それより・・・」
「ん?」
「パッと開かず、グッと握って、ダン、ギュン、ドカーンって、どういう意味だろう?」
「パーはゴッドハンドでしょ?グーは爆裂パンチ・・・」
「どういう事なんだろう・・・。」
「・・・む、難しいですね」
「そうだな。」
「で、でも、一つだけ分かることがありますよ。」
「なんだ?」
「・・・“努力”ですよ。努力は裏切ったりしませんからね。」
「言われてみればそうだな!じゃあ、特訓再開だーっ!」
「え、円堂さんは、本当に元気がいいですね・・・。」
「本当にね・・・」


そう言って苦笑いする秋と祈莉であった。

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