恐ろしいひとこと


「大事にならなくて良かったね、雪女くん。」
「秋ちゃん・・・」
「ん、何?」
「俺、イナズマキャラバンに居て、いいのかな・・・」
「な・・・何言ってるの!?雪女くんが居て、みんなが居てこそのイナズマキャラバンでしょ!?」
「俺のサクリファイトも役に経たなくて・・・士郎も止められなくて・・・」

雪女の目には、もう光は無かった。

「馬鹿言わないで!」
「俺、本当に・・・居てもいいのかな・・・」

そう雪女が呟いた瞬間、
秋は、雪女を強く、強く抱きしめた。

「秋ちゃん・・・?」
「そんな事、言わないで。」
「え・・・」
「雪女くん、雪女くんが居たから、今まで何でも乗り越えてこられた。」
「・・・」
「帝国の時だって、世宇子の時だって。雪女くんが居たから、乗り越えられたんだよ?」

そう言うと、秋は雪女を抱きしめる力をさらに強める。
でも、雪女が苦しまない程度に。

「・・・俺、居てもいいのかな」
「うん」
「誰も守れなかったけど、居てもいいのかな・・・?」
「居ていいよ」
「秋・・・ちゃ・・・秋ちゃん・・・っ!!」

そして雪女は、秋に抱きついて
思い切り泣いた。

「俺、怖かったんだ・・・!士郎が兄ちゃんみたいに、居なくなるのが怖くて、だから・・・!!」
「(兄ちゃん・・・?)」
「だから、守りたかったのに・・・!!」
「無理、しなくてもいいんだよ」

そう言って、秋は雪女の頭をやさしく撫でた。
まるで、愛する子供を撫でるように。

「無理しないでいいんだよ。そのままでいい。無理に完璧になろうとしなくてもいいの」
「秋ちゃん、ありがと、ありがとう・・・・っ!!」

そして、ひとしきり泣いたあと、
雪女は、吹雪の眠る病室に戻っていった。

そして、その目には
僅かながら、光が戻っていた。

「雪女くん・・・」





吹雪くんには、適わないな。

雪女くんに凄く、愛されてるんだね・・・。


私には、とても・・・



そして・・・

夕方になり、外がオレンジ色になっても、
士郎は目を覚まさなかった。

だけど俺は、ずっと手を握り、士郎に話しかけた。

「・・・なぁ、士郎。覚えてるか?」
「お前が、俺に告白してくれた日の事をさ。」

“僕は君となら、何があっても構わない!”

“だから、傍に居させて・・・?”

「お前、あの時まで俺を男と思ってたんだろ?」
「・・・でも、すげえ嬉しかった」

俺が話しかけても、士郎はずっと気絶したまま。

「・・・俺、負けねぇ。秋ちゃんが俺の目を覚まさせてくれたから」
「今度は、ちゃんと守るから」
「絶対に・・・絶対に守るから。」

そう声をかけても、士郎は目を閉じたまま。

「・・・また明日、来るからな」

出そうになった涙をこらえて、
俺は士郎の額にキスを一つ落とした。

「じゃあ、また明日」

そう言って、俺は病室を出た。


そして次の日。

「おはよう、秋ちゃん」
「あっ、雪女くん!元気になったみたいね」
「・・・秋ちゃんのおかげだよ。俺ようやく目が覚めた。」
「本当だよ?昨日の雪女くん、死んだ人みたいな顔してたんだから」
「えー、マジか!俺そんなに元気なかったのか!?」
「うん、全然。」
「マジでか・・・」
「でもよかった。雪女くんが元気になって。」
「秋ちゃんが声をかけてくれたからさ。・・・ありがとな。」
「どういたしまして。」

そんな会話を秋ちゃんとしていると、
守がやってきた。

「みんな、話がある」

そう、守は言った。

そして、守が告げたことは・・・





恐ろしい、ことだった。



「そんな!信じられないっス!!」
「風丸が・・・イナズマキャラバンを降りた・・・!?」
「風丸さん・・・!!」
「監督。本当なんですか?」

鬼道がそう聞くと、瞳子さんは凛とした声で、こう答えた。

「・・・ええ。すでに東京に戻ったわ」
「どうして止めなかったんですか!?ここまで一緒に戦ってきた仲間なんですよ!?」

秋ちゃんが大きな声でそう言った。

「秋ちゃん、言いすぎだ!」
「でも・・・!!」
「・・・サッカーへの意欲を無くした人を、引き止めるつもりは無いわ」
「「「・・・!!」」」

そして、瞳子さんはこう言った。

「私は、エイリア学園を倒すためにこのチームの監督になったの。戦力にならないのなら、出て行ってもらって結構よ」
「・・・ああ、そうだったな!あんたは勝つためなら、どんなことでもする人だったもんな!」
「土門!!」
「・・・練習を始めなさい。開いたポジションをどうするのか考えておくことね」

そして、瞳子さんはどこかに行ってしまった。

「こんなんじゃ、練習できっこないっスよ・・・」


あぁ、あの時と同じだ。

監督が居なくて、迷っていたときの・・・



「(・・・違う!!)」



俺が、俺が支えなきゃ!

風丸や吹雪の居ないチームを、俺が支えなきゃ!!

完璧に、ならなきゃ・・・!!



「・・・みんな、クヨクヨすんなよ!しばらくは俺が士郎や風丸のポジションを埋めてやる!」
「雪女・・・」
「あいつらは少し、自分を見つめなおす時間が必要なだけだ!」
「そう・・・よね!私、風丸くんは帰ってくるって信じてる!」
「秋ちゃん・・・」
「わ、私もです!」
「春奈ちゃん・・・!」

その時、鬼道がゆっくりと歩き始めた。

「お兄ちゃん!」
「鬼道・・?」
「・・・練習を始めるぞ。」
「でも・・・」
「俺達がサッカーをするのは、監督のためじゃない。円堂がいつも言ってるだろう、「サッカーが好きだから」だ!」
「鬼道・・・」
「サッカーを守るためにも、エイリア学園に勝たないとな」
「お兄ちゃん!」
「・・・行くか。」
「はいっス」

鬼道に続くようにして、土門や壁山も練習を始めた。

「よし、じゃあ俺もやるか!」

その時。


「・・・練習・・・できない・・・」

「どういう、事・・・?」
「今の俺は、サッカーと真正面から向き合えない。・・・ボールを蹴る、資格がないんだ・・・」
「・・・」
「だから、それまでボールを預かっておいてくれ・・・」

そう言って、ふらふらとどこかに行こうとする
円堂の背中に・・・

「あ゛ーーーっ!!ああもう腹が立つ!!」
「「!?」」
「・・・守!テメエはそんなことで凹む奴だったのか!?」
「雪女・・・」
「ウジウジしやがって!!腹立つんだよ!」
「雪女に何が分かんだよ!?」
「黙れ!!そりゃ俺だって、落ち込みたいさ!仲間が居なくなっちまったんだからな!」
「じゃあ!」
「お前は仲間が戻ってくるのを信じられねえほどに、腐っちまったのか!?」
「・・・!!」
「お前はまだいい。仲間が帰ってくるかも知れねぇんだからよ!」
「・・・」
「でも俺は、俺は・・・」

そう言うと、雪女はギュッ、と
血が出そうなほどに拳を握った。

「俺は・・・士郎っつー大切な奴が今、生死を彷徨ってんだよ!!」
「!!」
「分かったら自分を一回見直しやがれ!元に戻るまで俺に話しかけるんじゃねぇぞ!!」

そう言うと、雪女は走ってどこかに行ってしまった。

「雪女・・・」

その頃雪女は。

「(あー、言っちまった・・・つい腹が立って言っちまった・・・)」
「(イラつくと手より先に口が出る癖、どうにかなんねーかな・・・)」

ちょっと後悔していた。




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