傷と涙と笑顔と


「まさか一日一回だけとはな・・・」
「・・・今日はこの島に泊まるしかないわね」

夏未嬢がぽつりと呟くと、
守は凄く元気になって、こう言った。

「よし、練習するぞ!」
「えっ?」
「守!練習するって、どこで・・・?」
「ここだ!」

そう言うと、守は砂浜を指差した。

・・・そして、砂浜で練習をするはめになったのだった。

俺も練習しようと思ったが、秋ちゃんに止められた。

「そういえば雪女くん、お薬ちゃんと傷に塗った?」
「あっ、忘れてた・・・。でも手が届かねーから、誰かに頼まねーと」
「じゃあ、私が塗ろうか?」
「おっ、ありがとう秋ちゃん!助かるぜ」
「どういたしまして。」
「(・・・傷?)」

雪女は傷薬を秋に手渡すと、
ベンチに座って、少し服をめくった。
すると、痛々しい傷が現れる。

それを見ると、吹雪は少し顔色を変え、
ガタガタと震えだした。

「ぐッ・・・あ゛ーっ!!すげーしみる!」
「我慢、我慢。」

そして、秋が薬を塗り終わり、
雪女が服をもとに戻したその時。

「雪女・・・!!」
「どうしたんだ、士郎?顔色が悪・・・」

吹雪は、雪女を強く強く抱きしめた。
吹雪の目には、大粒の涙が溢れていた。

「ごめん・・・ごめんね・・・!!」
「・・・士郎・・・?」」
「僕が弱いから、完璧じゃないから・・・こんな事に・・・ッ!!」

吹雪は、雪女の首筋に顔をうずめて、
小さな声で泣いていた。
それを見た雪女は、吹雪を優しく撫でた。

「・・・士郎は、何も悪くねーよ」
「雪女・・・?」
「俺こそ謝らなくちゃならねーんだ。俺はきっと今まで、お前やみんなにいっぱい迷惑をかけてきたんだろうな。」
「・・・本当にごめんな。」
「雪女・・・!」

そして、雪女は持っていた猫柄のタオルで
吹雪の顔を、少し荒く拭いた。

「わっ!?」
「・・・だからな、泣くなよ。お前には笑顔がぴったりだ」
「・・・うん」

そうして、二人は笑いあった。

その時。

「いやっふーーーーう!!!」
「きゃっはーーーーっ!!」

海のほうから、楽しげな声が聞こえてきた。
よく見てみると、さっきの少年と柚流が、
楽しそうにサーフィンをしていた。

そして、二人は高く飛ぶと、
綺麗に数回、空中で回り・・・

スタッ

綺麗に着地した。

「・・・おー。また会ったな!」
「さっきのボーイズ達じゃない、偶然ね!」

そして、その少年は
吃驚している皆にこう言った。

「・・・サッカーって、砂浜でもやるもんなのか?」
「プラクティス?精が出るわね!」
「・・・ま、いっか。頑張れよ!」
「あれー?条介ってば、もう行くの?」
「あぁ!」
「そっかー」

そして、少年と別れた柚流ちゃんは、
サーフボード片手に、俺達に近づいてきた。

「えーと、柚流ちゃん・・・だっけ?」
「イエス!ミーの名前は霧留柚流!よろしくね!」
「あぁ、よろしく!」
「そういえばさ、砂浜でサッカーって、キツいんじゃないのー?足元安定しないし。」
「君も、サッカーするのか?」
「ん、まぁ出来るって言ったら出来るよ?」

そう言うと、柚流ちゃんは何か思いついたのか
手をぽん!と鳴らした。
そして、守のほうを向き・・・

「あ、そーだ!プラクティスだと思ってさー、ミーの技を受けてみない?」
「技?」
「ミーは一応、サッカーするから技も一つだけだけどあるのよね。ウォーミングアップぐらいにはなるんじゃない?」
「・・・そうだな!やってみるか!」
「じゃあ、柚流ちゃん。お願いできるか?」
「オーケーよ!」

そして。

「じゃあ、行っちゃうわよ!」
「あぁ、来い!!」

「なみのりドルフィン!!」

そう言うと、柚流は指笛を鳴らした。
すると地面から青色とピンク色のイルカが現れ体の間にボールを挟んだ。
そして、イルカの間に跨るように上に柚流が乗る。

地面がまるで水のようになり、
ものすごい速さでゴール前へ進んでいく。

風丸たちがボールを奪おうとするが、
柚流はサーフィンのように足でイルカを指示して動かし、軽くよけた。

そして、まっすぐにゴール前へたどり着くと、
勢いよく柚流はバック転のように回転し、
その反動でイルカはものすごい速さでボールとともにゴールへ。

「正義の鉄拳!!」

円堂は正義の鉄拳で止めようとしたが、
また失敗し・・・

「うわあああっ!!」

イルカとともにゴールに入った。

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