ひと時の団欒と狐がひょっこり
「あらら、大丈夫ーっ?」
「・・・な、なんとか」
「久しぶりに蹴ったせいか、力入れすぎちゃったみたいね、ソーリー!」
そう言うと、柚流は円堂に手を差し伸べた。
円堂はその手を掴み、立ち上がった。
「あー、思い出すなあ。ミーもなみのりドルフィンを習得するまで、凄く大変だったから」
「君も?」
「イエス!ユーも正義の鉄拳だっけ?その技を習得するのに必死なのね。」
「あ、あぁ・・・」
「ユーも諦めずに続ければ、きっと出来るわよ!」
「そうだよな!」
「そう、ネバーギブアップ!諦めないことが肝心よ!」
そう言うと、柚流はニカッといい笑顔で笑った。
そして・・・
「ねぇ、ユー達のプラクティス、ちょっと見せてもらってもいい?」
「・・・え、別にいいけど・・・」
「サンキュー!」
そう言うと、
柚流はベンチに近づき、座った。
すると、柚流は何かを思い出したような顔をして、
秋達に話しかけた。
「ユー達、エイリア学園と戦ってるんだって?」
「え、えぇ・・・」
「あいつら強いから大変じゃない?」
「でも、円堂くんたちなら勝てるよ!」
「そう?まぁ確かにガードボーイなら勝てるわね!」
「ガ、ガードボーイ?」
雪女が不思議そうに聞くと、
秋は少し怒った表情になってこう言った。
「・・・こーら、柚流!また悪い癖が出てるよ?」
「ソーリー!でもどうしようもないのよねー。」
「悪い癖?」
「そう!柚流ってば、人の名前を勝手に英語風に変えるのが好きなの。」
「じゃあさ、ユー達にもつけてあげよっか」
「夏未さんはサマーレディー!」
「さ、サマーレディー!?」
「春奈ちゃんはスプリングガール!」
「スプリング・・・」
「えーと、ユーは吹雪士郎君だっけ?」
「う、うん・・」
「決めた!ユーはブリザードボーイ!」
「えっ!?」
そして、柚流は雪女を見つけると、
まるでおもちゃを見つけた子供のように瞳がキラキラと輝いた。
「ヘイ、そこのクールボーイ!ユーのネームは!?」
「え、いや、俺は女・・・」
「ソーリー!クールガールだったのね。じゃあ、ユーのネームを教えて?」
「火月雪女だけど・・・」
「雪女?可愛らしいネームねー。」
そう言うと、柚流はあごに手を置いて、
考え出した。
「そうね、ユーはスノーガールがぴったりだと思うわ!」
「スノーガール!?」
「そうよ!雪女だからスノーガール!」
「え、ちょ、勝手に・・・」
「じゃあ、ミーはこれからそう呼ぶわ。よろしくね、スノーガール!」
「あ、あぁ・・・(くそぅ、どうにでもなれ!!)」
その時、後ろで
塔子とリカの大きな声がした。
「あかんあかん!あれはうちとダーリン達のラブラブ技や!」
「一度も出来てないけどね〜」
「こら、小暮っ!!」
「・・・せやせや!ダーリン達が許さへんわ!なー、ダーリン達!」
「いいんじゃない?」
「えっ」
「やってみたら良いと思うよ?」
一之瀬がそう言うと、
リカは俺のほうを向いて、叫ぶようにこう言った。
「・・・ダ、ダーリンは!?」
「んー、やってみたらどうだ?塔子と挑戦して成功したら、俺とでも出来るかもしれないし」
「ダーリンとうちやったら絶対成功するわ!じゃあ、成功したら・・・うちとバタフライドリームやってな♪」
「あぁ、約束してもいいぜ。」
「きゃ〜!!ダーリン優しい〜っ!」
「・・・(惚気かよ・・・)」
「何グズグズしとんねん塔子!さっさと練習するで!」
「・・・あ、あぁ・・・」
「あの二人で上手くいくんでしょうか・・・」
「・・・さあな・・・」
「意外に、上手くいったりして・・・?」
その時、柚流は腕についている防水時計を見て、こう呟いた。
「あ、そろそろタイムだ。条介起こさないと」
「タイム・・・?」
その時。
塔子の蹴ったボールが軌道をそれ、
日よけ代わりの少年のサーフボードに当たり、
そのままサーフボードは少年の真上に・・・
「「「「「あ」」」」」
「うわっ!?」
「Σじ、じょーすけーーー!?」
柚流は少年に駆け寄った。
それに着いていくように、円堂たちも着いていった。
「条介、大丈夫!?」
少年は起き上がり、円堂たちを見てこう言った。
「このボール、蹴ったのだれだ?」
「・・・あ、あたしだけど・・・」
すると、少年は塔子に近づき・・・
「ありがとな!!」
「へ?」
・・・お礼を言った。
「そろそろいい波が来る時間なんだ!寝過ごしちまうところだったぜ!」
「・・・起こす手間が省けて、逆にラッキーだったかしら?」
「だ、大丈夫なのか?」
「あぁ!そんぐれー、海の広さに比べればちっぽけな話だ!そんじゃな!」
「条介、待って!ミーも行く!」
「早く来いよ!」
そう言うと、柚流はサーフボードを急いで掴み、少年の後を追いかけた。
「じゃあ秋、またね!」
「う、うん・・・」
「な、なんだったんだ・・・?」
そして、また練習が始まった。
だが、リカと塔子のバタフライドリームはミス続きだった。
「何で出来ないんだよー!」
「タイミングがずれてるんじゃねーのか?塔子は焦るところがあるからな。」
「・・・確かに、そうかも・・・」
「まぁ、練習はいいけど無理すんなよ?」
「う、うん・・・」
「ダーリン、めっちゃ優しいやん!」
「わっと!?」
急にリカに腕をつかまれ、
雪女はバランスを崩して、砂浜に倒れこんだ。
「わっ、ダーリン大丈夫!?」
「・・・うえ、砂が口ン中入った・・・」
「雪女、大丈夫か?」
「砂浜だから怪我しなくて済んだけど、体がジャリジャリする・・・」
雪女は体についた砂をはたきながら、そう言った。
「あー、髪にまで絡んでるし・・・」
「ねぇ雪女くん。タオルあるから、そこのシャワー室でシャワー浴びてくる?」
「そうしようかな・・・」
雪女は秋からタオルを受け取ると、
シャワー室に走った。
そして。
「うう、ジャージが砂だらけで気持ちわりぃ・・・下着にまで砂入ってるし・・・」
さっき転んだせいで砂だらけの体を洗うため、
雪女はシャワー室に向かっていた。
その時。
「あれーっ?雪女さんじゃないっスかー?」
聞きなれたひょうきんな声が聞こえてきた。
「・・・狐狸!?」
「久しぶりっスね!」
「何で、こんなところに?ナニワランドに居たんじゃ!?」
「あー、あそこは辞めたんスよ。仕事はキツいのに、給料が安くて・・・」
「そ、そうなのか。」
「赤ちゃんにリスクをかけたくないっスからね!雪女さんも子供を持てば分かるっスよ。」
「そういうものなのか?」
「そういうものっスよ。」
そう言うと、狐狸は少し大きくなったお腹を軽く撫でた。
「・・・そういえば、雪女さんたちはどういう経緯でこの島に?」
「えっと、豪炎寺を探してて・・・」
「あー、あのクリームみたいな髪色した、髪の毛がつんつん立ってるツリ目の子っスか?」
「あ、あぁ・・・」
「・・・あちき、そんな子をどっかで見た気がするんスよね・・・」
「えっ!?」
「でも、詳しくは覚えてないんスよ・・・。あちき、鳥もびっくりするほど記憶力悪くて・・・」
「そうか・・・」
「でも、あの顔は結構印象に残るんで、忘れるはずはないんスけどねえ」
「確かに、あの髪型と顔は印象に残るよな」
「でも、見た気はするんスよ!もしかしたら、この島にいるかもしれないっスね。」
「可能性はあるな」
雪女はあごに手を当てた。
「見つかるといいっスね、豪炎寺さん。」
「そうだな・・・」
「そういえば雪女さん、今日はどうやって帰るつもりなんスか?確か船は1日1回しか出ないはず・・・」
「そうなんだよなあ。だから今日はこの島に泊まるしかねーんだ」
「雪女さんも大変っスねー。」
狐狸がそう言うと、雪女は何故シャワー室に向かっていたのかを思い出した。
「あ、そうだ!・・・そういや俺、体洗うためにシャワー室に行こうとしてたんだ!」
「そうっスか!じゃあ、邪魔しちゃったっスかね?」
狐狸はそう言うと、ショルダーバッグを弄り、
小さな小瓶を取り出した。
「これ、お詫びっス!」
「・・・これ何?すっげーいい匂い・・・」
「あちきの作った妖狐秘伝の液体石鹸・・・まぁ今っぽく言えば“ぼでーそーぷ”っスね。」
「ボディーソープ?」
「薬草とかを加えてあるんス。傷にも効くっスよ!」
「あ、ありがとう。俺ちょうど怪我してて・・・」
「よかったっスね!じゃあまた会いましょうっス!」
そう言うと、狐狸は麦藁帽子を深く被り、
白いワンピースを翻して、とことこと歩いていった。
「・・・ふーん、妖狐秘伝ね・・・」
今日の夜に使ってみようと思い、
雪女はジャージのポケットに、小瓶をつっこんだ。
そして体を洗い終えた俺は、守たちの居る砂浜に戻った。
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