ハーブの香りと星の光


・・・そして。

「今日は本当に疲れちゃったね!」
「そうですね!」
「日焼けしそうで怖かったわ」
「へえ、そんなの気にするのか?」

「(・・・何でだろう、すげえ場違い感が否めないんだけど)」

皆と同じ女の子の癖に、目のやり場に困る
雪女でありました(笑)

「あれ?リカは?」
「浦部さんなら、もう先に上がってるわ」
「・・・・あいつ、カラスだったんだな・・・。」

そうこぼしつつ、雪女はジャージを脱いだ。

「そう言えば雪女は、ブラとかつけないのか?」
「・・・ッ!?///」

塔子の爆弾発言(?)に、雪女は顔が真っ赤になった。

「つ、つつ、着ける胸がないだろ・・・///」
「そうか?」

驚きと恥ずかしさの余り、
雪女のタオルを持つ手はガタガタと震えていた。

「雪女くん、背中の傷は大丈夫?」
「・・・あ、あぁ。まだちょっと水とかがしみるけど、我慢できるくらいだから」
「そう、よかった。」

そんな話をしながら、雪女は昼に
狐狸から貰ったボディーソープの小瓶の
蓋のコルクを取り、蓋を開けた。

ポン!

ふわっ・・・

蓋のコルクを取って開けた瞬間、
ハーブのような、花のようないい香りがあたりに広がる。

香水のように強い香りだが、なぜか嫌には思わなかった。

その香りに、湯に浸かっていた塔子や夏未、
体を洗っていた春奈と秋が反応した。

「・・・あら?何だかいい香りがするわね」
「確かに!ハーブとか花とか・・・植物っぽいいい匂いがするな!」
「何だか、凄く癒されますね!」
「本当、凄くいい匂い!」

その声に、雪女は振り向いた。

「・・・あー、多分これだろ。」
「何それ?ボディーソープ・・・?」
「今日の昼に、知り合いの子から貰ったんだよ。薬草とかを混ぜてあるらしいぜ」
「へぇ・・・」

そう言いながら、雪女はそのボディーソープをスポンジにつけ、体を洗った。

スポンジと肌がこすれるたびに、
いい香りが広がる。

「それにしても、本当にいい香りね。」
「何が入ってるんでしょう?」
「・・・さあ。」

そう言うと、雪女はシャワーで
泡を流し、こう言った。

「・・・俺、のぼせたみたいだから先に上がるな?」
「えぇ、どうぞ。」
「んじゃ、ごゆっくり」

そう言うと、雪女は風呂場から出た。

脱衣所から部屋に戻る途中、他の部屋にいる女性の声が、雪女の耳についた。

「・・・ねぇ、春霞、瞳美!今日は星がよく見えるらしいよ?」
「そう?そりゃ都会よりは綺麗に見えるでしょ・・・じゃあ折角だし、一緒に見に行く?」
「あたしも、それに賛成!」
「じゃあ、あたしと瞳美と春霞でさ、星見に行こう!」
「おー!」

「(・・・星、か)」

雪女の頭に、一瞬吹雪の顔が浮かんだ。

「(・・・折角だし、ダメもとで誘ってやるか)」


・・・そして部屋に戻って。


「・・・ただいまー。」
「あ、おかえりなさい、雪女さん!」
「いい湯だったか?」
「あぁ、いい湯だったぜ?女子が上がったらお前らも入って来いよ。」
「そうだな!」

そう言うと、雪女は吹雪に近づいた。

「なぁ、士郎。」
「ん・・・?」
「今日はさ、星がよく見えるらしいぜ。折角だし、一緒に見ないか?」
「・・・」
「あ!嫌なら、別に無理しなくてm「い、行くよ!」
「そうか、じゃあキャラバンの所で待ってるぜ」
「う、うん。すぐ行くよ」

そう言うと、俺は靴を履いて外に出た。

わあっ・・・!」

キャラバンのところに行く途中で、ふと空を見上げると、
そこには、素晴らしい夜空が広がっていた。

「降るような星とは、よく言ったもんだけど・・・マジで降って来そうだな・・・」

ゴンッ!!

上を見上げながら歩いていたせいで、
雪女は、綺麗なまでにキャラバンにぶつかった。

「いっつ〜・・・」

ぶつけた額を撫でながら、
雪女はキャラバンにもたれ掛かった。

「・・・お、士郎!こっちこっち!」
「雪女、ごめん!遅くなっちゃって・・・」

もたれ掛かって数分もしないうちに、吹雪が息を切らしながらやって来た。

「あ、大丈夫だぜ?」
「そう?なら良かった・・・」
「それより、空を見上げてみろよ!」
「・・・ん?・・・わあっ!」
「な?凄い星空だろ!」
「凄い!星がいっぱい・・・」
「都会とかじゃ、滅多に見られね・・・くしゅんっ!!」

その時、雪女が大きなくしゃみをした。

「どうしたの?寒いの?」
「あー、湯冷めしちまったかな?」

雪女がそう呟くと、
吹雪は雪女の隣に行き、
自分のジャージを雪女にかけた。

「・・・ちゃんとジャージ着ないから。」
「すまねえ。」
「もう」
「・・・でも、お前と星が見たかったし、それに・・・」
「それに?」
「お前と、二人きりに・・・なりたかった、から」

そう言うと、雪女は真っ赤になった。
それを見た吹雪も同じくらい真っ赤になり、
雪女の正面から、がばっと音がつきそうなくらい、
勢いよく雪女を抱きしめた。

「・・・!」

雪女は一瞬驚いたが、
すぐに落ち着いて、優しく抱きしめ返した。

「士郎、やっぱ俺さ」
「・・・?」
「士郎と一緒じゃなきゃ、嫌だ」
「・・・僕も、雪女と一緒に居たい。」

吹雪の綺麗な目が、雪女を映し、
雪女の綺麗な目が、吹雪を映す。

「・・・好き。」
「ばか、俺も。」

そのまま、唇と唇が触れ合う。

「ん」

ちゅ、とリップ音を立てて、
唇が離れた。



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