転がってきたサッカーボール


そして次の日。

もうすぐ船の来る時間のため、みんな港で船を待っていた。

「・・・っつ・・・」

そして、見事なまでに腰を痛めた俺は、
傍のベンチに座っていた。

ちなみに昨日、帰ったのが結構遅くなり、
皆心配していたのだが、

まさか“あんな事”をしていたとは言えず・・・

とりあえず、
星に見とれていたら、
俺が坂に気づかずに転んで腰を打ち、
しばらく動けなかったから遅くなった・・・

とまあ、漫画並みにベタな言い訳をしておいた。

・・・それを信じる守達も守達たが。

「・・・だ、大丈夫・・・?」
「大丈夫に見えるか?このやろー・・・」
「ごめんってば・・・」

俺の腰を痛めさせた張本人(士郎)は
すっげえ元気だし・・・

しかも、昨日あんな事したから、
恥ずかしさで顔を直視できねー・・・

「・・・」
「ハーイ、スノーガール!調子がバッドみたいね?」
「まぁな・・・」
「そっかあ。そろそろシップが出るから行きましょ?」
「あぁ・・・」
「あれ?もしかして腰を痛めてるの?」
「き、昨日転んじまって・・・!」
「じゃあ、ミーの肩貸すわよ」
「いいのか?」
「オーケーよ!困ったときはお互い様ってやつ?」
「悪りィ・・・」
「別にいいのよ!」

そして、俺は柚流の肩を借りて、
船に乗った。

「じゃあ、ここからは僕が・・・」
「あ、ブリザードボーイ!サンキュー!」
「・・・う、うん・・・」

《あと五分で、この船は阿夏遠島を出航し・・・》

「やば、そろそろ行かなきゃ・・・」
「ありがとな、柚流!」
「こちらこそサンキューよ、スノーガール!」
「あぁ!」

そして、柚流は船を下りようとしたが、
途中で振り返り、こう言った。

「ブリザードボーイ!スノーガールが好きなのも分かるけど、愛しすぎるのも程々に・・・ね?」

それを聞いた瞬間、
俺と士郎の顔は真っ赤になった。

「シーユーアゲイン!」
「じゃあな!」

そして、俺達は阿夏遠島を出た・・・


「・・・羨ましいな、スノーガール。」
「何がだ?」
「スノーガール、ブリザードボーイに愛されてるってのが凄く伝わってくるから、羨ましいな、って」
「・・・なあ柚流、俺じゃダメか?」
「え?」
「サーフィン馬鹿な俺だけど、柚流と一緒に居たいから」
「そ、それって・・・」
「よかったら、俺と付き合ってくれ」
「・・・条介のばか、ミーはその言葉が一番欲しかったんだよ?」

雪女達が居なくなったあと、
こんなことがあったとは露知れず・・・。

そして、俺達は沖縄に上陸した!

「すげー!」
「綺麗!」
「おおっ!!」
「やっぱ沖縄、海って感じだよな」
「そうっスね!」

・・・そして。

「響木さんの情報だと、この辺りに居るんだろ?」
「そうらしいな。」
「だからキャンプを張って、徹底的に探すぞ!みんなで聞き込みだ!」
「聞き込み、楽しそうだな!」
「聞き込みって、刑事さんみたいっスね!」

そう言って、目金と刑事ごっこ(?)をノリノリでやる壁山に引いた・・・

「そ、そういえば夏未嬢。瞳子監督は?」
「後で来るって・・・。監督も目ぼしい情報は得られてないみたい・・・」
「そっかー・・・。」
「あれ、そういえば雪女くん、腰は大丈夫なの?」
「あぁ。湿布貼って大人しくしてたら、大分治ったぜ!」
「よかったね。」
「あぁ!」

「じゃあ探すぞ!もちろん、特訓も忘れずにな!」

「あたし達も、バタフライドリームの特訓を頑張らなきゃな!」
「えー・・・。うち、ダーリンとバタフライドリームやりたいし、泳ぎた・・・」

「そんな暇ないって言ってんだろ・・・?」

ゴゴゴ・・・と音が出そうなほどの恐ろしいオーラを出し、
塔子はリカをちょっと脅した。

「せっかく沖縄に来たんやし、ちょっとくらいええやんか・・・」
「俺は逃げねーからさ、塔子と練習しろよな?また今度付き合ってやるから」
「ダーリン、むっちゃ優しい!しゃーないし、塔子ー、一緒に練習しよー」
「しょうがないって・・・」

その時。

「あれ?」
「サッカーボール?」

・・・そのサッカーボールが恐ろしいことを巻き起こすとは、
まだ誰も知る由が無かった・・・。


「いつつ・・・」
「雪女、大丈夫?」
「あー、まだちょっと痛むだけだし、大丈夫だろ」
「そう?」
「そう。」

俺が士郎とそんな会話をしていると・・・

「ごるあああああ!!!!!」

ものすごい怒号と砂埃をあげて、
少年(・・・たぶん)がやってきた・・・のだが。

・・・割烹着に、箒とちりとりという、
なんとも微妙な格好をしていた。

「「「「あんちゃーん!!」」」」
「誰だ!?俺の弟達を泣かしたのは!」
「あのお兄ちゃん、ボール取ったぁー!」
「何!?」

少年がそう言うと、守はビクッとして、ボールを返した。

どうやら、ボールを取ってあげたつもりだったらしいが、
小さい子たちには、ボールを取られたと勘違いされたらしい。

「(・・・あー、頭痛い)」
「ごめんな!」
「・・・本当だろうな?」

そう言うと、少年は箒で鬼道のゴーグルを指した。

「大体、怪しすぎるだろ!その眼鏡!」
「・・・失敬な奴だな」

そう言うと、少年は去ろうとしたが、
守が呼び止めた。

「待ってくれ!」
「・・・?」
「俺達、みんながサッカーやってたの見て、ちょっと聞きたいことがあったんだよ!」
「・・・俺達は、雷門中サッカー部だ。」

俺がそう言うと、少年は
大きな声で、豪快に笑いだした。

「いやー、悪りィ悪りィ!お前らだったのか、宇宙人と戦ってるってのは」
「!」
「俺は土方雷電。お前らと同じ中学生だ!サッカー部に所属してる。」
「サッカー部!?」

少年・・・土方がそう言うと、
守の目がキラキラと輝いた。

「俺、円堂守!雷門中サッカー部のキャプテンだ。よろしくな!」

そして、土方と守は握手した。

「あんたが、円堂守・・・」
「あぁ!」
「・・・ところで、そこの白髪の奴はなんて言うんだ?」
「あ、あぁ!俺は火月雪女!よろしくな!(し、白髪・・・)」
「おー!お前が白蒼の雪女か!よろしくな!」

そう挨拶すると、土方は笑ってこう言った。

「・・・で、何だ?沖縄で宇宙人の襲撃予告でもあったのか?だったら力貸すぜ」

そう言うと、土方はボールを受け取り・・・

「地元荒らされるなんて、黙ってられねえからな!」

思い切り蹴った。

とたんに、ものすごい強風と砂埃が舞い上がる。

「な、なんてパワーだよ・・・!」
「あんちゃん、蹴っても止めてもすげーんだぜ!」
「へぇ・・・」

それから土方は、
鬼道の攻撃を「スーパーしこふみ」という技で止めた。

「すげーな!」
「こんなに凄い人ですし、もしかしたら炎のストライカーを知ってるんじゃ・・・!?」
「炎のストライカー?」

きょとんとする土方に、鬼道が教えた。

「俺達は、この沖縄に炎のストライカーを探しにやってきたんだ」
「知ってる?俺達が今探している仲間かもしれないんだ!」
「き、聞いたことねーか!?」

そう俺が言うと、土方は少し考え、
そしてこう言った。

「・・・いや、聞いたことねぇな・・・」
「そうか・・・」



・・・そして俺達は、土方と別れ、
海水浴場に聞き込みに出かけた。

数人に分かれ、
俺は土門と士郎と一緒に聞き込みをすることになった。


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