俺たちはいつも一緒だろ?


「監督・・・今、なんて?」
「「ゴールキーパーをやめろ」と言ったのよ」
「そんな!急にそんな事言われても!」
「・・・」

「あたしは反対です、監督!」
「俺もだ。雷門のGKは守しかいねぇよ」
「だよな・・・むちゃくちゃだよ」
「どういうことですか、監督!!」

「・・・勝つためにキーパーをやめてほしいの」
「勝つために・・・?」

その時、鬼道が口を開いた。

「俺は監督に賛成だ」
「鬼道!?」
「おま、何を・・・」
「俺たちは最強にならなくてはならない。必殺シュートを撃つために前に出るために、ゴールを開けるのは危険すぎる。そこが弱点だ」
「・・・なーるほど!」
「弱点は克服しなければならない。そうして初めて、俺たちは完璧であり、地上最強を名乗ることができる」

その時、塔子が大きな声でこう言った。

「じゃあ、円堂にどうしろって言うんだよ!」
「代わってもらうのさ。円堂に」
「!?」
「円堂、お前はリベロになるんだ」
「リベロ!?」
「・・・鬼道くんも、同じことを考えていたみたいね」
「そうか、そうなのか・・・」
「決めたよ。俺、やってみる。勝つために・・・強くなるために変わる。」
「守・・・」

「でも、守がリベロとなると・・・誰がGKを?」

「立向居がいる!」
「えっ、俺ですか!?」
「・・・円堂、そんなに簡単に決めちゃっていいのか?」
「大丈夫だ!俺さ、上手く言えないけど・・・立向居から可能性を感じるんだ!」
「可能性・・・か。」
「で・・でも、俺が・・・雷門のゴールを守るんですか?」
「私からもお願いするわ、立向居くん」
「監督・・・」
「円堂の後継者には、お前が一番最適だ」
「はっ、はい!!ありがとうございます、監督!ありがとうございます、円堂さん!」
「よかったな、立向居!」

そう言って俺が立向居の肩を叩くと、立向居は本当にうれしそうに笑った。

その時、監督はさっきの薄笑いから真剣な表情に変わり、
雪女に向かってこう言った。


「雪女くん、貴方はしばらくフィールドに出るのを禁じます」


「えっ・・・!?」

「練習だけしなさい。試合中はマネージャーとして木野さん達の手伝いをしてもらいます」
「ど、どうしてですか!?なんで俺が・・・」
「・・・どうしてもよ」

そう言うと、監督は先にキャラバンに乗り込んでしまった。

「しばらくフィールドに・・・出れない・・・?」




どうして?

どうして?


おれ、ひっしにがんばったのに。


なんで?

なんで?


おれ、もうひつようない?




おんなのこだから?

かんぺきじゃないから?



どうして?

なんで?




・・・どう、して・・・?






俺の中で何かが
ひび割れる音がした。


「おい、雪女・・・」
「大丈夫か?」

ピクリとも動かない雪女を見て、
心配した円堂や綱海が声をかけた。
そうすると雪女は振り向いて、こう言った。

「あー、フィールドに出るの禁止されちまったな!何でかは知らないけどよ、きっと監督の事だから、何か策があるんだろうな!」
「雪女・・・」
「さすが監督。俺たちの1手先2手先を読んでるんだな〜!」

そう笑顔で言うと、雪女はキャラバンの手すりに手をかけた。

「みんな、そろそろ行こうぜ!稲妻町が俺たちを待ってる!」

「雪女・・・」


みんなは心にわだかまりを抱えながら、
キャラバンに乗り込んだ。

稲妻町へ向かうキャラバンの中は意外と騒がしかった。

窓の外から見える鉄塔を見てはしゃぐ立向居と円堂。

お菓子を分け合う綱海と壁山。

寝ている目金の顔に落書きする小暮と、それを見て呆れる土門。

相変わらず(一方的にだが)イチャイチャしているリカと一之瀬。


だが、雪女だけは
窓のふちに頭を乗せて、ぼーっと外を眺めていた。
ピクリとも動かず、目線もどこにあるかも分からない。





・・・俺、必要なくなっちゃったのかな。


そうだよな、試合に出れば最終的に気絶したりしてるもんな。


俺はきっと、雷門のお荷物になっちゃったんだろうな。


そうだよな。


攻撃もできないし、守ることもできない。


そんな奴、見限られて当然だよな。



・・・でも・・・



でも、俺・・・







雪女がそんなことを考えているうちに、
キャラバンは稲妻町についた。


「みんな、明日から新しい体制で行くわよ」

円堂や瞳子の声が耳に入るが、どうも体が動いてくれない。

「(体が、重い・・・)」

そうこうしていると、誰かが雪女のカバンを
雪女の膝の上に置いた。

「士郎・・・」
「行こう。君のお母さんが外で待ってた」
「・・・母さんが?」

だるい体を起こし、キャラバンから降りてみると、
確かにそこに美幸が立っていた。

「よう雪女。お疲れ様!」
「母さん!」
「さっき言ったろ?あいつらに「俺んちに来い」ってな!」
「・・・」
「とにかく、お帰り。雪女」
「あぁ、ただいま。」

「(・・・)」

吹雪は楽しそうな雪女と美幸を見て、
少し悲しそうな顔を浮かべた。

「雪女、お前の彼氏は誰なんだ?」
「っ!?そ、それは・・・」

美幸にそう聞かれると、雪女は顔を少し赤くして、指をいじった。

「・・・き、ろ・・・だ」
「ん?」
「ふ、吹雪士郎・・・だよ」
「あぁ、あのグレーの髪した奴か。どこにいるんだ?」

そう言うと、美幸はあたりを見回した。

「母さん、何を・・・」
「雪女!ところでー・・・」

雪女が美幸を止めようとした瞬間、
円堂が話しかけてきたので、雪女はそちらに気を取られてしまった。

そして美幸は、キャラバンのそばでうつむいている吹雪に声をかけた。

「・・・吹雪、士郎か?」
「えっ・・・あ、はい・・・」
「雪女から聞いた。雪女と付き合ってるらしいな?」
「は・・・はい・・・」
「そんなにビクビクすんなって!取って食う訳じゃねーんだからよ!」
「はい・・・」

「正直に言ってくれ。雪女をどう思ってる?」
「・・・雪女は僕にとって、とても素晴らしい女の子だと思ってます。優しいし、僕なんかより・・・強いし・・・」
「雪女は弱いよ。昔も、今もな。」
「え?」
「でも、お前と出会ってから、あいつが明るくなった気がするんだ。」
「・・・」
「昔は、あんなに心の奥底から笑わなかった。」
「え・・・」
「兄貴を・・・彰人を亡くした日から、あいつはずっと上辺だけ笑ってた。声も、顔も。」
「上辺・・・だけ・・・」
「心の奥底では泣きっぱなしだったに違いないさ。」

そう言うと、美幸は吹雪の肩を軽く掴んだ。

「・・・あいつは、雪女は俺の大切な娘だ。だけどお前になら託せる。」
「美幸さん・・・」
「お前も、雪女も、今はむちゃくちゃに苦しいだろうと思う。だが、お前らならそれを乗り越えられると信じてるぜ。」
「・・・はい!」
「俺の娘を、よろしくな」

そう言うと、美幸はどこかに行ってしまった。
その後、雪女が急いだ様子でやってきた。

「士郎!俺の母さんに何か言われたか?」
「・・・雪女を、よろしくって言われたよ」
「あぁもう!母さんってば余計なことを・・・」

その言ったとき、士郎が俺の腕を掴んだ。

「しろ・・・?」

その瞬間、唇にふにっとした感覚が。
唇を塞がれたと気づくまで、さほど時間はかからなかった。

「んっ・・・!?」

数秒後、唇が離される。
唇と唇の間に銀の糸が出来て、名残惜しそうに切れた。

「士郎、な・・・何すんだよ!守たちもいるのに!!」
「・・・」

士郎は何も言わず、俺を抱きしめた。

「士郎・・・?」
「夢を、見たんだ。」
「夢?」
「雪女がエイリア学園に、連れていかれる夢・・・。」
「そんなの、ただの夢だって。」
「でも、妙にリアルだったんだ!だから怖いんだ・・・!」
「・・・」
「雪女が居ないと、僕は何もできないし完璧でもない!雪女は僕のすべてなんだ!」
「・・・それは、違うぜ。」

そう言うと、雪女は吹雪を抱きしめ返した。

「俺たちはいつも一緒だろ?」
「・・・」
「それに、もし俺がエイリアに行ったとしても、俺は士郎を待ってる。助けに来てくれるまで。」
「雪女・・・」
「分かったら、一緒に行こうぜ。」
「・・・うん。」

そういうと、二人は手をしっかり握り、
一緒に歩きだした。

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