再びそれは訪れた


そして夜。
みんなで守の家でバーベキューをした。
・・・何故か母さんも一緒に。

「・・・なんで、母さんもいるわけ?」
「ははっ、温子と俺は親友でな!お前たちの様子を見るついでに温子に食材届けに来たんだ!」
「美幸のおかげで、楽しい夕食になりそうよ♪」
「俺も誘ってもらって、悪いな!」
「いいのよ!」

そんな調子で、みんなでガヤガヤと盛り上がっていると・・・

「・・・お邪魔、します」
「あぁ、吹雪!待ってたぜ!」
「吹雪さん!」
「遅かったな!ほら、荷物置いといてやるから座った座った!」
「・・・。」
「バーベキューはサバイバルだからな!早くしねぇと肉がなくなるぞ?」
「つーなぁーみーくぅーん?お前が一番肉食ってんだろうが!」
「Σいってぇ!!」

美幸の鉄拳が綺麗なまでに綱海の頭に・・・。
それを見てみんなが笑っていたが、
吹雪だけは浮かない顔をしていた。

「・・・なぁ士郎!これ食うか?」
「えっ・・・?」

そんな中、雪女がすっ、と
皿に乗った卵焼きを差し出した。

「俺が作ったんだぜ。沢山あるから遠慮せずに食えよ!」
「あ・・・ありがとう。」

そう言うと、吹雪は卵焼きに箸を入れ、
口に入れた。

「・・・おいしい!」
「へへっ、疲れてるんじゃねーかと思って、甘く作ってみたんだ。」
「すごくおいしいよ、ありがとう・・・雪女。」
「どういたしまして。」

「(・・・幸せそうで、よかったぜ。)」
「美幸?」
「ん?」
「どうしたのよ、急にニコニコしちゃって。」
「将来の俺を見た・・・とでも言っとくか」
「何よ、それ。」


そして夜は、ゆっくり更けていった。

そして次の日。

「じゃーん!」
「「「おおっ!!」」」

「雷門イレブン大変身ということで!」
「円堂くんと立向居くんの新しいユニフォームを用意したわ」

秋ちゃんと春奈ちゃんと夏未嬢が、ユニフォームをもってこう言った。

「ありがとな!」
「ありがとうございます!」

そして、着替えた二人は・・・

「よく似あってるぜ、立向居!」
「そ、そうですか?」
「守も結構似合うな、それ」
「ありがとな、雪女!」

「何だか新鮮ですね!」
「そういえば俺、守とは結構長い付き合いだけど、あのユニフォーム姿は見たことないんだよな。」
「へぇ。」

「立向居、こっち向け!」
「はい?雪女さん、何ですk・・・」

カシャッ!

そのシャッター音の正体。
それは、雪女の青色のケータイから出た音だった。

「な、何するんですか!?」
「・・・何って、写メだよ写メ。祈莉ちゃんに送ってやろー!」
「ちょ、雪女さん!!」
「いいじゃねぇか!」
「それくらいにしといてやれ、雪女。」
「ケチー!」

「立向居!」
「はいっ、円堂さん!お、俺・・・マジン・ザ・ハンドをもっと強くして、鉄壁の守りになります!!」
「もちろんマジン・ザ・ハンドの特訓も大切な課題だけど、お前にはやってほしいことがあるんだ。」

そう言うと、円堂は立向居に
秘伝書を開いて見せた。

「円堂さん・・・これは・・・?」
「俺からお前に、この究極奥義を託す。」
「い、いいんですか!?」
「あぁ。」
「えっと・・・円堂さん・・・」
「ん?」
「よ、読めません・・・」
「あり?」

「(・・・当たり前だっつーの)」


そうため息をつく雪女が、いたとかいなかったとか。


そうしていろいろあり・・・練習が始まった。


だが雪女は、秋や春奈の手伝いに忙しく働いていた。

「えーと、これがこうだったかな・・・」
「雪女くん、ごめんね。手伝わせちゃって」
「雪女さんも練習したいんじゃ?」
「いいんだよ、俺は今ストップかけられてるし。マネージャーの仕事も覚えておきたいし」



・・・そう。


俺は“女”だから・・・


きっとみんなが世界に出ても、俺はたった一人だけ取り残されてしまう。


俺が必死に頑張っても、

“性別”だけはどうにもならないから。


顔が男っぽくっても

声が男っぽくっても

言動や性格を男らしくしても


俺が“女”であることに変わりはない。



だったらせめて


みんなを影から支えていたいんだ。



そう考えていると、
何故か涙がぽろ、と零れて、
運んでいたタオルにシミを作った。


「あれ・・・何で涙が・・・」


雪女は涙を袖で荒く拭って、
仕事に戻った。

そうこうしているうちに、二日が過ぎた。

「(時の流れって早いよなー。この二日のうちに守はメガトンヘッドをちゃんと身に着けるし)」

そして今日は、帝国学園で練習をすることになっている。

「雪女、今日はどうするんだ?」
「へ?どうするって、何がだ?」
「練習するのか、しないのかだよ!」
「・・・んー、今日も秋ちゃんたちの手伝いしようかな」
「そっか。練習したくなったらいつでも言えよ!」
「あぁ。悪いな。」

誘ってくれた守には悪いけど、
今の俺は、とてもじゃないけどボールを蹴る気にはならない。


・・・何だか、ボールが怖くて。


「(監督のあの言葉が、そんなにショックだったのかなー・・・)」

そんなことを考えながら、
俺はジャージのチャックをちゃんと上まで上げた。

そして。
みんなウォームアップを始める中、
秋ちゃんや俺たちはタオルやドリンクを用意していた。

その時、つかつかと照美が俺に近寄ってきた。

「照美?俺に何か用か?」
「君はどうして練習をしないんだい?」
「・・・監督に、試合止められてっからな。マネージャーの手助けするぐらいしかやることねーんだ」
「・・・」
「あ、悪ィ。・・・俺、仕事に戻るな。人数増えたから忙しいんだ!」
「悪かったね、引き留めて」
「いやいや、こっちこそゆっくり話もできなくてすまねぇ。」

そう言って、雪女はタオルを抱えて走り出した。

「・・・」


そして、帝国との練習が始まった。

「デスゾーン、上手くできるといいな。」
「そうね!」

その瞬間、頭にチク、と痛みが走った。
その痛みはどんどん強くなる。

「(またか・・・!?)」

俺はすくっ、とベンチを立ち、
ふらふらと歩き始めた。

「雪女くん?どこ行くの?」
「ちょっと俺、手洗いに行ってくる・・・」
「う、うん。そっか。」


そして雪女は、人気のない廊下に座り込んだ。

「い・・・・た・・・・!!」

頭を押さえ、歯を食いしばる。
だが頭痛は絶え間なく襲ってきた。

「・・・!!」

その時・・・

《・・・少しだけだけど、エリーゼから逃がしてあげる・・・》

女性の優しい声が後ろから聞こえたと思えば、
ふわっ、と優しいものが雪女を包んだ。

すると、さっきまでの頭痛が嘘のように、
ぴたりと止んだ。

「え・・・今のは・・・?」

雪女は後ろを振り返るが、
そこには誰もいるはずもなく・・・。

「・・・?」

首をかしげて怪しむも、
雪女は気にせずベンチに戻った。



・・・一体、あの声は何だったんだ?

何だか、懐かしいような声だったけど・・・

さっきの事を思い浮かべながら、ベンチに戻ると、
佐久間達と守たちが何か話していた。

「どうしたんだ秋ちゃん。あいつらあんなところに固まって」
「円堂くんたち、デスゾーン2が出来たの!」
「なんだって!?やったなあいつら!」

そうニコニコしていると、空が一瞬暗くなった。

そして大きな音がして、すさまじい風とあたりに紫色の煙が。

「・・・?!」

おかしい、と思って振り返ると、そこには
ガゼルとバーンが立っていた。

「「我らはカオス!」」
「紅蓮の炎、プロミネンス!」
「深淵なる冷気、ダイヤモンドダストが融合した最強のチーム!」

「我らカオスの挑戦を受けろ!」
「宇宙最強が誰なのか、証明しよう!」

「そんないきなり言われて、そんな挑戦受けられるか!」
「ほう、ならば断わると?」
「もちろんだ!」
「ならば、火月雪女を渡してもらおう」

「「「!?」」」

「俺を!?」

「まぁ、もしこの挑戦を受けてお前らが負ければ、同じように火月雪女を渡してもらうがな」


「・・・仕方ねぇ、受けて立つ!」
「試合は二日後、場所はここ、帝国スタジアムで行う!」

そうガゼルが言うと、ボールが眩しい光を放ち、
ガゼルたちは消えてしまった。

「・・・俺を、渡せ・・・?」


雪女の手は、ひどく震えていた。

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