恐れと心のきしむ音


そして次の日。

「よーし!今日も練習がんばるぞ!」
「「「おーーっ!!」」」

元気よくみんなが返事をする中、
雪女はベンチでガタガタと震えていた。

「(俺のカンが当たった・・・!嫌だ、絶対に嫌だ・・・!!)」

手や体をガタガタと震わせ、
その震える手で頭を押さえていた。

その瞬間、彰人の頭に声が響く。
固く閉じた目を開くと、目の前に彰人が立っていた。
だが、誰にも見えていないようで、
誰も彰人を気にしなかった。

《雪女・・・》

「にぃ、ちゃ」

《大丈夫だ、俺が守るから。俺が・・・》

「駄目だ!兄ちゃんは・・・」

《・・・何も、何も言うんじゃない》


彰人の悲しそうな目を見て、
雪女は何も言えなくなった。


《もし、お前が辛くなったなら、意識を手放せばいいんだ。目を瞑って耳をふさげばいい》

「でも、そんなんじゃ」

《俺がその間、入れ替わってお前の体でなんとかしてやる》

「駄目だ!これ以上迷惑かけられない!それに兄ちゃんは、俺の体で動き回りたいだけなんだろ!?」

《・・・これだけは誓って言う。前みたいに悪意はない。》

「本当に?」

《あぁ》

「・・・」

《もし、心が完全に壊れそうなほど辛くなったら、もう何もかもから手を放すんだ。》

「手を、放す・・・」

《・・・そう。そして少し眠るんだ。その間になんとかしてやるからな》


そう言うと、彰人の手がス、と雪女の頭を撫でた。
生きているぬくもりではなく、ひやりとした
無機物のような冷たさ。それでも、少し幸せになった。
その瞬間、今まで体を駆け巡っていた悪寒は取れ、
手や体の震えも止まった。


「兄ちゃん」

《だから怯えるな。俺はいつもそばに居る。たとえ俺が消えてもな》

「・・・あぁ。」


そう言って一瞬だけ瞬きをすると、
目の前にいた彰人は居なくなっていた。

「・・・怯えるな、か。」




そろそろ俺は、大きくならなきゃいけない。


小さくなって泣いていた自分を捨てなきゃいけない。



・・・でも俺は、どうすればいいんだろうか。





心の軋む音が、聞こえた気がした。



そして次の日、帝国スタジアム。

もうあと数分のカオスとの試合に向けて、みんなはウォームアップをしたり、
俺達マネージャー組も忙しく働いていた。

「そろそろだな」
「・・・」
「雪女、怯えているのか」
「・・・正直、超キツいぜ」
「大丈夫か?怖いなら・・・」
「守、心配してくれてありがとな。」
「・・・」
「でも俺はお前たちが勝つと信じてるから、怯えるのはやめにするって昨日決めたからさ」

そう言うと、雪女は薄く笑った。

「そうか。」
「・・・あぁ。」

そう言ったその瞬間、
空から黒いボールが落ちてきて、あたりに紫色の煙が充満した。

「来たか・・・!」


そして、煙が晴れるとカオス全員が現れた。

「おめでたい奴らだな!」
「負けるとわかっていながら、ノコノコとやってくるとは」
「・・・」
「円堂守!宇宙最強のチームの挑戦を受けたことを、後悔させてやる!」
「そして、火月雪女を我らエイリア学園の仲間にする!」

そうバーンが言った瞬間、雪女の肩がビク、と揺れた。

「負けるものか!俺にはこの地上最強の仲間たちがいるんだ!それに、雪女も俺の大切な仲間だ!連れて行かせはしない!」

「さぁ、どちらが勝つのかしら・・・?」

そう、グラースが薄く笑いながらそう言った。


そして、試合開始のホイッスルが鳴った・・・


豪炎寺からのボールをつなぎ、攻め上がる雷門だったが、
塔子がボールを受け取り、向かおうとした瞬間
ドロルが塔子からボールを奪いに来た。

「取られてたまるか!」

と、よけようとした瞬間ドロルにボールを奪われた。

「!?」
「(前は避けられたのに!?)」

そしてそのまま土門や壁山をかわし、
一気に上がっていく。

「ちょっと、前とは全然違うじゃないですか!」
「・・・スピード、パワー。混成したせいでパワーが上がってるとなると厄介だぞ」
「スピードまで!?」
「・・・そんなん、ありえへん!あれから何日も経ってないで・・・」

そしてそのままボールはドロルからガゼルに渡った!
しかも隣にはグラースが並んで走っていた。

「しまった!あいつらいつの間に!」

「・・・今度こそ教えてあげます」
「凍てつく闇の冷たさを!」

「「ドリフト・アイス!!」」

そう叫び、二人でボールを蹴ると、
周りから水と大きな氷の塊が押し寄せ、
大きな塊が水とともにゴールへ!

「立向居!」

「マジン・ザ・ハンド!!」

立向居はマジン・ザ・ハンドで止めようとしたが、
ボールが当たった瞬間、マジンは崩れて
そのままボールはゴールに。

「「「!?」」」

そして、先制点を取られてしまった・・・。

その瞬間。

「申し訳ございません、ガゼル様!私、本気を出せなくて、あの程度しか・・・」

「(あの程度・・・!?)」

「本当ならばもっと威力が出せるはずなのに、私の失敗で・・・」
「気にすることはない、実際に点は取れた」
「申し訳、ありません・・・」

「(思った通り、あいつらはこの試合に全てをかけている・・・。)」

そして、試合再開。

豪炎寺が攻め上がっていくが、クララたちに阻まれる。

「アフロディ!」

そしてボールはアフロディに渡り、
そのボールをネッパーとヒートが狙うが・・・

「ヘブンズタイム!」

そして、時が止まる。

・・・しかし!

「へっ!」
「!?」

ネッパーは動き出し、照美からボールを奪った。

そしてそのまま、ボールはバーンに!

「アトミックフレア!!」

「今度こそ!マジン・ザ・ハンド!!」

しかし、またボールが当たった瞬間、
マジンは崩れ、そのままボールは立向居と一緒にゴールへ。


そしてカオスの猛攻は止まらない。

3点、5点、ついには7点にまで!

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