とうとう割れた心


とうとう俺は吹っ切れた。

「監督!」
「何かしら」
「俺を、試合に出してください!」
「・・・駄目よ」
「仲間が傷ついていくのを、黙って見ているわけには行かないんです!!」
「・・・」

固く手を握りしめ、そう叫ぶ雪女。

その時、瞳子以外誰も分からなかった。
雪女の背中から、わずかに、本当にわずかに
純白のオーラが出たのを。

それを見て、瞳子は一瞬戸惑ったが、
一つだけ大きなため息をついて、こう言った。

「・・・後半から出るのを許可します」
「あ・・・ありがとうございます、監督!」

「(・・・)」


そして・・・

「クララ!」
「ええ!」

クララからボールを受け取り、グラースがゴール前に上がっていく。

「行かせない!!」
「・・・へぇ?」

「ザ・タワー!!」

しかし、グラースはザ・タワーの雷を華麗に避け、
そのままゴール前に。

「アイシクルブレイク!!」

そしてアイシクルブレイクを放った!

立向居はまた、受け止めきれずにボールと一緒にゴールへ入った。


・・・今の時点で、点数は0対10。
雷門イレブンは崖っぷちに追い込まれ始めていた。

しかしそれでも、カオスの猛攻は止まらず、
またバーンにボールが渡った。

「紅蓮の炎で焼き尽くしてやる!アトミックフレア!!」

その瞬間、円堂がゴール前に立ちふさがり、
決死のメガトンヘッドで止めた!


その円堂の気迫に奮起したのか、
みんなの顔にわずかだが、元気さが蘇った。

カオスのシュートをことごとく防いで、
付け入るスキを与えなかった。

だが、点を入れようとすると、
イグナイトスティールやフローズンスティールに阻まれ、
ボールがなかなかつながらない。

しかし、そのうちに・・・

「ネッパー!」
「・・・ヒート!」

そばにドロルがいたにも関わらず、
ネッパーはヒートにボールを回した。

「(混成チームがゆえに、仲間意識が薄いのか・・・)」

その隙をねらい、鬼道がボールを奪う!

そしてそのまま、円堂と土門と鬼道が上がっていき、
デスゾーン2を放った!

「ぐあっ!」

そしてそのままボールはゴールへ。
雷門はようやく1点をとれた!

そして試合再開。

「調子に乗ってんじゃないわよ!」

再開した瞬間、グラースがボールを奪い、
そのままゴールへ突き進む!

「止める!」
「・・・ふんっ」

グラースの前に鬼道が立ちふさがる。
そのまま鬼道をかわすのかと思えば・・・

「バーン様!」

グラースはバーンにボールを渡した。
そしてそのままバーンはゴールへ。

「行かせない!!」

円堂が止めに行くが、バーンは難なく
円堂の上を飛び越え・・・

「アトミックフレア!!」

「立向居!!」

「・・・ムゲン・ザ・ハンド!!」

失敗続きだったムゲン・ザ・ハンドが今、
成功した・・・!!

「で、できた!!」

そしてその瞬間、前半終了のホイッスルが鳴った。

「立向居!」
「やったな!!」
「はい!」

その瞬間

「ああああああああああ!!!」

グラースの悲痛な叫びが響いた。

「グラース!?」
「グラース様!?」

グラースは頭を抱え、ゴロゴロと転がる。

「あ・・・・ああ!!」
「大丈夫か!」

ガゼルがグラースに手を伸ばした。

「お・・・ちゃ・・・もう・・・嫌!!」
「!?」
「わた、し・・・こん、な事!望んで・・・ない!」

首をぶんぶんと振り、涙目で訴える。

「あ、頭・・・割れそ・・・う!!」
「クララ、アイシー!グラースを!」
「はっ、はい!!」
「・・・私、あのま・・・まで・・・よかった、のに!どうし、こんな・・・こと・・・に!?」

そう叫ぶと、グラースはクララの腕の中で気を失った。

クララとアイシーはグラースを抱え、
走ってどこかに行ってしまった。

「(・・・)」

ガゼルの瞳に、わずかに曇りが見えた。

「(・・・「こんな事、望んでいない?」)」

後半が始まる前にはクララとアイシーはいつのまにか戻ってきていて、
後半戦が始まった。

そして後半。

カオスのキックオフで始まり、ボールはネッパーに渡る。

しかしまた、リオーネが近くにいるのに
ヒートにパスを回した。
すかさず塔子がボールを奪う。

「雪女!」
「おうよッ」

そしてそのままDFをかわし、ゴール前へ。

「行くぜ!アイススピアー!!」
「バーンアウ・・・うわああっ!」

そして、また1点をもぎ取った。

そしてそのまま、ゴッドノウズや爆熱ストームなどで
どんどん点を取っていき、
気が付けば、いつのまにか7対10になっていた。

しかし。

「行くぞ!」
「あぁ!」

ガゼルとバーンが試合再開早々に飛び出し、
一緒に、ものすごい速さでゴール前に向かった。
止めようとするDF陣を難なくかわし、
そのままゴール前へ。

そしてそのまま同時に飛び上り・・・

「「ファイアブリザード!!」」

「(!)」


シュート速度に追いつくように、
二人の後ろから雪女も走った。

なんとかギリギリで間に合い、
雪女はそのまま、サクリファイトの体制になる。

「止められて、なるものか!!」

「絶対に止めてやる!!」





「サクリファイト!!」

その瞬間。

雪女の背中から出た白いオーラが、雪女全体を包んだ。

その瞬間、いつもよりまぶしい光を放ち、
白い羽と天使が現れた。

天使の顔はいつもより穏やかで、とても美しく見えた。


「(何だよ、これ・・・?)」

「(・・・あれ、すごく体が、軽い・・・?)」

そしてそのまま、ボールが胸にあたる。
いつもは当たった瞬間に、わずかな痛みが走るのに、全然痛くない。
まるでボールが羽毛のようで、余裕で受け止められる。

「(何で俺、こんな力を・・・?)」

そう考えているうちに、ボールはゆっくりと遅くなり、
ポト、と軽い音を立てて落ちた。

そして雪女は、羽がゆっくりと羽ばたき、
ふわりと軽く地面に降り立った。

「えっ・・・」



ピーーーー・・・


その瞬間、無情にも試合終了のホイッスルが鳴った。

点数は7対10・・・
雷門イレブンがカオスに負けたのは明らかで。


俺の体から、一切の力が抜けた。


「・・・やはり、君は只者ではなかったようだな」
「約束通り、エイリア学園に来てもらうぜ」


・・・俺が、エイリアに・・・?



青色の瞳がぐらぐら揺れる。

世界がぐるぐる回る。




俺のすること?


士郎を、守ること。



俺がこの世界にいる意味?


雷門のみんなを、守ること。








その、どちらも守れなくなった。









俺は


俺は


おれは




「・・・俺は、何なんだ?」


「俺の、存在する意味は?」


「何のために、この世界に来た?」


「俺は」

「俺は?」




「おれ・・・は・・・」



両目の色がじわじわと、
青色から紫に変わっていく。

右目のタトゥーは薄くなっていき、
何もなかったはずの左目の下に、黒い模様が浮き出してくる。


「なんで・・・どうし、て?」


「・・・・あ・・・・」


頭を抱え、首をぶんぶんと振る。


「俺は」

「俺は・・・」

「おれ・・・は・・・」






「俺は何のためにここにいるんだーーーーーーーっ!!!!!」







手を、放した・・・

ぐらり、

一瞬揺れたかと思えば、雪女はゆっくりと地面に倒れた。


「雪女っ!?」
「雪女先輩!?」


みんなが焦って駆け寄ろうとした瞬間、
雪女の指がぴくり、と動いた。

そして、こう呟いた。







「・・・やれやれ、とんでもないことになっちまったみてぇだな」









その声は、今の状況に似つかわしくない、
ひょうきんな声だった。


「雪女・・・?」


「よう、初めまして・・・というべきだろうか?」


「雪女じゃ、ないのか!?」
「どういうことなんだ!」



「あなたは誰なの!?」



瞳子がそう問いかけると、雪女・・・否、
“彰人”はニコ、と笑い、
綺麗にお辞儀してこう言った。



「俺の名前は火月彰人。雪女の双子の兄貴だ。お見知りおきを・・・」


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