兄との遭遇


「火月、彰人・・・?」
「じゃあ、雪女はどこにいるんだ!?」

そう鬼道が言うと、彰人は手を胸に当ててこう言った。

「雪女なら、ここにいるぜ。“俺の心”の中に・・・な」

「どういうことだよ!?」


「・・・簡単に言えば、俺はもうこの世には存在していない。」
「存在しない・・・」
「じゃあ、死んでるってこと!?」
「当たりだ。」
「でも、なんで急に・・・」
「・・・急にじゃねーよ。お前らは何度も俺に出会ってるんだぜ?」
「出会ってる?」
「野生中、御影専農・・・。あぁ、最近だったらジェネシスあたりだな」
「!」
「じゃああの時、雪女くんが変わったように見えたのは・・・!」
「そう、俺と雪女が入れ替わったから。」

「な、なんで雪女はここに居なくて、彰人がここにいるんだ!?」


「・・・あいつが、すべてを手放したから」


「手放した?」


そう円堂が言うと、彰人は少し悲しそうな顔になってこういった。

「・・・あいつは、一人ですべて背負おうとしたんだ」

「俺の活躍の分もみんなに期待されて、退くことも、誰かを頼ることもできず・・・」


“雪女、やっぱお前すげーよ!”

“お前のサクリファイトがあれば完璧だ!”

“アイススピアーとかアイスバードで、ガンガン点数決めてくれよ!”


「とうとう耐えきれなくなって、俺にこの体を渡して、心の奥に籠ってしまった・・・。」

「固い壁に阻まれて、今の俺じゃあ、起こしてやることもできない」

「俺にできることは、この体を保ってやることだけ・・・」


「そんな・・・」

「・・・残念だが、俺はどうしてやることもできない。今はただ、雪女の代わりに連れ去られてやることしか・・・・」
「彰人!」

その瞬間、円堂が大きな声で叫んだ。

「・・・円堂?」
「お前も、雪女も絶対に救い出す!絶対にだ!」
「・・・俺はいい、雪女を救ってやってくれ。」
「彰人・・・」
「雪女は俺の、ただ一人の妹なんだ。俺は小さいころに死んじまって、寂しい思いをさせ続けた・・・」
「・・・」
「だが、お前たち雷門イレブンに出会って、あいつは変わったんだ!」
「俺たちに、出会って?」
「あぁ。・・・だから、どうか雪女を救ってやってくれ・・・」


そう言うと、彰人はカオスのほうを向いてこう言った。


「・・・お前らの目的は俺だろ!約束は約束だ、お前たちの所に行ってやらあ!!」


そう言って、一歩踏み出した瞬間。

ドオオン!!

空から、黒いボールが落ちてきた。

「!?」

・・・パチ、パチ、パチ・・・


「みなさん、本当に楽しそうでしたね?」


グラウンドに、シュテルンの声と小さな拍手が響いた。

見上げると、帝国スタジアムの壁の上に
二人が立っていた。

「やあ、円堂くん」
「グラン!シュテルン!」

そう円堂が叫ぶと、二人は下に降りてきた。

「何しに来たんだ!」
「・・・安心なさってください。今回は雷門に用があるのではありません」

そう言うと、二人は鋭い視線をカオスに向けた。

「・・・貴方たちはなんて勝手なことをしてくれたの!ペークシスからすべて聞いたわ!」
「・・・」
「グラースを倒れさせて!なんてことを!」
「俺は認めない!お前たちがジェネシスに選ばれたことなど!」
「我々は証明して見せた!雷門を倒し、あの方の興味を引いた火月雪女だって、今我らの手に!」
「誰が選ばれるのにふさわしいのか、一目瞭然だろう!」

「・・・往生際の悪い方々ですこと。」

そうヒカリは言うと、彰人に手を差し伸べた。

「さあ、雪女さん。我々と一緒に来ていただきましょうか」
「・・・」

彰人は無言でその手を取り、ヒカリのそばに寄った。

そしてボールが眩しく光を放ち始めた。

「・・・じゃあ、失礼するよ」
「雪女さんは、私たちが丁重に扱いますのでご安心を。」

その瞬間、一気に光が強くなった。
その光が収まると・・・カオスもシュテルンたちも消えていた。

目が覚めると、俺は少し殺風景な部屋にいた。

ベッドと机と椅子、あと少し大きめの本棚。

「・・・ここ、は?」

すると、ドアの向こうから女の子の声が聞こえてきた。

「あっ、シュテルン様!」
「・・・あの方の調子を見に来ました。ドアを開けてくださらないかしら?」
「はっ!」
「た、直ちに!」

そして、ガチャッというドアのあく音とともに、
赤い髪の少女が現れた。
さっき、グランと一緒にいた子か・・・?

「あら、目が覚めたようですね。」
「・・・えっと、君は?」
「あっ。私は基山ヒカリ・・・。エイリアネームは「シュテルン」です。」
「シュテルン・・・」
「はい。そう呼んでもらったら」
「ところでシュテルン、聞きたいことがあるんだけどよ・・・」
「・・・はい、何でしょう?」
「ここは・・・一体どこなんだ?なんで俺はこんなところに・・・」

そう言うと、ヒカリは凛とした顔でこう言った。

「ここは富士山麓です。場所は詳しく言えませんが・・・」
「ふ、富士!?」
「はい。そしてここは、あなたのために用意した個室です。」
「俺のために・・・?」
「はい。ドアにカギはかかっていません。ですがに外には私の部下がいつも二人待機しているので逃げ出せないと思います・・・」
「・・・」
「本当はあなたを逃がして差し上げたいのですが・・・」
「・・・!?」
「カオスをなんとか説き伏せて、あなたをジェネシスのフロアに連れてきましたが・・・」
「そう、なのか・・・」
「気を付けてください、あなたを狙っている人がここにはたくさんいます」

そう言うと、ヒカリは背を向けて部屋を出た。

「あ・・・シュテルン様、もうよろしいのですか?」
「えぇ。見張りをよろしくお願いしますね。」
「はい!」

シュテルンが居なくなった後のこの部屋は
とにかく静かで暇で仕方がない。

そもそもこの部屋、時計も窓もないんだよな。
だから余計に暇なんだろうな・・・

「・・・」

とりあえずゴロゴロしたり、本棚の本を読み漁ってみる。

「んー・・・」

その時ぴらっ、と
星座の本の間から何かが落ちた。

「?」

見てみると、赤い髪の毛の少女と少年が、
サッカーボールを持って、幸せそうに笑っている写真だった。

目の色は二人とも緑色。
二人とも血色の悪い肌をしていた。

「・・・まさか・・・。」

そんな思いが胸によぎったが、振り切って写真を元に戻した。


そしてまた暇になった俺は、ベッドに寝っ転がった。




そしていつの間にか、俺は眠ってしまっていた。


・・・コンコン。


ドアのノックの音で、俺は目を覚ました。
何分くらい眠っていたんだろうか?

「・・・どうぞ」


ドアを開けて入ってきたのは、シュテルンだった。
だが、さっきの顔とは全く違う。
少し青ざめ、何かにおびえているようだった。

「・・・雪女さん、私と来ていただけますか?」
「俺?」
「・・・はい。「あの方」がお呼びです」
「あの方・・・?」
「・・・ご、ご案内しますわ」

少しおびえた表情のシュテルンに、俺はついていくことにした。

部屋の外へ出ると、今まで外に居た少女2人が、
俺の横についた。

「私の名はクルセード。あなたをご案内します」
「私の名はモニーレ。あなたをご案内します」

まるで双子のような二人に囲まれながら、
俺は和室のような部屋に通された。

「・・・ここです。では私はこれで、失礼します」

そう言うと、シュテルンはそそくさとどこかへ行ってしまった。

「こちらです」
「こちらへどうぞ、あの方がお待ちです」

そう言うと、ふすまがスッとあけられた。

カポーン・・・

ししおどしの音が響く部屋に、
そいつは座っていた。

「・・・下がりなさい、クルセード、モニーレ」
「はっ」
「何かあれば、すぐお呼びください」

そう言うと、二人は部屋を出た。
ピシャン、と言うふすまの閉まる音が響く。

「・・・まぁ、座りなさい」
「・・・」

俺は無言で、敷いてあった座布団の上に
行儀よく正座で座った。

「はじめまして、私は吉良星二郎と申します」
「・・・」
「私があなたをここに連れてきた理由が分かりますか?・・・火月雪女さん・・・いや、火月彰人さんと言うべきかな?」
「・・・ご名答、俺は雪女ではなく、その兄の火月彰人ですよ」

そう言うと、彰人は薄く笑みを浮かべた。

「・・・どうせ、俺の力をお望みなのでしょうが、俺はあいにく、あなたの身勝手な復讐に付き合うつもりはありません」
「ほう、すべて知っているというわけですか」
「ええ。忘れてもらっては困ります。俺は“天使”なのですから。」

「・・・神の地位にはほど遠いが、全てを見抜き、すべてを作り替える」

そう彰人が言うと、星二郎はこう言ってきた。

「やはり、貴方にはエイリア学園の一員になっていただきたい。」
「・・・残念ですが、お断りします。」
「もうすぐ、彼らがやってきますよ」
「!?」

彰人は驚いて立ち上がった。

「円堂たちに、一体何をした!!」
「・・・いいえ、まだ何もしていませんよ」
「じゃあ、なぜ!」
「私の計画を知ってもらっただけの事。」
「・・・ッ!!」

「旦那様、連れてまいりました」


その時、研崎が現れた。


「ほう、もう来たのですか。」
「はい」

その瞬間、星二郎は手を二回たたいた。
するとモニーレとクルセードが部屋に入ってきて、彰人の腕をガッチリと掴む。

「・・・なっ!?何をする!!」

逃げようともがいてみるが、まるで機械にでも挟まれたように、びくともしない。

「逃げられないように捕縛するまで」
「雷門を見て、逃げられては困りますので」

「貴方が逃げられては困りますからね、少し拘束させていただきますよ」
「くそっ!!」


その瞬間、瞳子や円堂が入ってきた。

「彰人!?」
「・・・円堂!」

「・・・お父さん、火月くんに何をしたんですか!?」
「何もしていませんよ。ただ彼をエイリアに誘っていただけです。ですが彼は頑固でね」
「・・・!」
「ハイソルジャー計画には、彼の力が必要なのです。彼の力が加われば、ジェネシスはさらに完璧で強いチームとなる!」
「お父さんは間違っています!ハイソルジャー計画を今すぐやめてください!」
「・・・どうやらわかっていないようですね。お前たちも私の計画の一部に組み込まれていたということが」
「えっ!?」
「・・・どういう、事ですか」
「エイリア学園との戦いで鍛え上げられたお前たちが、ザ・ジェネシスにとっていずれ最高の対戦相手になると思ったからですよ」
「何!?」
「瞳子、お前は私の思い通りに仕事をしてくれました。礼を言いますよ」
「!?」

その瞬間、瞳子はうつむく。

「・・・さあ二人とも。用も済んだことですし、彰人さんを元の部屋に戻して差し上げなさい」
「「はっ」」

その瞬間、ものすごい力で彰人は二人に腕を引かれて、無理やり連れていかれる。

「え、円堂!!」
「彰人!」
「これだけは言っておく!・・・絶対に立ち止るな!俺や雪女が居なくともお前たちは完璧だ!」
「彰人!彰人ーーーーっ!!」

円堂がそう叫ぶも、
三人はふすまの向こうへ消えていった。

ドサッ!!


彰人は少し乱暴に、部屋に連れ戻された。

「・・・・いっ・・・!!」

「試合の時間に、迎えに参ります」
「ジェネシス対雷門の試合の時間に」
「試合には、貴方専用の席を設けます」
「あなたの目の前でジェネシスが雷門をつぶせば、あなたの心も変わるはずです」

そう言うと、二人とも部屋から出ていき、
ドアを少し乱暴に閉めた。


「いっつ・・・」


腕の痛みと投げ出された時の痛みで動けず、
俺は、その場で丸まることしかできなかった。


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