さよならと言おう


その頃、彰人は・・・


「(こんなの、ただの拘束じゃねーかよ・・・)」


横をモニーレとクルセードに挟まれ、腕をガッチリと掴まれながら、
雷門対ジェネシスの試合を見つめていた。
しかもその後ろにも、数人の選手が。

絶対に彰人を逃がさないよう、がっちりとガードされていた。

「・・・おい、いい加減放せよ!」
「なりません。」
「なりません、逃げられては困ります」

横をガッチリと2人に固められ、
逃げようにも逃げられない状況。


「(隙をついて逃げ出して、加勢が出来るといいんだが・・・)」


現在点数は3対3。
吹雪がアツヤと統合して、なんとか逆転し、
試合は雷門側へと進んでいるが、まだ危うい。

「(なんとかスペースペンギンを受け止めたが・・・なんとかしないと・・・)」

「もう、こんなの嫌だよ・・・」

「えっ?」

気づくと、さっきまでキリッとした顔のモニーレが、
涙を瞳に溜め、シクシクと泣いていた。
その様子はさながら、小さな少女のようで・・・

「・・・どうしたの、モニーレ!」
「もう嫌だよぉ・・・人を傷つけるのも、閉じ込めるのも、痛い思いするのも嫌だよぉ・・・」

その様子に、クルセードも泣き始める。

「我慢しな!あたしだって泣きたいんだからぁ・・・!」
「もとに、戻りたいよぉ・・・!」

少女や少年の静かな泣き声が耳に響く。

「(・・・)」

逃げる隙はいくらでもあるのに、何故か体が動かない。

逃げればいい、それだけなのに。
柵を飛び越えて、円堂たちの所に行けばいいだけなのに。

「(なんで、なんだ・・・)」

その瞬間、円堂たちがジ・アースを撃った!

そのシュートの威力は強烈で、
止めようとしたDF陣をものともせずゴールへ突き進む。

しかし、グランとウルビダが、
ゴール前で必死にそのシュートを止めようとする。

「お父様の、ために・・・ッ!!」
「負けるわけには、行かない・・・!」

「(止めないと、あいつらの足が危ない・・・!)」

そう思って彰人が叫ぼうとした瞬間・・・


「ヒロ兄ーーーーッ!!!」


ヒカリが、自分の新緑の瞳に涙を溜めて、そう叫んだ。


その瞬間、二人は吹き飛ばされ、
ゴールにボールが突き刺さった・・・。


そこで、試合終了のホイッスルが鳴った。


そのとき、ヒロトがゆっくりと起き上がって、
ヒカリに向かってこう叫んだ。

「シュテルン!なぜ・・・」
「もうあたしは嫌なの!ヒロ兄をヒロ兄と呼べないなんて!そもそもこんなところ、あたしは居たくなかったの!!」
「なっ・・・」

その瞬間、ヒカリは柵を飛び降りて、
ヒロトのもとへ近づく。

「あたしは、ただヒロ兄達とサッカーできればそれでよかった。ただそれだけだったの。」
「シュテルン・・・」
「もう“シュテルン”なんて呼ぶのはやめて。それはただのまやかしだよ。“シュテルン”は“基山ヒカリ”じゃないの。」
「・・・」
「ヒロ兄、みんな、どうか目を覚まして。勝利を追い続けたのがこの結果なんだから」

その言葉に、うつむいていたみんながヒカリのほうを向いた。

「・・・囚われの身だった雪女さんも、元の場所に返してあげましょう?」

そう言ってヒカリが目くばせすると、
モニーレとクルセードは、涙のたまった眼をこすりながら、
ガッチリと掴んでいた彰人の手を離した。

「あ・・・」

その瞬間、彰人は柵を飛び降りて、
グラウンドに降り立った。


「彰人!」
「彰人さん!」


その瞬間、円堂たちが彰人のそばへ駆け寄る。


「約束通り、助けに来たぜ!」
「・・・ありがとな、円堂」
「仲間を助けるのは、当然だろ?」
「仲間・・・?俺が?」
「あぁ!仲間の雪女の兄貴なら、彰人も俺たちの大切な仲間のひとりだ!」

彰人は一瞬、ぽかんとした表情を浮かべたが、
すぐに笑顔になって、こう言った。

「・・・仲間、か!」
「ああ。」
「雪女も、こんないい仲間をもって幸せだな。」

その瞬間、彰人の目の色がじわじわと青に戻り、
タトゥーも変わっていく。

「あ、彰人!お前・・・」
「・・・俺、ようやく安心して天使に戻れるぜ。ありがとな、円堂」
「彰人・・・!」

そして、
彰人は吹雪のほうを向いて、こう言った。

「・・・吹雪!俺の大切な妹を、これから絶対に泣かすんじゃねーぞ!」
「・・・はっ、はい!」
「それでいい。それで・・・」

そう言って、彰人はゆっくりと地面に倒れた。
意識のなくなる前に、最後にみんなに言った言葉は・・・













「・・・俺の妹を、これからもよろしくな!!」















・・・だった。

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