別れと指切り


・・・一体どうしたものか。

雪姫ばあちゃんは居なくなるし、
殻は割れたけど、目が覚めないから
ここから出れないし・・・


「士郎に、会いたいなー・・・」
《・・・兄貴に嫉妬しちまうな。》
「!?」

ため息を吐くと、後ろから急に声がした。
驚いて後ろを振り返ると、俺はもっと驚いた。

「あつ、や・・・?」
《俺の事知ってるのか?》
「何で、ここにアツヤがいるんだよ!?」
(俺が連れてきたんだぜ)
「兄ちゃん!?」

アツヤは現れるわ、兄ちゃんも現れるわで、
俺は完璧に混乱していた。
すると、兄ちゃんは急に悲しそうな顔になって、こう言った。

(・・・お別れだ、雪女。)
「えっ?」
(俺はアツヤを連れて、天界に帰る。)
「・・・それって」
(俺は、罰は承知の上だ。)

そう言うと、彰人はうつむいた顔を上げ、
精一杯笑った。

(もう俺が居なくても、お前は強い子になった!だから俺は、安心して天使に戻るよ)
「待ってよ、兄ちゃん!」
(大丈夫だ。いつかまた、お前が大人になった時、もう一度会いに来るから)
「大人になった、時・・・」
(じゃあ、お別れだな。)
「待って兄ちゃん!俺、聞きたいことがあったんだ!」

「あの時の約束・・・!」






じゃあ・・・あたしがね、お兄ちゃんみたいにかっこよくなるまで、一緒に居てね!



あたしがお兄ちゃんみたいになるまで、一緒に居てくれるって・・・!!



俺はただ・・・兄ちゃんみたいになりたかっただけなのに・・・






“兄ちゃんみたいになる”










昔、兄ちゃんが生きていた時に交わした約束。

そう言うと、彰人は雪女の頭に手を置き、
優しく数回撫でた。

(何を言ってるんだ。お前は俺をもう超えてるんだぜ?)
「・・・!」
(俺は、どうしてもお前を超えられなかった。・・・お前がうらやましかったんだ。)


・・・だから俺は、おかしい方向へ歩いて行ってしまったんだ。

妹のお前を傷つけるようなことまでして。


「兄ちゃん、泣くなよ・・・」
(・・・バカ、泣いてなんかねえよ)
「なぁ兄ちゃん。俺にまた、会いに来てくれるか?」
(できればな。もう1回だけお前に会いに来るよ)
「・・・」


彰人がそう言うと、雪女はうつむいてしまった。


(・・・なぁ雪女、頼みがある。)
「頼み・・・?」


そう言うと、彰人は自分の首についている青色のペンダントを外した。
そしてそれを、雪女の手に握らせた。

「これ、兄ちゃんとおそろいの・・・」
(お前にもし、娘か息子が出来た時、このペンダントを渡してくれ。)
「・・・」
(その子に何かあった時、俺がその子を守ってやる。)
「!」
(・・・お前への、罪滅ぼしだ。)

そう言うと、彰人は雪女の手をしっかりと握った。

「・・・兄ちゃん」
(俺がお前と入れ替わってるとき使った技は、お前が寝てる間に入れ替わって、ノートにまとめて、お前のカバンの中に入れておいた。)
「俺に、その技を?」
(・・・お前にこの技を使ってほしいんだ。俺はもう使えなくなるから・・・)
「分かった。特訓して、使えるようになるよ」
(・・・そろそろ時間だ。アツヤを連れていくよ)

そう彰人が言うと、アツヤが雪女に近寄り、
まじまじと見始めた。

「・・・?」
《お前、よく見ると意外と可愛いよな》
「は!?」
(おいこらアツヤ?俺の妹に手を出す気じゃねぇだろうな?)
《・・・兄貴がうらやましいぜ》
「へ?」
《こんな可愛い奴に有り余るほど愛されて、幸せな野郎だ》
「・・・!?」

そう言うと、アツヤは雪女のおでこに手を当てて、前髪をどけた。

「!?」
《男みてーな顔してるけど、近くで見ると意外と可愛いな》

そして、そのまま自然に・・・


ちゅ。



「・・・!?」
(あああああ!?アツヤてめぇ!何しやがる!)
《うるせえシスコン。最後くらいいい思いさせろ》

そう言うと、アツヤは雪女のおでこに置いていた手をどけた。

「(やばい、心臓止まりそう・・・!!)」
《・・・兄貴を、よろしくな》
「あ、あぁ!」
(・・・アツヤ、行くぜ。)
《あぁ》


そう言うと、二人は雪女のそばを離れた。
その瞬間、二人の周りに光があふれ出す。


「兄ちゃん!」
(俺の最後の頼み事、叶えてくれよな)
「あぁ、絶対叶えるよ!兄ちゃんのペンダントを絶対に、俺の子供に渡すから!」
(・・・頼むぜ)




その瞬間、二人は光に包まれて
消えていった・・・。







そして消えるのと同時に、雪女も目が覚めた。

「ん・・・う」

目が覚めると、そこはキャラバンの中だった。
俺の体の上には誰かのジャージがかけられていて・・・。

「(誰も、いない・・・)」

「(・・・外が騒がしいから、みんな外にいるのかな)

その時、右手に違和感を感じて、
右手を見てみると・・・

「!」

右手にはしっかりと、兄ちゃんがつけていた青色のペンダントが握られていた。

その瞬間、雪女の瞳から涙があふれ出す。


「兄ちゃん・・・!」


あぁ、本当に兄ちゃんは居なくなったんだ。
アツヤと天界に帰ってしまったんだ。
そう思うと、涙が止まらなくて・・・。


「え、ぐっ・・・う・・・」


拭っても拭っても止まらなくて。


「兄ちゃん、にいちゃ・・・」


たとえ死んでいても、大切な兄ちゃんに変わりはなかったから。

「あっ、雪女くんの目が覚めたよ!」
「Σ!」

秋ちゃんの声がして、
俺は急いで袖で涙を拭いて、何事もなかったようにふるまった。

「雪女!」
「雪女さん!」
「先輩!」
「みんな・・・」

そう言うと、円堂がこう声をかけた。

「・・・雪女、彰人はどうしたんだ?」
「兄ちゃんなら、居るべき場所に帰ったよ」
「居るべき、場所・・・」
「俺に強くなったな、って言ってくれた」
「・・・」
「そんなしんみりするなよ!遅かれ早かれ、こうなる運命だったんだからよ」
「・・・雪女」
「でも、よかった。これですべて―「雪女!!」

雪女の声を大きな声で遮ったのは、吹雪だった。

「しろ・・・うわっ!!」

吹雪はすぐさま、雪女に抱き付いて、
強く、強く抱きしめた。

「よかった、戻ってきてくれて・・・!!」
「士郎・・・」
「雪女が居なくなってから、ずっと寂しかった!すごく怖かった!」

まるで小さな子供のように泣く士郎を、
俺はしっかり抱きしめた。
そして、こう言った。

「・・・ただいま、士郎。」
「おかえり。」

その瞬間。

「ダーリン!まさかソッチ系やったんか!?ないわ、それはないわー!!」
「・・・だから、俺は女だっつーの!勝手に解釈すんなあ!!」
「え・・・?あれ、ホンマやったんか・・・?」
「・・・あぁ、俺は女だぜ。」

そう言うと、リカは固まった。

「・・・し、下に何もないんか・・・?」
「無い。女だからあるわけがない。」
「だ、ダーリンが女やったなんて・・・!」
「・・・ま、一之瀬と幸せにな」
「そうや!うちにはもう一人ダーリンがおるんや!」
「これからは友達としてよろしくな、リカ」
「もちろんや!」


・・・さっきの感動はどこへやら(笑)

「そうだ、士郎。」
「・・・ん?」
「アツヤが言ってたぜ、「兄ちゃんをよろしく」ってな」
「・・・!」

俺がそう言うと、士郎はまた瞳に涙をためた。

「泣き虫だな、士郎は。」
「君の前、だけでだよ」

その時、ヒカリがキャラバンに乗ってきた。

「・・・ヒカリ!」
「雪女さん、ありがとうございました。」
「よかったな、みんなの目が覚めて」
「本当に、円堂さんや雪女さんたちのおかげです、ありがとうございました。」

そう言うと、ヒカリはヘアゴムを取って
ツインテールをほどいた。

「これで、あたしは「基山ヒカリ」に戻れます」
「・・・本当に、よかった。」
「あたし、行きますね。・・・またどこかで、お会いしましょう。」

そう言うと、ヒカリはニコっと混じりけのない笑顔で笑って、ヒロトのもとへ戻った。

「・・・終わったんだな、すべて」

そして帰る途中・・・。

「・・・なぁ、士郎。」
「ん?」
「実はな俺・・・お前に会いたくてこっちに戻ってきたんだぜ。」
「・・・そうなの?」
「あぁ。マジで身に染みた。」
「何が?」
「やっぱ俺には、お前が必要だってことだよ」
「・・・僕もだよ」


そして俺と士郎はみんなに見えないように、俺の体を壁にして、
ちっちゃく触れるだけのキスをした。


「もう離れちゃいやだよ」
「勿論だ。俺も離れたくないからな」
「じゃあ、指切りしよ」
「あぁ。」



そう言って、俺と士郎は
小指をからめて指切りをした。


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