不思議な夢
「・・・時間が止まればいいのにな。」
「俺も、そう思う。」
士郎が俺の頭を優しく撫でてくれる。
この感覚が、一番好き。
「士郎、愛してるぜ」
「僕も雪女を、愛してる。」
ちゅ、と音を立てて、
もう一回だけ、キスをする。
「明日、何で帰るんだ?」
「・・・明日の8時、稲妻町駅の新幹線で帰るつもりなんだ。」
「じゃあ、俺・・・見送りに行ってもいいか?」
「もちろん。」
「何だか、少しでも長くそばに居たいから・・・さ」
「・・・ありがとう。」
そう言うと、吹雪はにこり、と
満面の笑みで笑った。
「僕は幸せだよ。こんなに優しくて強い彼女がいてさ」
「強いってなんだよ、褒め言葉になってねーぞ」
「・・・ふふっ」
そうして、夜は更けていった・・・。
その夜、家に帰って寝た俺は、また不思議な夢を見た。
前に、夢に見た少女が俺に笑いかける夢。
何も言わず、ただ笑っていた。
でも不気味には思わなかった。
むしろ、なんだか愛おしく感じた。
それを見続けていると、その少女の後ろから
別の少女が数人現れた。
グレーの髪色をした子
前髪にヘアピンを付けている黒髪の子
夕暮れの空のような綺麗な髪の色をした子
メッシュをしている子
猫耳の生えた子
・・・ほかにも数人いたが、あまり覚えてない。
そしてその少女は、俺に近づいてきた。
ぶつかる!と思ったその瞬間、
少女はすっ、と俺の体をすり抜けた。
そこで、目が覚めた。
「・・・」
不思議な夢だなー、と思いつつ、
時計を見たらまだ6時。
仕方ないので、早く起きて着替えることにした。
「えーと、朝飯作るか・・・」
「朝早いな、お前・・・」
「あ、母さん。」
「どっか、行くのか?」
「・・・士郎の見送り。今日あいつ、帰っちまうから」
「そうか。・・・ところで昨日は遅かったな。何してたんだ?」
「え、えええ、えーと・・・」
まさか「あんなこと」してたとは言えないし、
どうしよう、マジどうしよう。
・・・あ、そうだ!
「・・・ま、守たちと打ち上げ!」
「嘘だってのバレバレだぞ、バカ娘」
「・・・うぐぅ」
「どーせ、吹雪のとこ行ってたんだろ」
「正解だぜ、このやろう」
「ふーん。ま・・・気持ちは分かるぜ。俺もそうだった」
「・・・母さんも?」
「あぁ。まだ俺が宝塚に居た頃、海外公演があってな、1ヶ月くらいだったんだが・・・」
そう言うと、美幸は前髪をかきあげた。
「ちょっとでも正義と会えないのが寂しくてな。前日はこっそり会いに行ったもんだ」
「へぇ」
「もちろん、親父にばれてこってり絞られたが、バラすのはなんとか見逃してくれた。」
そう言って、美幸は苦笑いした。
「正義が気づかないうちにさっさと家出ろよ。なんとかごまかしてやっから」
「!」
「どーせラブラブなお前らの事だ、もうヤったんだろ?」
「・・・ソノトオリデス・・・」
「俺のカンなめてもらっちゃ困るぜ?」
母さんにそう言われたので、
俺はさっさと着替えて、早めに家を出た。
駅の中で士郎と合流したけど、まだ時間が早かったから、
時間つぶしに、近くの喫茶店でコーヒーを飲んだ。
「・・・俺さ、教員免許取ろうかなって思ってんだ。」
「奇遇だね、僕も高校卒業したら取るつもりなんだ。」
「お前も?」
「うん。」
「・・・そっか。・・・俺は高校卒業したら、先に“あれ”をしなきゃな・・・」
「・・・何か言った?」
「ううん、何も。」
「そう?じゃあそろそろ時間だし、行こうか」
「あぁ。」
会計を済ませて、ホームまで歩いていく。
「・・・入場券買ったし、ついてくよ」
「うん。」
ホームにつくと、士郎がこう言った。
「雪女って、未来が見えたりとかしないかなあ。」
「・・・見えないことも、無いかもな」
「そっか。もし見えるんだったら、僕たちがどれだけの期間離れるのか、知ることができるのに」
「・・・」
本当は駄目だけど、自分の口が持たない。
早く会いたい。
・・・本当は3か月も、待てない。
「・・・3か月間。」
「え?」
「3か月したら、また会える。・・・と思う?」
「何で疑問形?」
「分かんねえからだよ」
「そっかあ。」
そんな話をしていると、新幹線が
大きな音を立てて、ホームにやってきた。
「・・・じゃあ、行くね」
「あぁ。元気でな!風邪ひくなよ」
「分かった。雪女も元気でね」
「・・・あぁ。」
少し寂しくなって、俺はうつむいた。
すると。
「・・・元気になる、おまじない」
そう言って、士郎が俺のおでこに
小さなキスをしてくれた。
「・・・バカ、大好きだ」
「ふふ、僕も。」
《ドアが閉まります、ご注意ください・・・》
そうアナウンスが聞こえ、俺は少し急いで
ドアから離れた。
「じゃあな!」
「うん、元気でね!」
そう言った瞬間、ドアが閉まる。
そしてその数秒後、新幹線は出てしまった。
「・・・ちくしょう。」
こんなに好きになるとは、思わなかった。
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