練習禁止!?
そして、合宿1日目。
俺たちの仕事は、守やみんなを起こすことから始まる。
「・・・んー、マネージャーってのは早起きなのねー・・・」
「そうですね。私も実はまだ少し眠くて・・・ふぁ」
「しばらくやってりゃ慣れてくるぜ?」
「そういうものなんですかね」
ちなみに、現在の俺たちはジャージだったりする。
俺は普通の雷門ジャージ。
柚流は黒色のジャージ。
ヒカリは赤色のジャージ。
祈莉は緑のジャージ。
・・・おっと、こんなことしてる暇なかった。
「じゃあ、手分けしてまだ寝てるやつ起こしにいくぞ!!」
「私、円堂くん起こしに行くね」
「じゃあ私、栗松さん起こしに行ってきます」
「ミーは条介起こしに行くわ。あいつ朝弱いから・・・」
「じゃあ俺、壁山起こしに行くな」
そして、寝てるやつを起こしたら、
今度は朝食の用意が待ってる。
「おかわりっス!」
「んじゃ、俺も!!」
「はいはい。」
「どいつもこいつもよく食うなー・・・」
そしてそのあとは練習が始まる!
「とうとう始まるんですね、世界への挑戦が!」
「えぇ。」
「何か、ちょっと前に俺が入ったのが、ずいぶん昔に感じるな」
「そうね。あの時は大変だったなぁ・・・。」
「でも、あんときはすげえ楽しかった。」
「じゃあ、今は?」
「今も楽しいに決まってるだろ!」
「ふふ、そう言うと思った。」
「はは・・・」
その時、久遠監督がやってきた。
その隣には、冬花ちゃんが大人しく立っていた。
「お前たちも顔は知っていると思うが、改めて紹介しておく。娘の冬香だ。今日からマネージャーとして参加させる」
「マネージャー?」
「・・・久遠冬花です。みなさん、よろしくお願いします。」
「・・・」
「私、マネージャーなんて初めてだから、ちゃんとできるか分からないけど・・・」
「大丈夫!分からないことがあったら、何でも俺に聞いてくれ!」
「ありがとうございます、守くん」
「あぁ!」
雪女は冬花に近づき、
そっ、と手を差し出してこう言った。
「・・・これからよろしくな!」
「えっと・・・あの、その」
「あ、俺は火月雪女。よろしくな!」
「よろしく、お願いします・・・」
そして、練習が始まった。
久遠監督は意外と厳しい人で、心に来るような言葉を
遠慮なく守たちに浴びせる。
「(・・・世界と競うんだ、厳しくなるのもしかたないさ)」
そう思いながら、俺はタオルの入った籠を持ち上げた。
その時、ふと冬花ちゃんに声をかけられた。
「・・・あの、雪女さん」
「ん?」
「雪女さんは、どうして男の子なのにマネージャーに・・・?」
「え!?」
「もしかして、冬花さん・・・」
「・・・雪女くんを男の子だと、思ってたの?」
「え、えっ・・・!?」
「(あー、何だろ。何か懐かしいな、この反応。)」
「雪女さんは、女の子なんですよ」
「ええっ!?」
「俺は口調がこんなんだし、男みてーな顔してるからな。男の子だと思ったんだろ?」
「は、はい。すみません・・・」
「大丈夫だよ、慣れてるから。」
「そうですか・・・」
「俺、久し振りに男に間違えられたなあ」
「そうね。」
そんな話をしたり、いろいろ仕事をしているうちに、
いつの間にか夕方になっていた。
そして練習が終わり、みんな食堂に集まってきた。
「・・・疲れた」
「死ぬかと思った・・・」
「俺もう、くたくたっス・・・」
「みなさん、お疲れ様です。」
「何か、疲労回復できるものー・・・」
その瞬間、食堂の扉が開いた。
現れたのは、なんと石田先生だった。
「日本代表のみんな、元気にやってますかぁー?」
「・・・ど、どちら様?」
「石田先生!?」
「雪女くん、久し振り。」
「先生、入院されてたんじゃ!?」
「この前退院したのよ。」
そう言うと、石田先生は机の上に
どんっ、と大きなタッパーを置いた。
「ハニーレモンよ。疲れが取れるから遠慮せずに食べなさい」
「ありがとうございます!!」
「・・・うっ、すっぺぇ!」
「当たり前よ、レモンだもの!」
「先生、ところで何で急に?」
「いやぁ、教え子の円堂くんや風丸くんが世界に挑戦するって聞いたから、一度会いに来たかったのよ」
「そうですか・・・」
「・・・まぁ、応援するついでに差し入れ届けに来ただけなのよ。」
「ありがとうございます、丁度みんな疲れてて・・・」
「じゃあ、私そろそろ行くわね。みんな、明日も頑張りなさい。」
「「「はいっ!!」」」
「お前らー、開いたドリンクの容器とか、汚れたユニフォームとかあったら、今のうちに出しとけよー」
「あぁ。」
「頼むぜー」
・・・そして、夜は更けていった。
そしてまた朝が来て。
過酷なスケジュールも続いて。
怪我する奴も出だして。
俺達マネージャーもてんてこ舞いだった。
「(・・・はぁ、気分悪い・・・)」
最近何だか貧血気味だし、
吐き気もする。
「(だけど、仕事は休めねーや)」
・・・正直、6人でもキツイ状況だ。
今俺が抜ければ、あとの5人で頑張らなきゃいけなくなる。
「(貧血が何だ!吐き気が何だ!)」
ふらふらと倒れそうな足を引きずって、
俺は仕事に戻った。
「・・・雪女くん、雪女くん。起きて。」
「・・・ん、俺いつの間にか寝ちまってたのか?」
「疲れてるんだね。」
さっきまで、みんなとFFI予選のくじ引きをTVで見ていたはずだったが、
俺はいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「どうだった?」
「初戦の相手はオーストラリア代表、ビッグウェイブスだそうです」
「試合は2日後なんだって。ガードボーイや条介たち、今まで以上に特訓しないとね」
「そうですね。」
・・・だが、次の日。
「今日からがっつりと練習しないといけないんじゃないかなあ?」
「じゃあタオルとか多めに用意しないと」
「・・・あれ?」
「ん?」
「円堂さんたちが帰ってきましたよ?」
「嘘!外で練習してるはずじゃ!?」
外で練習しているはずの円堂たちが、
とぼとぼと合宿所に入ってきた。
「・・・何かあったんでしょうか?」
「気になるね・・・」
「・・・俺、聞いてみるよ。」
「お願いします!」
雪女はそばに居た土方を捕まえて、
話かけた。
「土方!どうなってんだ?みんなしょんぼりしちまってさ」
「・・・あぁ。この二日間、練習が禁止になっちまったんだ」
「!?」
「はぁ・・・」
「・・・そう言うわけで、あいつらは個室に2日間ずっとカンヅメ状態にされるらしいぜ」
「ええっ!?どうしましょう・・・」
「どうするもこうするも、監督がそう言ったんだ。そうするしかないさ」
「雪女さんは、みんなに勝って欲しくないんですか!?今ここで練習しないと、みんなバラバラなんですよ!?」
「・・・俺はそうとは言ってないさ。」
「じゃあ・・・・!」
「信じてくれ。これが今のあいつらにとって一番いい方法なんだよ」
「・・・」
祈莉は、それ以上何も言わなかった。
その時、風丸が雪女に声をかけた。
「おい、雪女!」
「ん?あぁ、風丸。何か用か?」
「玄関で監督が呼んでたぞ
「・・・あぁ、今行く。」
そして俺は玄関へ急いだ。
「監督、お呼びでしょうか」
「・・・。」
「えっと・・・何の用ですか?」
「頼みがある」
「頼み・・・ですか?」
「円堂たちが決して合宿所を出ないよう、監視していてくれ」
「!?」
「出口の近くなり階段の近くなりで、本でも読んでいればいい」
「・・・俺に頼んでもいいんですか?俺はあいつらの親友であり仲間です。あなたを裏切ってあいつらに練習させるかもしれませんよ?」
「お前は信用できる。お前は絶対に私を裏切らない」
「・・・」
「いや、裏切れないと言ったほうが正しいか」
そう言うと、久遠は雪女をきつい目で少しにらんだ。
「お前は私の考えを知っているはずだ」
「・・・えぇ、分かっていますよ。あなたのきつい言葉の裏に隠された思いも、なぜこんなことをするのかも」
「なら、頼んだぞ」
「・・・わかりました。」
そして。
「・・・ヒカリ、椅子運ぶの手伝ってくれ。」
「あ、はい。いいですよ?」
合宿所の中に一つしかない階段の前に椅子を置いて、
誰かが降りてくれば分かるようにしておいた。
「雪女さん、なにをするつもりなんですか?」
「あいつらの監視。」
「ええっ!?」
「監督に頼まれたんだよ。絶対外に出すなって」
「え、でも・・・」
「大丈夫だって。本番になれば監督の言ってた意味が分かるから」
「・・・そう、ですか?」
「あぁ、約束する」
「・・・私、雪女さんを信じます!雪女さんが言うことだから、本当ですよね!」
そう言うと、ヒカリは雪女の手を握った。
「じゃあ、円堂さんやヒロ兄たちが外に出ないよう、監視お願いします。」
「あぁ」
「私まだ仕事があるので・・・あとで本差し入れしますから。」
「一応たくさん持ってきたけど、俺読むの早いから、本の差し入れは助かるな」
「じゃあ、失礼します」
「あぁ。」
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