只より高い物はない
「ほら・・・ロクでもない用事だったじゃねーか・・・」
「すまないな、雪女・・・」
「別にいいぜ、悪いのは塔子じゃなくてリカだし」
「そんなに怒らんでもええやん?」
「どの口が言ってんだこの野郎。今俺は大事な時期で、無茶したくないのに」
用事というのは、ただ単に買い物してるリカの荷物持ちをしてくれ、という
本当にロクでもない用事だった。
「あーもう、今まさにお腹張って苦しいってのに」
「お腹の調子でも悪いのか?」
「あー、いや、えーっと・・・」
「雪女ー!!ちょっと来てーな!」
「ん?」
「これ・・・むっちゃ綺麗やと思わん?伝承の鍵、って言うんやって」
リカが指さしたのは、キラキラと輝く2つのブレスレットだった。
「確かに綺麗だな・・・」
「・・・でもなー、これうちの趣味やないねん。」
「へ、へー・・・」
「せやからな、付きおうてくれたお礼にプレゼントしたるわ!塔子はこっちの紫色のなー」
「あっ、ちょっ!?」
「おっちゃん、これなんぼー?」
リカが俺の手を掴んで、半分無理やりブレスレットを腕に付けてくれた。
「持っていくがよい。」
「お代はいらんよ」
「わぁ、幸先ええやん!タダやて!」
「タダほど高いものは無い・・・って言うけど?」
「そんなん気にしてたらキリないで!じゃあ次!」
「・・・まだ買う気かよ!!」
これからの事が安易に予想できて、
俺は大きなため息を一つ吐いた。
そして、リカの買い物に散々つき合わされた俺は、
二人を宿舎へ連れて行った。
サプライズで来たらしく、みんなは二人が来るのを知らなかったらしい。
「・・・何だ、だから俺に電話かけてきたのか」
「ケータイ番号知ってて、なおかつ口が堅そうなの、雪女しかいなかったんだ・・・」
「だからか・・・」
そう言ってふう、とため息を吐くと、
士郎が俺を見てこう言った。
「雪女、その綺麗なブレスレットどうしたの?」
「・・・あー、これ?リカが買い物付き合ってくれたお礼に、ってくれたんだよ」
そう言うと、俺はブレスレットがよく見えるように
ジャージの袖をめくって、士郎に見せた。
「でも結構、この色合い好みなんだよな。すっごく綺麗でカッコいいし!」
「塔子も一応、これの色違い持ってるんやで!」
「だから、これ趣味じゃないんだってばー・・・」
「・・・私はこれ、カッコいいと思いますけど?」
春奈がそう言うと、塔子は紫色のほうのブレスレットを差し出した。
「じゃあつけてみなよ。似合うかもしれないじゃん?」
「はい!」
そして、春奈はブレスレットをつけた。
「わぁ、似合ってる!」
「意外とカッコいいデザインね。ミー、そう言うのが好みなのよ。ちょっと着けさせて?」
「あ、いいですよ!」
そう言って、春奈がブレスレットを取ろうとしたが・・・
「・・・あれ?」
「どうしたのよ?」
「取れないんです・・・」
「ええっ?」
「雪女、そっちは?」
「・・・あれ、俺のも取れない・・・」
そう言った瞬間、俺は嫌なことを思い出した。
・・・そう言えば、このブレスネット・・・
見る見るうちに雪女の顔が真っ青になっていく。
「雪女!?どうしたの?顔色が悪いよ?」
「・・・し、士郎。ちょっとこれ取るの手伝ってくれ!!」
「・・・!?う、うん・・・」
そう言うと、吹雪はブレスレットのふちに指を引っ掛けて、
必死に雪女の腕からブレスレットを取ろうとしたが・・・
「いだだだだだっ!!腕、抜ける!!!」
「だ、大丈夫!?」
「いいから取ってくれ!」
「じゃ、じゃあもう一回引っ張るよ・・・?」
「・・・い、痛い痛い痛い!!」
どうしてもブレスレットは取れなかった。
「はぁっ・・・はぁ・・・無理、みたい・・・」
「どうしても、取れない・・・」
「「「ええっ!?」」」
ちょっと涙目になった雪女は、
必死にそうにリカに文句を言った。
「だから言ったろ、リカー!!」
「あのオッサン、うちの友達に迷惑かけよってからに!とっ捕まえて文句の一つでも言わな!!」
「何が「伝承の鍵」だよ!とんだ不良品じゃん!」
「・・・待って。今「伝承の鍵」って言わなかった・・?」
「あぁ。あと天と地の神がどーのこーのって・・・」
「夏未、知ってるのか?」
・・・夏未嬢がご丁寧に伝承の事を教えてくれたが、
俺は放心していて、それどころじゃなかった。
・・・それで。
俺が放心している間にいろいろあったらしく、
またテレスやエドガーやフィディオたちが集まって、
一緒に練習試合をすることになっていた。
「・・・はっ、俺は今まで何を・・・」
「あ、ようやく戻ってきた」
「ずーーっと動かないし、死んじゃったのかと思いました!」
「いやいや、まだ死なねぇよ」
「冗談ですよ、何本気にしてるんですか」
「・・・ですよねー」
そんな話をしながら、俺は空を見上げた。
いつの間にか青空はひとかけらもなくて、薄暗い曇り空に変わっていた。
「・・・天気が悪いなあ」
「そうですね、あれ・・・私、洗濯物取り入れたかなあ・・・」
「雨降らないうちに、タオル取り入れといてよかったあ・・・」
その瞬間、大きな音を立てて雷が鳴った。
俺は反射的に、ベンチに座っている秋ちゃん達をかばうような体制になる。
「大丈夫か!?」
「び、びっくりしたあ・・・」
「めっちゃ大きい音やったなぁ・・・って、雪女!?」
「え?」
「腕、腕!!」
リカが指さしたほうを見ると、
付けていたブレスレットが、不気味に光り輝いていた。
「な、何だよッ!?」
「何ですか、これ・・・!?」
春奈ちゃんのほうを見ると、
春奈ちゃんのブレスネットも光り輝いていた。
「まさか!?」
「あれはただの伝説よ?そんな事が・・・」
その瞬間、グラウンドの照明に雷が落ちた!
「きゃああっ!!」
「うわっ!」
すさまじい音と爆風に包まれた。
そして爆風が収まると・・・
「円堂さん!!上、上!!」
「・・・!?」
ゴールポストの上に、一人の少年が立っていた。
「(嫌な予感が、当たっちまった・・・!!)」
その瞬間、少年はボールを蹴った。
そのシュートは壮絶なもので、物凄い風が起こった。
「(駄目だ、吹き飛ばされる・・・ッ!!)」
そう思った時、
雪女背中からぶわっ、と
また、あの白いオーラが現れ、
雪女の体を支えて、なんとか吹き飛ばされずに済んだ。
そしてその白いオーラはグラウンド中にバッと広がり、
円堂の足や、吹雪の腕や、秋達の腰に絡みついて、
まるで風に飛ばされないように、守っているようだった。
「(・・・?)」
そして、雪女が恐る恐る目を開けると、目の前には
・・・その少年が立っていた。
「・・・!!」
「それはまさしく女神の力・・・。」
「女神の、力・・・?」
「・・・迎えに来た」
そう言うと、その少年は
雪女の眉間をつん、とつついた。
指が触れた瞬間、すさまじい眠気に襲われる。
「・・・し・・・ろ・・・」
「雪女!!」
意識が無くなる数秒前、士郎の声が聞こえた。
そして俺は、そのまま意識を手放した・・・。
- 192 -
*前次#
ページ:
[ top ]
[ 表紙に戻る ]
ALICE+