女神の子供に永遠の幸あれ
・・・ぽかぽかと、肌に感じる暖かさ。
花のような、甘い匂いがする空気。
「(・・・一体、ここは・・・)」
目が覚めると、そこは見覚えのない部屋だった。
「・・・とにかく、外へ逃げないと。」
丁度良く、この部屋には俺以外の人はいない。
・・・というわけで、
窓からの脱走を試みてみよう、と思ったが・・・
「・・・うわっ、たっか!?」
「いやでも・・・サクリファイトとかで降りれないかなあ・・・」
と、そんな馬鹿なことを考えていると、
部屋のドアの外から足音が聞こえた。
俺は急いで、何もしていないふりをする。
入ってきたのは、青い髪をした少年だった。
「お目覚めですか?」
「あ、あぁ。さっきな・・・」
「・・・ん?」
少年の目線の先には、開いた窓。
・・・しまった、閉めるの忘れてた!!
「(バレたか・・・!?)」
「今日は少々冷えがございます。朝風は体に悪うございますよ」
「・・・(まずいまずいまずい!!)」
その時、2人の少年がやって来て
朝食を持ってきてくれた。
「?」
「朝食でございます」
「・・・あ、あぁ。ありがとう・・・」
見られながらで少し食べづらいが、
仕方ないので食べてみると、これが絶品。
「・・・おいしい・・・」
「清めのドレッシングをかけたフルーツサラダでございます」
「・・・ふーん・・・」
その時、一人の少女が入ってきて、青髪の少年に何か告げた。
すると、少年は俺にこう言った。
「朝食が終わりましたら、清浄の間へ。お召し物の準備が出来ました」
「・・・お召し物・・・?」
・・・あぁもう、嫌な予感ガチ当たり。
さっきから、2人の少女が俺に
何か不思議なドレスを着せてくる。
・・・またドレスかよ・・・
っていうか、これ着るってことは
俺・・・魔王の花嫁に出されるんだよな?
・・・俺には、士郎が居るのに・・・。
「・・・女神様、綺麗!」
「花嫁様には、このお召し物がピッタリよね」
「あの、君たち・・・」
「アイエルです、女神様!」
「ギュエールです、花嫁様」
「じゃ、じゃあ・・・アイエル、ギュエール・・・」
「「はい!」」
「さっきから「女神様」って・・・誰の事・・・?」
「貴方様の事です、女神様!」
「だから何で、俺が女神なんだ?」
「貴方様が女神の力をお持ちだからです」
「・・・?」
首をかしげていると、アイエルが俺に説明してくれた。
「白いオーラのようなものを、ご覧になったことがありませんか?」
「!」
そう言われて、俺は
さっきの事や、カオス戦やDE戦の時のことを思い出した。
「あのオーラは、「女神の力」と言って、天使が気に入った者に、自分の力を削って分け与える力・・・」
「その力は、天使の階級によって様々ですが、強力な力が手に入るんです」
「渡される場所も様々で、産まれる前に力を貰う者も居れば、産まれてから貰うもの、死んでから貰う者と分かれます」
「もちろん、その力を持っている天使が気に入れば、その力がその者の子供に遺伝することもあります」
「力の所有者によって色も変わり、白や黒、赤紫やピンク色と様々です」
「簡単に言ってしまえば、天使が産まれるときに女神から貰う力を、人間に分け与えるってことです」
「・・・ふーん・・・」
その時、
何故か頭の中に、兄ちゃんと雪姫ばあちゃんが思い浮かんだ。
「(・・・あの力は、兄ちゃんたちがくれたのかな・・)」
そう思っていると、ギュエールが俺に声をかけた。
「花嫁様、どうかなさいましたか?」
「いや、別に・・・」
「ギュエール、腰紐締めるの手伝って!」
「分かった。」
その瞬間、腰とお腹に凄く強い圧迫感を感じた。
そして反射的に、俺は腰紐の片方を引っ張った。
「きゃっ!?」
そして俺は反射的に、お腹を抱えていた。
気が付くと、アイエルは尻もちをついていて、
ギュエールが心配そうにこちらを見ていた。
「・・・あっ、ごめん!!大丈夫だったか!?」
「大丈夫です、女神様・・・」
尻もちをついたアイエルの手を引き、優しく立たせてあげる。
「・・・花嫁様、まさかご懐妊なさっているのですか・・・?」
「!」
そう言われた瞬間、ビクッとしてしまう。
「・・・それでは、腰紐をゆるくいたします」
「あっ・・・」
「大丈夫です。締め付けないようにいたしますので」
今度は優しく、お腹を締め付けないように、
ギュエールが優しく腰紐を締めてくれた。
「アイエル、謝りなさい。もう少しで危ないところだったのよ」
「・・・ごめんなさい、女神様・・・」
「大丈夫だよ。俺こそ、転ばしてごめんな」
そう言って、俺はアイエルの手を優しく握った。
すると、アイエルは一瞬驚いた顔をしたが、
すぐに笑顔になってこう言った。
「・・・女神様の子供に永遠の幸あれ。」
「えっ?」
「ここでは、生まれてくる子供には永遠の幸せを願って、縁起のいい言葉を言う風習があるんです」
「生まれる前の子供と、生まれて数年も経たない子供は、ここでは天使と言われていますから」
「・・・ありがとう、二人とも」
そう言うと、俺はそばに置いてあったベールをそっ、と頭に乗せた。
「・・・二人とも、まだ俺の着換えは終わってないぞ。」
「「!!」」
「手つだって、くれるか?」
「「はい!」」
そして二人の手で着換えが終わったその時、
一人の少女が扉を乱暴に開けてやってきた。
「・・・何事なの、アンヘル!花嫁様の前で、はしたない・・・!」
「大変ナノ!下界から人間たちがやってきたノ!」
「(守たちだ・・・!)」
考えるが先か、動くが先か。
俺はドレスの裾を掴んで、必死に走り出した。
「なりません、花嫁様!」
「どちらへ!?」
二人の静止の声も聞かず、必死に廊下を走り続けた。
「・・・光だ!!」
その光の中に、守や塔子が居るのが見えた。
そしてそこへ行こうとした瞬間。
「なりません、花嫁様!」
「駄目ですノ!!」
「放せ!」
アンヘルとギュエールに腕を掴まれる。
しかし、俺は頑張って、塔子たちに声が届く場所までなんとか動いた。
「守!士郎!!」
「雪女!」
「・・・俺、花嫁なんかになりたくない!早く助けてくれ!!」
「花嫁・・・!?」
そう守が言うと、
セインがこう言い放った。
「このお方には、千年祭で復活する魔王の花嫁になっていただく。」
「「「ええっ!?魔王の花嫁!?」」」
「この方は女神の力も併せ持つ素晴らしいお方だ。きっと魔王も気に入り、この方を娶るだろう」
「雪女を、魔王の花嫁にするだって・・・!?」
「こいつら、魔王を封印するために雪女を使うつもりだ!!」
「・・・早く立ち去れ!お前たちが居ては儀式が出来ない!!」
「雪女は、必ず連れて帰る!!魔王の花嫁になんかさせはしない!!」
「守・・・みんな・・・!」
「・・・ならば、仕方がない。サッカーで決着をつけて、お前たちを下界に叩き落としてやろう!!」
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