キツネにつままれたような
ふわっ。
「えっ・・・?」
予想していた痛みは全くなくて、
まるで、誰かに抱き留められているような感触。
「・・・?」
恐る恐る目を開けてみると、
そこには、涙目の士郎が立っていた。
俺はどうやら、落ちる寸前で士郎に受け止めてもらったらしい。
今、俺は士郎にお姫様抱っこをされている状態だ。
「雪女!大丈夫!?」
「士郎・・・?・・・わっ!」
ぎゅううっ。
その瞬間、強い力で引き寄せられる。
「凄く、心配したよ・・・!!」
「士郎・・・」
「・・・あっ!!」
「?」
「君のお腹の子は、大丈夫!?」
「「「お腹の子!?」」」
「ばっ、士郎!!」
「・・・あっ、つい・・・」
俺が妊娠していることを知らなかった守達は、
勿論、すごく驚いた顔をしていた。
「・・・大丈夫だよ。」
「よかった・・・!」
その時、俺はあることを思い出した。
「エドガー!」
俺は士郎の腕から降りると、
急いでエドガーのそばへ駆け寄った。
「だ、大丈夫か!?足、折れてないか!?」
「・・・えぇ。あなたの不思議な力が、私を救ってくださいました」
「俺の不思議な力・・・。あっ、女神の力か・・・」
「約束は果たしましたよ」
「約束って・・・!足がつぶれたらどうする気だったんだよ・・・!!」
「何故だ・・・?」
「何故、私たちは負けたのだ・・・?力では、圧倒的に勝っていたはずなのに・・・」
「何故って・・・お前ら分かってねぇなあ!」
「・・・?」
「サッカーはただの手段じゃねえ、魂と魂のぶつかり合いなんだよ!どっちが上か下なんて、関係ねーんだ!」
「・・・魂と魂の、ぶつかり合い・・・」
その時、セインは何かを思い出したような顔をした。
「・・・どうやら君たちには、礼を言う必要がありそうだな」
「礼?」
「サッカーは魂と魂のぶつかり合い・・・。我々の先祖は、その熱き魂で魔王を封じたのだと、分かったからな」
「・・・」
「君たちのおかげで、やるべきことが分かった。魔王は我らの熱き魂で、必ず封印してみせる」
「セイン・・・!」
「・・・あぁ!お前たちなら絶対できるさ!」
そう言って和解する守とセインを見ていたら、
後ろから、塔子が声をかけてきた。
「それにしても、驚いたぜ。まさか雪女が妊娠してたとはなあ」
「・・・本当は、決勝戦まで隠し通したかったんだけどな。」
「本当に、大丈夫なのか?」
「あぁ。それに、早く春奈ちゃんも救い出さないと!!」
「あぁ、その通りだ!!」
そして俺たちは、鬼道たちと合流すべく、
デモンズゲートへ向かって走り出した。
「はあっ・・・はぁ」
「と、遠い・・・」
「ここからあそこまであとどれ位走るんだ!?」
ヘブンズガーデンがかなり高い位置にあったこともあって、
走っても走っても、最初の分かれ道にすら着かない。
「もう駄目だ、走れない・・・」
「守、もうちょっと頑張れよ!な?」
「おやおや、お困りっスかー?」
「「「!?」」」
後ろから聞き覚えのある声がして、
振り向くとそこには、
結構お腹の大きくなった狐狸が、笑顔で立っていた。
「狐狸!?」
「何で、こんなところに・・・?」
「いやー、雪女さんの応援にライオコット島まで来たのはいいけど、道に迷ったんスよ」
「(・・・道に迷うって・・・)」
「そうしたら、なんと円堂さんたちがあちきの目の前を通り過ぎていくじゃありませんか!」
そう言うと、狐狸はビックリしたような顔で
俺達を見た。
「おや、お急ぎだったみたいっスね。よかったら簡単でいいので、理由を教えてくれると嬉しいっス」
「・・・実は、かくかくしかじか・・・」
「ええっ!?春奈さんが、魔王の生贄に!?」
「そうなんだよ。それで急いでいるんだけど、遠くて全くたどり着けないんだ」
「そりゃあ、早く行ったほうがいいっスよ!あちきが送ってあげるっス!」
「・・・送る?」
「円堂さん、デモンズゲートはどっちの方向にあるんスか?」
「えーと、確かこっちの方向だった気が・・・」
「じゃあ、行くっスよ!」
守が指さした方向を見ると、
狐狸はパチン、と指を鳴らした。
ボワン!!
その瞬間、あたりは煙に包まれた。
「ゲホッ、ゴホッ!!」
「・・・ゴホッ、ゴホ・・・」
「「「!?」」」
煙にむせながらも、煙が晴れるのを待つと、
そこはデモンズゲートの入り口だった。
「・・・ふぅ、なんとか成功したみたいっスね」
「よかった・・・。ってあれ!?」
「え?」
「雪女、服、服!」
「え?俺の服・・・?」
気づくと、俺の服は
あの動きにくいドレスから、
背番号「99」番のイナズマジャパンのユニフォームのレプリカに変わっていた。
「ええっ!?」
「ちょっとしたサービスっスよ。あの服じゃ動きにくいっスからね」
「ありがとう、狐狸・・・」
「いえいえ、役に立ててうれしいっス」
「狐狸、すまないな・・・」
「円堂さんも、礼なんかいいっスよ!それより早く、春奈さん助けに行かないと!!」
「あっ、そうだった!」
「本当にありがとう、狐狸!」
「気を付けてくださいっスー!」
そう言うと、俺たちは狐狸に別れを告げ、
デモンズゲートへ降りる階段を降り始めた。
「何だか、空気が澱んでるっスねぇ・・・」
「何事もなければ、いいんスけど・・・」
俺達がたどり着いたときには、試合は終わっていたらしく、
春奈ちゃんのそばに鬼道がついていて、
「ああ、試合が終わったんだな」って気持ちになった。
「おーい!みんなーっ!!」
「円堂!」
「勝ったんだな、お前たちも!」
「あぁ!」
「音無さんも、無事でよかったっスー!」
「春奈ちゃん!大丈夫だったか!?」
「雪女さん!お兄ちゃんが助けてくれたから、もう平気です。雪女さんも無事でよかった・・・」
「よーし!これで決勝トーナメントに戻れるぞ!」
そう守が言った瞬間、ドン!と急に大きな音が鳴った。
音のした方向を見ると、魔界軍団Zの奴らが並んで立っていた。
「貴方たちに感謝するわ。」
「!?」
「貴方たちとの戦いは、その子をはるかに凌ぐ、良い生贄となったもの」
「何!?」
「お前たちの熱き魂で、魔王は今目覚めた!」
「何だと・・・!?」
その瞬間、地面が大きな音を立てて揺れ出す。
「うわあっ!?」
「きゃあっ!」
「わあっ!」
「ハハハ!!」
デスタ達はそう笑うと、
穴の奥へと入って行った。
かすかに、外の雷の音が聞こえてくるし、
一体何が・・・?
「いったい何が、起ころうとしているんだ・・・?」
「凄く嫌な、予感がする・・・」
「千年の封印は解けた!」
「今、破壊の時が始まる!」
そこに居たのは、
なんと、セインだった・・・。
- 195 -
*前次#
ページ:
[ top ]
[ 表紙に戻る ]
ALICE+