魂の危機と安寧


「!?」
「その声は・・・まさか!?」
「強き魂を食らい、魔王は復活した!」
「我らはダークエンジェル!」
「セイン、セインなのか!?」
「・・・う・・・円、堂・・・」

守がセインの名を呼ぶと、
セインは頭を抱えて苦しんだ。

「大丈夫か、セイン!?」
「黙れ、人間・・・!」
「どうなってるんだ・・・!?」

「魔界が天界を飲み込んだのだ」

「また出た!?」
「お前たちは、何者なんだ!!」

「「我らは、天界魔界の儀式を行う者!」」

「セインに何かしたのか!?」

守がそう聞くと、
老人たちは不敵な笑みを浮かべて、こう言った。

「数刻前、この者たちは花嫁と生贄を奪われたことで、互いに相手を実力で封じようと考えた。」
「古の定め、天界は魔界を、魔界は天界を憎む。その憎しみはデモンズゲートの奥底へと溜めこまれていった。」

「長い時間をかけて満たされた憎しみは、新たな邪悪の力を生み出したのだ!」
「その邪悪な力の化身が、ダークエンジェルなのだ。」

「何っ!?」

そう言うと、二人は雪女のほうを向いた。

「そこに、大天使と中天使の女神の力を持った少女が生贄に加われば、魔王は完璧に無敵となる!」
「・・・俺を、生贄に!?」
「そんなことは絶対にさせない!」
「守・・・」
「雪女はあたし達の、大切な仲間なんだから!」
「・・・塔子!」

「致し方ない」

そう言うと、老人は俺の目をじっ、と見据えた。
その瞬間、雪女の意識が無くなり、
雪女の体から白いオーラが出る。
老人がそのオーラを掴むと、雪女はゆっくりと前のめりに倒れた。

「雪女!?雪女!?」
「息、してない・・・!!」
「体がどんどん、冷たくなっていくっス!!」

「今、その少女から魂を取り除いた。」
「その少女の中にはもう魂は無い」

「雪女の魂を!?」

その時。

「ケーンッ!!」

一つのけたたましい鳴き声が響いたと思えば、
雪女の魂を掴む老人に、1匹の狐が飛び掛かった。

「狐!?」

老人はかろうじて狐をよけたが、雪女の魂はまだ掴んだまま。

次の瞬間、煙を上げて狐が狐狸の姿になる。

「・・・嫌な予感がしたから来てみれば、あちきの予想通りだったっス!」
「狐狸!!」
「雪女さんの魂を奪うなんて!天魔は雪女さんの子供まで、犠牲にする気っスか!?」
「この少女の子供も女神の力を持っている。しかも、上質の女神の力だ」
「この力があれば、魔王は無敵になれる!」
「なんてことを・・・!!」

「奪い返したいのならば、ダークエンジェルズに勝って、奪い返してみよ!」

「くっ・・・!」

そう言うと、狐狸は円堂たちのもとに駆け寄った。

「円堂さん、時間がないっス!早く雪女さんの体に、魂を戻さないと・・・」
「も、戻さないと?」
「雪女さんも、雪女さんの子供も、体に戻れなくなって、魔王の生贄にされちゃうっス!!」
「「「ええっ!?」」」

「さあ、どうする?」
「・・・仕方ない!!」




「・・・う・・・」


雪女が目を覚ました場所は、真っ暗な闇の中だった。


「ここ、どこなんだ・・・?」


今さっき、
俺は、体から魂を抜かれたはず・・・


「俺は、死んだのか・・・?」


もしかしてここは、死後の世界・・・?


「そんな・・・!!」


その瞬間、俺の腕や足に、
どす黒い手が何本も何本も絡みつく。


「ひっ!?」


俺は必死に、立ち上がって逃げ出した。
だけど、沢山の手が俺を追ってくる。


「嫌だ・・・来るな、来るなあッ!!」


「嫌だ、俺は魔王の生贄になんかなりたくない!!」


お腹の子のためにも・・・!!


そう思って、俺は必死に走り続ける。
でもしばらく走り続けて疲れたのか、
一瞬だけ走る速度が遅くなる。

すると、狙い澄ましたかのように
地面が沈みこみ、雪女の足がはまってしまう。

「・・・あっ!!」

スブズブと音を立てて、雪女の体が暗闇に飲み込まれる。

「嫌だっ、助けて・・・!!」

逃げようともがいても、全く這い上がれない。

「助けて・・・!」

そして、胸元まで飲み込まれ、
もう少しで顔も飲み込まれるところで、
雪女はあきらめがついたのか、もがくのをやめた。


「ごめんな。」
「・・・せめてこの腕で、抱いてやりたかった」


そう言って、もう暗闇に飲み込まれたお腹を、
雪女は涙を流しながら、優しく撫でた。


その瞬間。


辺りが眩しい光に包まれ、雪女を襲おうとしていた黒い手が消し飛ぶ。
雪女を飲み込もうとしていた暗闇も動きを止めた。

「えっ・・・?」

その瞬間、目の前に一人の女性が降り立った。
その女性は・・・

「エリーゼ・・・!」
《大丈夫であったか、火月雪女》

そう言うと、エリーゼは手を差し出した。
雪女はその手を掴んで、暗闇から這い上がる。

「どうして、お前が・・・」
《・・・雪姫から頼まれたのだ》
「ばあちゃんから・・・!?」
《あぁ。「自分の孫と、曾孫を救ってくれ」と言われたのでな》
「エリーゼ・・・」
《か、勘違いするな。我は旧友の雪姫から頼まれて、断れなかったから来てやっただけだ》
「でもありがとう、エリーゼ。お前が来てくれなかったら、この子もきっと助からなかった」
《・・・それなら、よかった》

そう言うと、エリーゼは珍しく微笑んだ。
その瞬間、何かに体を引っ張られるような感覚が雪女を襲う。

「なんだこれ、体が引っ張られてる・・・!?」
《案ずることは無い。貴様の魂が、体に戻っているというサインだ》
「俺、生き返れるのか・・・?」
《あぁ》
「士郎のもとにも、戻れるんだよな!?」
《戻れるさ。貴様の腹の子も一緒にな》

その瞬間、涙が溢れだす。

「・・・よかった・・・!!」
《全く、面倒事ばかりに巻き込まれおって。貴様に関する面倒事は、もう片づけてやらんからな。》
「?」
《・・・精々、幸せにするがよい》
「ありがとう、エリーゼ」
《礼など要らぬ。さっさと元の場所へ帰れ》
「あぁ!」

その瞬間、雪女は眩しい光に包まれて消えた。

《まったく、無茶ぶりなところも雪姫に似ておるな》
《・・・今後のあやつの人生に、幸多からんことを》

そう呟いて、エリーゼも消えた。

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