波乱の足音
そして次の日の夜。
帰りの遅い守達を玄関先で狐狸と一緒に待っていると、
汗まみれになって必死に走っている守たちが戻ってきた。
「みんな、おかえりなさいっスー・・・ってあらら?どうしてそんなに汗まみれに?」
「お前ら、何してきたんだよ!?」
「ガルシルドから・・・データを・・・盗んできたん、だ・・・」
「早く、みんなを・・・」
「何してんだお前ら!」
と言いつつも、切羽詰っていたようなので、
監督や秋ちゃん達を部屋に集めた。
ヒロトが奪ってきたデータの入っているUSBメモリをPCに差し、必死に解析して、
出てきたものは、不思議なデータだった。
「なんだろう、このデータ・・・」
「!」
それを見た監督は、二人とも驚いた顔をした。
「響木監督!これは・・・」
「うむ。・・・どうやらお前たちは、とんでもないデータを盗ってきてしまったらしいな」
「とんでもない、データ?」
「これは、ガルシルドが世界征服を企んでいる証拠だ」
「「「世界征服!?」」」
「・・・あぁ。」
しかし、響木さんはそれ以上は告げず、
そのまま試合当日になってしまった。
・・・が。
「ゲホッ、ゴホッ・・・」
「37℃・・・完璧に風邪っスねえ」
「大丈夫かな・・・」
「あちきが看病するっスから、遠慮せず試合に行ってくださいっス」
「でも、大丈夫?」
「マスクもしてるし、加湿もしてあるし大丈夫っスよ!」
「・・・じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃいっス!」
・・・まさか風邪をひくとは思わなかった。
「・・・さっき着替えさせたし、あちきが調合した、妖狐秘伝の風邪薬も飲ませたし・・・しばらく寝てるっスよ!」
「お前妖狐だろ?術かなんかでちゃちゃっと治せないのかよ・・・ゴホッ」
「お腹空くから嫌っス。油揚げ30枚くらい食べないと術使えないっスから」
「・・・お前の術の源、油揚げかよ!?」
「はいはい、とにかく寝ることっス!お腹の子にも、無理をさせたくないっスよね?」
「・・・う゛」
そう言うと、狐狸はオブラートに乗った粉薬を差し出した。
「・・・?」
「どうせ、体が火照って眠れないんスよね?」
「あ、あぁ」
「妖狐秘伝の睡眠薬っス。効き目はもちろん、全部、体に優しい薬草で作ってあるんスよ。だから安心して飲んでくださいっス」
「・・・ありがとう、狐狸」
「いえいえっス!」
そう言って、俺はオブラートに包まれた薬を、
勢いよく飲み込んだ。
その瞬間、痺れる様な苦味がのどを通る。
「・・・苦ッッ!?」
「あ、言い忘れてたっスけど、それ超苦いっスよ・・・」
「遅いよッ!!」
でも、すぐにうとうとと心地よい眠気が襲ってきて、
俺はすぐに眠ってしまった。
「・・・さて、しばらくはこれで良し、と」
そして目が覚めるともう夜で、
気づけば、あの咳や熱も収まっていた。
「すげえ、もう治ってる・・・」
そうこうしていると、玄関口がざわついてきた。
「守たちが帰ってきたんだな・・・!」
そう思って、俺のそばで眠っていた狐狸を叩き起こし、
俺達は階段を下りて玄関口に行った。
「守!」
「あっ、雪女!」
そう言うと、守は親指をぐっ、と突き出した。
その時、俺は「ああ、勝ったんだな」と思って、わずかにだが涙が出た。
そして次の日。
「明日オルフェウスの試合が見たい」と言っていたのに、
ぐっすりと眠りこけている奴らを起こすのに手間取り、
結局、試合が終わるまでにたどり着けるかどうかすら怪しい時間に出る羽目になった。
「寝過ごした〜!!古株さん、急いで!フィディオたちの試合が始まってるんだ!!」
「むしろ、終わるまでに到着できるかどうか・・・」
「何で起こしてくれなかったんだよ、秋、雪女ー!!」
「何度も起こしました!」
「何度も、何度も、何度も起こしたけど、誰も起きてこなかったんだよ!!」
「あ・・・そうなの?」
「仕方ないっスよ、昨日はみんな大変だったみたいで、お風呂入ったら全員泥のように寝ちゃってたからっスねえ」
「立ち上がれないくらい大変だったから、起きれなくても仕方がない!」
「開き直らないでください、土方さん!」
そんな話をしている間にも、時間はじわじわと過ぎていく。
「とにかく急いで!試合が終わっちゃう!!」
・・・しかし、スタジアムでは。
「・・・8対、0・・・?」
「なんだよ、これ・・・!」
オルフェウスはリトルギガントに惨敗してしまっていた。
フィディオたちの顔は、絶望しているような顔で・・・
「あんなに強いオルフェウスをここまで・・・」
「いったい、どんなチームなんでしょう?」
「みんな、先に帰っててくれ!」
「円堂!?」
「おい!」
引き留める間もなく、
守はすたすたと走って行ってしまった。
「仕方ないっス・・・。円堂さんの言う通り、先に帰りましょうっス。」
「あ、あぁ・・・」
そして俺たちは、守の言う通り
先に宿舎に帰った。
「・・・コホ、コホッ」
「あらら、風邪がぶり返しちゃったっスか?」
「あぁ、違うんだ。掃除してたら埃が・・・」
「大丈夫っスか?無茶は駄目っスよ」
「分かってる。・・・ていうか俺、今汗かいてるから着替えたいんだけど、いつものジャージが乾いてないんだよなあ」
「あらら」
「このままじゃ、体冷えちゃうぜ・・・」
「じゃあ、あちきの水色のジャージ貸すっスよ!」
「おお、サンキュー!!」
そして昼過ぎくらいの頃。
手術を受けていた響木さんが峠を越して、
一般病棟に移った、という鬼瓦さんの報告で、
俺達は響木さんのお見舞いへと向かっていた。
「響木監督の病室はどこだろう?」
「私、聞いてきますね!」
そう行って、春奈ちゃんが病院に入ろうとした瞬間。
ドアが開いて、大介さんと夏未嬢が出てきた。
「ええっ!?」
「夏未さん、なんでここに・・・?」
「まだ話してなかったのね。円堂くん」
「あ、あぁ・・・」
「こちらはMr.荒矢。リトルギガントの監督よ」
「この監督が・・・」
「フィディオたちを倒した、あのチームの・・・」
すると、春奈ちゃんが夏未嬢にこう聞いた。
「でも、なんで夏未さんがそんな人と一緒に・・・?」
「私が、リトルギガントのマネージャーだからよ」
「「「「!?」」」」
「夏未さんが!?」
「どういう、事っスか!?」
その時。
「監督!!夏未ーっ!!」
大きな声をあげて、
一人の少年が走ってきた。
「リューじゃない。どうしたの!?」
「どうしたんだ!!」
「大変なんです、コトアールエリアが!」
「ええっ!?」
急いで病院内のテレビをつけると、
そこには、凄まじい光景が。
勢いよく飛び交うボール、
崩れていく家。
「ひどい・・・!」
「誰が、こんなことを!?」
「・・・どうやら奴は、ワシを完璧に怒らせたらしいな・・・」
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