それでもあなたを愛してた


「すー、はー、すー、はー・・・」

息を落ち着かせるために深呼吸をするが、
なかなか落ち着かない。

「・・・めちゃくちゃ、ドキドキ言ってる・・・」

しかし、逃げるわけにはいかない。
あのパーティーの後、成り行きとはいえようやく見つけたんだ。

雪姫ばあちゃんの言葉を、伝えないと・・・!!

片手にはばあちゃんの日記帳。
緊張で、日記帳を持つ手が震える。
狐狸に借りた水色のジャージの裾をぎゅっと握りしめ、
俺は意を決して、少し大きめの声でこう言った。


「・・・大介さん、あのっ!!」

「!?」


「!?」

守と話していたら、急に声をかけられた。
・・・聞き覚えのある声。
この声はまさか・・・!?

《大介さん》

「雪姫・・・!?」

水色のジャージに絹糸のような白銀の髪。
一瞬目を疑って目をこすると、
そこには雪姫ではなく、この前ワシを助けてくれたやつが立っておった。

「お前さんは、この前ワシを助けてくれた・・・」
「覚えていてくれたんですね」
「・・・そういえば、お前さんの名前を聞いておらんかったな」
「俺は、火月雪女です」
「火月・・・!?」


落ち着け、そんなはずがない。
雪姫は40年前に・・・



あの悲劇で死んだはずだ。



「・・・どうか、しましたか?」
「いや、昔の恋人を思い出しただけだ」
「・・・火月雪姫、ですか?」
「なぜ、それを!?」

「・・・俺は火月雪女。火月雪姫の孫です」
「!?」

大介さんは、ひどく驚いた表情をした。
そりゃそうだ、死んだはずの彼女の孫と名乗る奴が目の前に居るんだから。

「・・・信じられないかもしれないけど、俺と雪姫ばあちゃんは、別の世界から来たんです。」
「別の、世界・・・?」
「雪姫ばあちゃんは、この世界ではあの事故で死んだことになっていますが、俺のいた世界では、半死半生の状態で見つかって、そのまま生き続けたんです」
「・・・そんなことが?」
「雪姫ばあちゃんには、大介さんの子供がいたんです」
「そんなはずはない!!雪姫は何も・・・」
「・・・当たり前です。告げる前に居なくなったんですから」
「!?」
「貴方の子供から生まれたのが、俺なんです」

大介さんの顔がどんどん変わっていく。
その顔からは、なんだか今の大介さんの心情が分かる気がして。

「・・・雪姫ばあちゃんは、死ぬまで大介さんを愛していましたよ。」
「雪姫・・・」
「最後まで、大介さんに会いたいと願って死んだんです」

そう言うと、俺は日記を差し出した。

「・・・読んでください。雪姫ばあちゃんの日記です」

そう言うと、大介さんは俺の手から日記を受け取って、
1ページ1ページ、丁寧に読み始めた。

・・・そして、最後の日記帳を読み終えたその時。

ぽたっ、ぽた・・・。

大介さんの目から、涙がこぼれた。

「あいつは、そんなにワシを思っていてくれたのか・・・?」
「・・・はい。」
「死ぬまで、か?」
「・・・はい」

そう笑うと、雪女は自分のお腹に手を当てた。

「・・・貴方の血を僅かながらですが、俺は受け継いでいるんですよ。」

「そして、今の俺のお腹の中には、そのわずかな貴方の血を受け継いだ子が居るんです」
「!!」
「・・・触って、みますか?」

大介さんはそう言うと、俺のお腹に優しく手を当てた。
お腹の子は、まるで今の状況が分かっているかのように
俺のお腹をぽこぽこと蹴る。

まるで、「自分はここに居るよ」と言っているように。

「・・・ワシは40年間、雪姫のことを引きずりながら生きてきた」
「引きずって・・・?」
「あの日、雪姫を試合に連れていかなければ、雪姫は死ななかったんじゃないか、とこの40年間思い続けてきた」
「・・・」
「だが、それでよかったのかもしれん。こんなに強くて素晴らしい孫が2人も出来たんだからな」
「大介さん・・・」
「・・・それに、曾孫もな」

そう言うと、大介さんは涙をふくためにはずしていたサングラスをかけ直して、
俺にこう言った。

「・・・お前さんは、本当に雪姫にそっくりだ」
「俺が、ですか?」
「あぁ。実を言うと、初めて会ったときやガルシルドと戦っていた時、お前の姿が数回、雪姫に重なってな」
「・・・俺が、ばあちゃんと・・・」
「大人になったら、若いころの雪姫そっくりになるかもしれんな。」
「隔世遺伝、ですかね?」
「そうかもしれんな」

その時、何だか心地よい風が吹いた。
何故か俺には、その風の音が声に聞こえた。




「あ り が と う」という声に。



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