いざ行かん、最後の戦いへ


そしてあれから、
夏未嬢がイナズマジャパンに戻ってきたり、
狐狸とヒカリが居なくなったり、
オルフェウスとの練習試合があったりして、

俺達はとにかく、ドタバタと忙しかった。

そして、決勝を明日に控えた、
そろそろ夜になりそうなほど暗くなった夕方ごろ。

「・・・ふう、狐狸さんの抜けた分、仕事大変です・・・」
「あいつ、帰っちまったのかな?」
「そのうち、きっとまた現れますって!」
「そっかあ・・・」

その時、玄関のドアを開ける音が響いた。

「あれ、誰か来たみたいですよ?」
「ん?・・・げっ!?」

宿舎に入ってきたのはなんと、
ブリザードを肩に乗せた母さんと、セピアを頭に乗せた父さんだった。
・・・てか、猫を肩に乗せて外に出るなよ。
可愛いから目立つじゃねーか!!(そこかい

「よう、元気にしてたか?」
「みゃーん」
「にゃう」

ブリザードとセピアは母さんと父さんの肩を飛び降りて、
一直線に俺のもとへ。

「にゃーん」
「ぐるぐる・・・」
「あははっ、よしよし。」

肩のブリザードの喉を撫でながら、
俺は母さんを見た。

「何で急に来たんだよ?」
「お前、手紙読まなかったのか?決勝戦見に来るっつったろ」
「美幸と俺の日程が合うのが、決勝戦しか無くてな」
「・・・へー・・・」

すると、美幸は雪女のお腹に手を当てた。

「お腹の子は元気かー?おばあちゃんだぞ〜」
「ふふ、元気だよ。毎日お腹が痛くなるくらい元気に動いてる。」
「そりゃあよかった!」
「・・・そう言えば、父さんに言ってくれたんだっけ?この事」
「・・・あぁ。最初は吹雪を殺しそうな勢いで怒ってたんだが、俺がビンタで目を覚まさせた」
「ビンタって・・・」
「で、ビンタしたら頭が冷えたらしい。そしたら現金な奴でなぁ、「じゃあ俺はおじいちゃんになるんだな!」って大喜びだ」
「父さんらしいや・・・」
「・・・と言うか、吹雪たちは居ないんだな。女の子だけか?」
「あぁ。みんな散り散りで練習に出たり、自室に居たりしてる。」
「・・・そっかー。吹雪に会いたかったんだがなあ」
「母さんってば・・・」

「雪女!!」

その時、父さんが真剣な顔で俺の名前を叫んで、
俺に近寄ってきた。

絶対怒ってるんだろうな、
もしかしたら殴られるかも、と覚悟した瞬間。

「なんで俺に早く言わなかったんだ!?」
「・・・へ?」
「俺だって娘の成長を知りたかったのに・・・ぐすっ」
「は、はぁ?」

最終的には泣き出す始末。
・・・誰かこの親父なんとかして。

「・・・怒って、ねーのか?」
「え?」
「だって俺、まだ若いし・・・。もしかしたら、殴られるのかと思って・・・」
「確かにそれは感心しないさ。そりゃあ俺だって、最初はお前の彼氏を殺そうかと思うくらい腹が立った。」
「・・・」
「だけど、そんな怒りより、新しい家族が増えるっていう喜びのほうが大きくて、怒ってる俺がバカみたいに思えてきてな。・・・美幸のビンタ痛いし」
「・・・え?今なんか・・・」
「ん?何も言ってないぞ?」

そう言うと、正義は雪女の頭を
わしわしと撫でた。
綺麗にセットしてあった雪女の髪がくしゃくしゃになる。

「わっぷ!」
「無茶は絶対にするんじゃねーぞ!」
「わかった、わかったから!わしゃわしゃ撫でるな!」
「・・・おっと、すまんすまん!」

俺はくしゃくしゃになった髪を直しながら、ため息を吐いた。
でも、年に似合わない無邪気な笑顔が
何だか、守や大介さんにそっくりで。

「(血は争えないんだな)」
「ん?ニヤニヤしてどうしたんだ?」
「ふふっ、何でもねーよ。」
「雪女、決勝戦は選手だけでなくマネージャーも大変だ、しっかり頑張れよ!」
「俺も正義と決勝戦、ちゃんと見るからな」
「あぁ!」
「じゃあ、無茶はするなよ!」

そう言うと、母さんたちは帰って行った。

「・・・いいお父さんですね、雪女さん」
「そう思うか、祈莉ちゃん?いい年してあんなんなんだぜ」
「いいじゃないですか、いつまでも少年みたいな感じで」
「そうか・・・?」

そしてその夜。

「明日の準備はこんな所でしょうか?・・・ふあぁ・・・」
「祈莉ちゃん、眠いなら寝ろよ?明日はドタバタするだろうしさ」
「・・・そうですね、じゃあお先に失礼します・・・」
「おやすみ。」
「おやすみなさーい」
「柚流も寝たらどうだ?こっくりこっくりと頭が船漕いでるし」
「んー・・・そうしようかしら。じゃあミーもお先に・・・」
「おやすみ」
「おやすみー」

・・・ヒカリや狐狸が居ない分、
明日の準備に手間取ってしまったな。

おっと、いくら手間取っても
人手が足りないのを言い訳にしちゃだめだよな。

「(秋ちゃん達ももう寝たし、俺もそろそろ寝るかな・・・)」

そう言って、体を伸ばした時、
頬に冷たい手が当てられた。

「うひゃあっ!?」

ビックリして後ろを振り向くと、
いたずらっぽく笑う士郎が。

「・・・なんだ、士郎か。脅かすなよ!」
「あはは、ごめんごめん。」
「・・・あれ?お前こんな時間なのにまだ寝てないのか?」
「うん、なんだか緊張して眠れなくてさ」
「明日早いんだから、早く寝ろよ?」
「それを言うなら、雪女もだよ!」
「俺は、これだけ片づけたら寝るからさ」
「・・・無茶だけは、しないでよ?」
「わかってるって。」

そう言うと、俺はちょっと恥ずかしくなって、
指で髪をくるくるといじった。

「士郎も、明日頑張れよ!俺、ベンチから応援してるからさ」
「・・・もちろん!君と、君のお腹の子供のために頑張るよ」

そう言うと、士郎は俺の額にキスを落とした。
久し振りのキスに、無意識に顔が熱くなる。

「顔、真っ赤だよ」
「・・・るっさい、急にキスするからだよ」

そう言うと、士郎は俺の頭を優しく撫でてくれた。
そして、俺の顔に顔を近づけて、こう言った。

「・・・ねぇ、雪女。雪女は、僕の事好き?」
「当たり前の事聞くなよ、好きに決まってんだろ?」
「よかった。」
「なんで急にそんなこと聞くんだよ」
「えへへ、聞きたかっただけ」
「・・・ばーか。」



そう言うと、俺たちは引かれ合うように、
今度は額じゃなくて唇に、もう1度キスをした。


そして次の日の朝。

テレビから流れる、イナズマジャパンとリトルギガントのダイジェストを聞きつつ、
俺達は最後の準備を始めていた。

「今日は大変ですね!」
「ヒカリちゃんや物怪さんも、来ればよかったのにな・・・」
「・・・その分、私たちが頑張りましょう!」
「えぇ。」
「あ、春奈ちゃん。そろそろ時間だし、あいつら起こしてきてくれるか?」
「はい!」

そう言って、春奈ちゃんはエプロンを脱いで、
守達をを起こしに行った。

「・・・バッグの数は、この紙に書いてる数で全部よね?」
「勿論です!この僕が数え間違いをするはずないでしょう?」
「1,2・・・あれ、1つ足りない」
「ええっ!?」
「あはは、ジョークよジョーク!全部ちゃんとあるわ!」
「もう、こんな時に冗談言わないでください、柚流さん!!」
「頭がハードね・・・ちょっと緊張を消してあげようとしただけじゃない」
「・・・ちょっとはTPOを考えろ、柚流!」
「あら厳しいのね、スノーガールってばー」

そんな話をしていると、
左手のオレンジ色のミサンガが目に入る。

願いは、“守たちが世界の頂点に立てますように”だったかな。

「・・・ずっと前からつけてたけど、今日でお別れかな」

そう言って笑うと、
肩に柚流が顔を乗せてきた。

「何か、理由がありそうなミサンガしてるのね〜?」
「理由って・・・何もねーよ。ただのお守りみてーな物だって」
「・・・ふ〜ん?」
「そう言えば雪女くんって、前は両手にミサンガしてたよね?青とオレンジの。」
「あぁ、青のは結構前に切れちまったんだ。」
「へー。どんな願い事してたの?願い事は叶った?」
「願い事は教えられないけど、叶ったよ。」
「いいなあ。ミーの足のミサンガはまだ切れてないし」
「どんな願い事?」
「あはは、シークレットよシークレット!教えたら面白くないでしょ」
「(・・・ロクな願い事じゃない気がする)」

そんな話をしていると、監督が集合を掛ける声が聞こえてきて、
俺達は急いで外へ出た。

「監督、全員揃いました!」

そして監督は俺達を見ると、こういった。

「円堂守」
「・・・えっ?」
「円堂、守!」
「・・・はっ、はいっ!!」

そして、豪炎寺や壁山の名前を呼んでいく。

「木野秋」
「えっ?は、はい!」

選手だけで終わるかと思いきや、
俺達マネージャーの名前も呼んでいく。

「火月雪女」
「・・・はいっ!」
「言乃葉祈莉」
「は、はい・・・」
「霧留柚流」
「はい!」

そして監督は一瞬何かを考えるような顔をした後・・・

「・・・緑川リュウジ」
「えっ?」
「栗松鉄平」
「・・・!?」
「基山ヒカリ」
「!?」
「物怪狐狸」

ここに居ない奴らの名前も読み上げた。

「選ばれなかった者の意志を継ぎ、日本代表として戦うように。・・・勝つぞ!」
「「「「はい!!」」」」


そして俺たちは、最後の戦いをすべく、
タイタニックスタジアムへ向かった。


- 201 -

*前次#


ページ:





[ top ]

[ 表紙に戻る ]



ALICE+