思い出と狐


久しぶりの雷門中ユニフォームに袖を通し、
グラウンドへ向かう・・・途中に、
母さんの腕の中で泣きじゃくっていた白姫を受け取る。

「(俺の腕の中では、ものすごく笑顔だなあ。)」

そう思いながら、グラウンドへ向かう。
グラウンドには懐かしい面々が。

土門や塔子、リカに一之瀬。
そのほかにも懐かしいメンツがそろっていた。

「あっ、雪女!卒業おめでとう!」
「・・・塔子!久しぶりだな。元気にしてたか?」
「うん、元気元気。あっ、その子が例の白姫だね?」
「・・・あぁ。俺の大切な一人娘だ。ほら白姫、ご挨拶はー?」
「あう、あー」
「わあっ、すっごく可愛いな〜っ!」

「・・・いやー、まさか雪女がこんな立派なお母さんになるなんてなー」
「おい土門、それさり気なく俺のことバカにしてねーか?」
「いや、してないしてない!逆に褒めてんだよ!」
「・・・それなら、いいけどよ・・・」

「雪女も試合出るんだろ?」
「もちろん、出ないわけないだろ!」
「あははっ、そりゃ楽しみだ!」

「雪女!」
「・・・あ、士郎!」
「久しぶりだね」
「元気にしてたか?」
「僕は元気だよ。雪女達は?」
「俺たちはいつだって元気だよ。な、白姫」
「あうー」
「そっかあ。」
「・・・そういや、お前んとこは先週が卒業式だったんだっけ?」
「うん。だから今日がすごく楽しみだったんだ!」

そう言うと、士郎は少し頬を赤くしてこう言った。

「あのね雪女・・・。この試合が終わったら、言いたいことがあるんだ」
「・・・え?今は言えないことなのか?」
「うん、ちょっとね・・・。」
「じゃあ分かったよ、試合が終わったら、その話を聞くぜ。」
「ありがとう、雪女。・・・じゃあ試合が終わったら・・・えーと、鉄塔のところで待ち合わせしよう?」
「あぁ、分かったよ。」
「じゃあ、よろしくね。」

・・・何の話をしたいんだろう・・・?

そんなことを考えていたその時。

「あっ、雪女さーん!」
「久しぶりねー!」
「祈莉、柚流!」
「私もいますよ!」
「おおっ、ヒカリまで!」
「招待ありがとうございます!私たちも参加しちゃっていいんですか?」
「守がいいって言ってたからな。最後はサッカーでしめたいらしいし」
「やったあ!久しぶりに腕が鳴っちゃうなあ!」

「実を言うとですね、私このまえ勇気に、ぷ・・・プロポーズされちゃったんですよ!」
「きゃー、超羨ましい!口説き文句教えて教えてー!!」
「実はね、ミーも条介にプロポーズされちゃったのよ〜♪」
「えー、二人ともいいなあー。私たちなんてまだキスくらいしかしてないのに・・・」
「・・・あなたたちは、まだまだこれからよ!」
「そんなもんですかね〜?」

そんな感じでキャッキャと笑いながら話をする3人を見て、口角が無意識に上がる。

その時、
ふと、頭の中に今までの記憶が巡る。






この子は祈莉。わしの親戚の子でな・・・
私、数ヶ月前に両親を亡くして・・・。お父さんが引き取ってくださったんです。





から元気で頑張って、無理してるのを見てられません・・・
・・・だから私、雪女さんに元気を取り戻してもらいます!!





私の憧れた雪女さんは、自分を見つめずに逃げるような人じゃ、ありません。
自分を見つめて、困難に果敢に立ち向かって・・・
そんな人だから・・・そんな人だからこそ、私は貴方に憧れたんですよ。






イエス!ミーの名前は霧留柚流!よろしくね!





そう、ネバーギブアップ!諦めないことが肝心よ!





貴方たちが良ければだけど・・・条介とミーを試合に混ぜて欲しいの
・・・えっ!?
エイリア学園なんかに、大きい顔させられないから、ミー達が力を貸すわ!





あ・・・はい、そうです!あたしは基山ヒカリ、エイリアネームは「シュテルン」です!





・・・だから、雷門中の皆さんに、エイリアを倒してもらいたいんです。だからあたしは雪女さんに近づいたんです。罵倒されるのも覚悟で・・・
ヒカリ・・・お前はそんな覚悟までして、俺に・・・
・・・でも、よかった。雪女さん、意外と優しい人で。





あたしは、ただヒロ兄達とサッカーできればそれでよかった。ただそれだけだったの。

もう“シュテルン”なんて呼ぶのはやめて。それはただのまやかしだよ。“シュテルン”は“基山ヒカリ”じゃないの。

ヒロ兄、みんな、どうか目を覚まして。勝利を追い続けたのがこの結果なんだから・・・







・・・そんなことを思い出していると、
後ろから、ヒカリ達が声をかけてくれた。


「・・・雪女さーん?」
「え、あ・・・何だ?」
「どうしたんですか、ボーッとしちゃって。」
「・・・今までのことを、思い出してたんだよ」

その時、柚流が俺の後ろ方向を指さしてこう言った。

「・・・あら?あの子、弧狸じゃない?」
「えっ、どこどこ!?」

バッ、と後を振り向くと確かにそこには、
漫遊寺で出会ったあの時の着物に身を包んだ狐狸が笑顔で立っていた。

・・・傍には、まるで狐狸を縮めたような、
愛らしい少女を連れて。

「雪女さん、卒業おめでとうっス!!あちき、ついつい会いに来ちゃいましたっス!」
「・・・狐狸!久しぶりだな!」
「狐狸さん、その子供は・・・?」

そうヒカリが問うと、
狐狸は満面の笑みでこう言った。

「この子は物怪狸弧。あちきの娘っス!・・・ほら狸弧、ご挨拶するっスよ」
「・・・あたち・・・ものけ、りこ・・・はじめまちて・・・」

驚くほど狐狸そっくりの、髪色に顔立ち。
終いには声まで似てると来た。
・・・違うところを上げるとすれば、
オッドアイの色くらいかもしれない。

「雪女さん、そういえば試合するんスよね?」
「あ、あぁ。」
「せっかくだから見て行ってもいいっスか?」
「んー、たぶんいいと思うぜ?」
「やったーっス!じゃあ狸弧、一緒に見るっスよー♪」
「・・・あい・・・」

その時。

「いんやぁー、なーんか楽しそうなこと始めてるじゃない?」
「・・・い、石田先生まで!?」
「サッカーの文字があるところに、石田宮古あり、よっ!」
「せ、先生・・・」
「まあそれはさておき・・・雪女くん、卒業おめでとう。」
「あ、ありがとうございます」
「あ・・・そういや来週、うちの娘の卒業式だったなあ。礼服1回クリーニングに出さなきゃ」
「そういや先生、俺たちと同じくらいの娘さんがいるんでしたっけ?」
「そうなの。「お母さんと同じ教師になるー」って勉強してるのよ。いつか雷門中の先生になってくれるといいんだけどねえ」
「・・・へえ。」
「たぶん一目でわかると思うわ。20代くらいの頃の私に瓜二つだから」
「そうなんですか?会ってみたいですね・・・」

「雪女さーん!そろそろ試合始まっちゃいますよ!」
「あっ、ちょっと待ってくれ!!」
「雪女くん。白姫ちゃんを試合の間、抱いておこうか?」
「・・・あ、悪いな秋ちゃん。」

俺はそう言うと、秋ちゃんが抱きやすいように
白姫の姿勢を整えて、秋ちゃんに手渡した。

「白姫、試合の間は大人しくしてるんだぞ〜」
「あ、うー」
「・・・わあっ、意外と温かくて重いのね・・・」
「悪いな、試合の間だけだからさ・・・」
「大丈夫よ、雪女くん。」



「・・・ではこれより、雷門中サッカー部卒業試合を始めます。」




その夏未嬢の声で、



雷門中サッカー部として最後の試合が始まろうとしていた。


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